28.ニセ勇者vsイカレ国王の戦い(語り部:ニセ勇者)
遂にハゲ国王のヤローは、親衛隊を中心としたミツボー王女を討つべく軍勢を送って来やがった。望むところだぜ。こっちもハゲを迎え入れる準備は十二分に整えてるんだ。
俺様たちは、下手に打って出ないで王都の城壁を利用して戦うことを選んだ。ここはなんせ、難攻不落と言われる要塞だから。利用しない手はない。
まず、個人戦にも大規模戦にも精通したイキリッチスキーが取る戦法はこれだ。王都中を捕虜の兵士どもに回らせて集めてきた肥し。これを投げつけることだ。
おっと、勇者らしくないとか汚らしいとか言うんじゃねえぞ。肥しを敵にぶつけるのは立派な戦術だ。ハゲ国王は普段は玉座でふんぞり返ってやがる癖に、今日に限っては張り切って陣頭指揮を執ってやがるからな。目にもの見せてやるぜ!
「いまだ……やれい!」
兵士どもは俺様の命令通りに肥しを敵兵に向かって投げつけた。一斉にぶん投げると、それだけで凄まじい臭いになるんだな。まあいい。さて、敵はと言えば……案の定、阿鼻叫喚の地獄絵図になってやがった。
あっはっはっは……ざまぁねえぜ! ハゲ国王も肥しまみれになって、恨めしそうに俺様を睨んでやがる。茶色になったんだしハゲを気にしなくていいんじゃねえの。こりゃ傑作ってもんだ!
王都を取り返そうとする、敵兵どもの士気もだだ下がりだぜ。それに肥やしまみれのままにしておくと、病気にもなるって言うしな。
俺様は長弓隊に攻撃の指示も出した。これで、根比べをしていけば向こうも根を上げるだろう。
しばらく様子を見ていると、ハゲ国王の兵士どもは攻撃を止めて逃げていった。さっさと臭い体でも洗って来い。あははははは……!
その日の夜は、俺様はとても満足な状態で就寝することができた。
可愛いミツボーから、あなたなしでは生きてゆけないという、甘い言葉と接待を受けて俺様のやる気は、昨日以上にみなぎってるぜ!
さあハゲ国王。お前は俺様の伝説のために醜く駆けずり回って、そしてくたばれ!!
そんな気分で城壁に立つと、俺は愕然としていた。
昨日までは、城門の向こう側に農民共の家々があったんだが、それらは全てが焼け焦げ、民草どもがいなくなってやがる。
「おい、あれは……どうなってんだ!」
兵士に聞くと、そいつは青い顔をしながら答えた。
「国王の兵士たちが襲ったのです……それも深夜のうちに……」
「どうして、指を咥えて見てた!?」
俺様が襟元を掴むと、その兵士は険しい顔をしながらこうほざきやがった。
「勇者殿が、城門の死守を命じられたからであります!」
確かに俺様は、ここを守れと言った。
だけどお前らはゴーレムかよ。俺様が右を向けと言ったらずっと見てんのか!?
「だったら、宮殿にいる俺様に指示を仰ぎにこい!」
そう言ってやったら、隣にいた兵が言い返して来やがった。
「勇者殿自身が昨日、入室禁止の指示を出されたばかりでは?」
俺様は、思わず殴りたくなる衝動に駆られた。なんなんだよ。ロクに働きもしないくせに、言い訳ばかりはいっちょ前にしやがって!
「お、おい……あれを見ろ!」
見張り役の指さした場所を見ると、俺様は我が目を疑った。なんとあのハゲ国王、農民を盾に縛り付けた状態で少しずつ、部隊を前進させて来るじゃねえか!
あの野郎、遂に頭がイカレやがったか!? てめえの国の民じゃないか。
「ま、まじかよ……」
「待てよ、あそこに縛られてるの……近所のガキンチョじゃねえか……」
「隣の家のばーさんまでいるぞ!」
そう言えばうちの部隊には、城門の外の農村出身者が多かったが、テメーら兵士の家族は王都の安全なところで生活してるだろ。
いつまでも過去の人間なんざに構わず、とっとと戦えってんだ!
「弓隊……構えろ」
その命令を出すと、兵士たちは、信じられない……と言いたそうな顔で俺を見てきた。
「ゆ、勇者どの……!?」
「これは命令だ。グズグズするな! クソどもから王女を守れー!!」
いつまでもバカ面をさらしてないで、さっさと弓矢で応戦しろグズども。
「放て!」
そう命令しても、間抜けな部下どもは明後日の方向に矢を飛ばしていた。一体、何をちゅうちょする必要があるってんだ。城門が突破でもされたら、てめーらの家族だって危ないんだぞ。
「ちゃんと目ん玉開けて撃て! このバカども!!」
俺様は喉がおかしくなるまで怒鳴り散らし、やっとのことで敵兵どもを追い返すことに成功した。いつまでシケたツラしてるんだ。
あの姑息なハゲ王に目にものを見せてやったんだから、もっと喜べってんだ!
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