海賊船と魔導装置
ポルトゥスの領主ピース・ミーティスの屋敷を訪れ、海の魔物セイレーンについてや、ルミノースとシルヴァの戦争の話をした。
そして、次の日の夜明け前。
◯登場人物
グラティア(慈愛):エルフ族の女性、256歳。ルミノース国生まれ、ルミノース育ち。精霊魔法を使える。
アルド(情熱):人族の男性、16歳。中央都市マグヌスでグラティアと出会い、共に旅をする。
ムジカ(音楽):エルフ族の男性、320歳。吟遊詩人。
色々な国や、世界を巡りながら、詩を綴る。グラティアとアルドの二人のことを気に入っている。
ルシーダ・ラジール:人族、18歳。中央都市マグヌスを治めるラグルス・ラジールの娘。グラティア達に護衛を頼み、ポルトゥスへと赴く。
トール:人族、27歳。ポルトゥスで海賊の若頭をしている。黒髪で暗褐色の瞳。
ポルトゥス伯爵の屋敷を訪れた翌日の早朝。
待ち合わせのポルトゥスの港へ私とアルド、ムジカとルシーダの四名でやってきた。
「ふわぁ〜〜、こんな夜明け前に起きて活動してるのって夜型の魔族か、人族のお年寄りだけじゃないの〜?」
と、ムジカ。
昨日は早めに宿に戻り、朝が早いので早く寝るようにとムジカとアルドにも言っていたのだが、きっと夜ふかしをしていたに違いない。
「出港する前に確認をしておきたいんだが、いいか?」
海賊のトールは一番弟子だかのギャレットと、その他大勢の手下と共に港で待っていた。そして、こちらに質問をしてくる。
「うん、どうした?」
ムジカは眠そうなので私が代わりに答える。
「ポルトゥスの領主様から、海の魔物の討伐の報酬が出ると聞いた。俺にもその報酬を貰う権利はあるよな?」
何処からその話を聞いたのかわからんが、やはり金にガメつい奴だ。
「あぁ、もちろんだ。討伐報酬は配分するし、きっちりとレンタル代も払うぞ」
「まぁ当然のことだがな。では報酬の半分をいただこう。金貨五百枚だな。その代わり船と俺達乗組員のレンタル代はチャラにしてやる」
なかなか図々しいことを言うやつだ。私が反論をしようとしたら、眠気が覚めてきたらしいムジカが止める。
「まぁまぁグラティア。うんうん、それでいいよ〜。その代わり、それ以上の追加報酬は無しだよ」
交渉事に関してはシビアだと思うムジカが意外と簡単にオッケーしたのはどういうことだろう。まぁ何か考えがあるのかな。
「話がわかるエルフの兄様でよかったぜ。よしっ、じゃあ出港するぞ、船に乗れ」
薄暗い中だから分かりにくかったが、海沿いの方に近づくと百人くらいは乗れそうな大きさのガレオン船と言うのか、帆船が停泊していた。
「わぁ〜! 僕、船を見るのは初めてです! これが海賊船ですか?」
アルドが楽しそうに言う。
「坊やは船は初めてか。せいぜい海に落ちないように気をつけてくれよ。貴族のお嬢様は留守番してなくていいのか?」
トールはルシーダに向けて言う。
「ええ、私もマグヌスの領主の娘として、教育だけでなく、日々の鍛錬もしています。皆さんにご迷惑はかけないようにはしますわ」
ルシーダがそう言うならまぁそうなのだろう。基本的には私とムジカだけで片付くとは思うが……
「若頭! 出港の準備が出来やした!」
「おう、操縦はお前に任せたぞ、ギャレット。野郎共!! 俺に命を預けろ!!」
ギャレットをはじめ、大勢の海賊の手下がトールのかけ声に奮い立ち、声を上げる。
十年以上前に父親は亡くなったと言っていたが、それからずっと海賊の首領としてやってきたんだろうか。偉そうにしているだけあって、統率は取れているようだな。
「ねぇグラちゃん、凄いね! 僕、船に乗るのもこうやって海賊さん達の様子を見るのも初めてで、なんだかワクワクしてきた」
アルドには少々危機感というのが足りないのかな、とは思ったが。まぁ逆に言うと私やムジカのことを信頼しているということもあるのだろう。
「ムジカ、おそらくなんですけどこの海賊船は、魔力にも対応しているような気がします。トールか、そのお弟子さんに聞いてみましょうか」
船は帆に風を受けてゆっくりと進んではいたが、帆船と言うのは海の流れと風の力によって進むだけだから、なかなか思うようには進まないだろうな。魔力にも対応とはなんだろう。
「あ、そうだね。ゆっくり船旅を楽しむのもいいけども、海の魔物もいることだし、さっさとやっつけちゃった方がいいのかな。おーい、キャロットくーん!」
ムジカが一番弟子を呼ぶ。
「あっしはギャレットです。なんでしょうかエルフ様」
「この船に魔力に対応するような魔導装置、もしくは魔石が仕込まれているところはあるかな? もしあるとしたら、航海が楽にはなると思うんだけど」
ギャレットは少し考えていたが、すぐに答える。
「あっ、確か船の中央部分にそんな小部屋があった気がします。魔法を使える乗組員がいなかったもんでずっと使ってはいないんですが……」
「わかった。一度見てみるよ、案内してくれる?」
ギャレットは船の操縦をトールに代わり、その部屋に私達を案内してくれた。
「この部屋です。鍵はかかってないんで、どうぞ好きに見てください」
船のちょうど中央あたりになるのか、その小部屋に入ると、部屋の真ん中に巨大な竈のような炉のような物が置かれていた。
「わっ! なんだか凄いですね。これが魔導装置?」
「そうですわ、アルド。私も何回かしか見たことがないですけど、装置に魔力をこめることで船の稼働や防御などが出来ると思うの」
ルシーダが答える横で、ムジカは装置に手をかざし、魔力を込めているようだ。
「う〜ん、キャロットくんが言ってたようにずっと使ってなかったからか、ちょっと反応は鈍いけど……使えないことはないみたいだね」
かざしたムジカの手が仄かに光り出す。装置もそれに呼応するように、全体が光り、少し震えている気がする。
「はい、オッケー! これで風と水の精霊の加護はついたから、スムーズに進むようになると思うよ」
「ムジカさん凄いですね〜!」
アルドが感心している。まぁ私にも出来ないことはないんだが、出来ることはしてもらうことにしよう。
すると、部屋の外からトールが入って来た。
「おう、長いこと放置していたが使えたのかソイツ。俺も話にしか聞いたことはなかったが」
トールも魔導装置のことは知っていたようだ。
「あぁ、これで船の周りの海流と、風はある程度調整出来るようになったよ。キャロットくんにも伝えてあげてね」
ムジカよ、ギャレットだ。
ムジカはどうでもいいやつの名前はあまり覚えないタチらしい。




