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エルフの少女グラティア〜永遠の命を持つエルフに人族が恋をしたら、こうなってしまう〜  作者: くろくまくん
港町ポルトゥス編

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相手のことを憎くなくてもする戦争

海の魔物セイレーン討伐の正式な依頼をピースから受け、


屋敷で昼食を頂くことにしたグラティア一行。



◯登場人物


グラティア(慈愛):エルフ族の女性、256歳。ルミノース国生まれ、ルミノース育ち。精霊魔法を使える。


アルド(情熱):人族の男性、16歳。中央都市マグヌスでグラティアと出会い、共に旅をする。


ムジカ(音楽):エルフ族の男性、320歳。吟遊詩人。

色々な国や、世界を巡りながら、詩を綴る。グラティアとアルドの二人のことを気に入っている。


ルシーダ・ラジール:人族、18歳。中央都市マグヌスを治めるラグルス・ラジールの娘。グラティア達に護衛を頼み、ポルトゥスへと赴く。


ピース・ミーティス:人族、35歳。ポルトゥス領を治める貴族。穏やかな性格。

 ミーティス家の屋敷で、私達は昼食を頂くことになった。


 マグヌスでは食べたい時に食べるスタイルだったがここポルトゥスでは朝昼晩と一日三食が割と守られているらしい。もちろん種族によって違うと思うが。


「いただきます!」


 アルドは行儀よく食べる前に挨拶をする。


「すみませんね、もてなしの時くらい贅沢にすれば良いのですが、住民の皆さんが厳しい生活を続けている中で領主だけが贅沢三昧というのは私の気持ちが許せないのもありまして……」


 ピースの言うように、用意された昼食は、パンをいくつかと、野菜とハムのサラダ。そして薄味の海藻のスープと質素なものだった。


 宿にしても、昨日はじめに入った旅人向けの店にしても、きちんとした料理が出てきたから、食材が無いというわけではないのだろう。気持ちの問題と領主としての住民や働いてる者達へのアピールもあるのかもしれない。


「全然大丈夫だよ。セイレーンを成敗して、美味しい魚が獲れるようになったら、お魚パーティをしようね」


 と、ムジカ。


「それにしても、普段こちらの海で見かけることのない魔物が現れたのはどういうことなのでしょうね?」


 ルシーダがピースに問う。


「それは私にもわからない……ただ、もしかしたら大陸の北の方が住みにくくなって、移動してきたということはあるかもしれないね。いきなりというわけではなく、徐々にという感じでね」


 寒い地方に住んでいた魔物がいきなり温暖なところに来ることはあるのだろうか。


「あ、そういえばマグヌスで、伯爵さんやマーズさんが言ってた、シルヴァ王国とルミノース王国の何十年かに一度起こる戦争って言うのも、何か理由はあったりするのかな?」


 アルドが誰ともなく聞いた質問に私が答える。


「アルド、シルヴァとルミノースの争いは何十年も前の争いをあまり覚えていない、懲りない獣人族の王国が、ルミノースに何かと文句を付けてきて集団で争いをふっかけてくる、俗に言うイチャモンというヤツだ」


「そうなんだね〜。獣人自体の寿命が短いにしても、そういう戦争の記録とか、何故争いが起きたのかとか、その結果どうなったかとかは残ってそうなのにね」


 私の答えにアルドは少し疑問を持ったようだ。もちろん私自身も争いの根本の原因は知らない。


「あ、グラティア、アルド。シルヴァ王国がルミノース王国に対してふっかけてくる争いの理由は、私がお父様に聞いたところによると経済的な理由もあるような気はしますわ」


 経済的な理由? ルシーダの言っていることはどういうことだろう。ピースが話を引き継いだ。


「そうですね。これはもちろん憶測でしかないですけども、シルヴァ王国にも経済を動かしたいために争いをワザと起こそうと考えている連中はいるのだと思います。これはシルヴァだけではなく、ルミノースにおいてもですが……」


 戦争を起こすことで武器や魔道具やそれに関わる需要を増やすということかな。それを聞くと、徹底的に相手国を潰すという大規模な戦争ではなく、国境付近の小競り合いのような、小規模なものであることも頷けるな。


 まぁ、私には関係のないことだが。


「へぇ……相手のことを憎くなくてもする戦争というのもあるんですね……なんだか戦わされる人達が可哀想かも」


 アルドはそう言うが、実際のところ戦いに赴く騎士団だけでなく、冒険者はそういうところから得る収入もあるのだ。まぁ、アルドが知る必要はないか。


「前にも言ったけど、もし今度シルヴァと戦争が起こるにしても四十年くらいは先になるはずだから、アルドは気にしなくていいと思うよ〜。僕やグラティアは依頼を受けてるかもしれないけどね」


 と、ムジカ。


「アルドくんはともかく、私の場合は確実に寿命で死んでおりますね。そう考えると人族の命は短いものです」


 ピースは悲観するでもなく、淡々と言う。そう、種族によって寿命も違うし、生き方も違う。


 だが長く生きることが決して偉いということはないし、早く死んだら不幸かというと、それはその者によるのだと私は思う。


 アルドの父フィデリスは不慮の事故で亡くなってはしまったが、決して不幸ではなかった。アルドという立派な息子をもち、幸せだったのではないだろうか。


 昼食の食後に焼き菓子と紅茶を頂いたが、それはとても美味しかった。



◇ ◇



 ピースの屋敷を後にして、街で明日のセイレーン討伐に備えて買い物をする。


 と言っても備えがいるかと言うと、私とムジカがいれば大丈夫な気はするのだが。食料を中心にという感じだな。


 夜明け前に港に集合ということなので、早めに宿に帰り、休むことにした。


ピースの屋敷で昼食を食べながらの雑談で、


ルミノースとシルヴァの何十年かに一度起きる戦争のことについての話が出た。


相手のことを憎んでいなくてもする戦争というものがあるということを知った。



◯シルヴァ紛争プチ情報


作中で語られている何十年かに一度定期的にある小競り合いというルミノースとシルヴァの戦争は、以前に起こったのはルミノース歴903年、今より16年前のことであり、ちょうどアルドが生まれた年である。ルシーダは2歳。

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― 新着の感想 ―
戦争は儲かるって言いますもんね。民間人にとっては迷惑なことです。戦争じゃなくて、指相撲で勝負していれば平和なのにな、と思いました(笑) >昼食の食後に焼き菓子と紅茶を頂いたが、それはとても美味しかっ…
憎くなくてもする戦争という、タイトル良いですね。 たとえどんな理由にせよ、ひとたび戦争が起これば、戦地は地獄とかし、もしそこに住む人々がいれば被害を被る。お互いの国が関連してる貿易も滞り、物価も上が…
困ったことに恨めし憎しよりそっちの戦争の方が多いんだよね。 侵略戦争だったり経済の為のモノだったり。 宗教戦争は…………どういう区分になるんだろうね? 思想の…………というか推しの違いか!?
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