27.帰り支度
女王のいる屋敷を出ると、小生は渡り鳥のジョニーからマーメイド諸島の様子を聞いた。
アウラの話の通り、マーメイド諸島は3つの大きめの島があり、その他にいくつかの小さな島と浅瀬でできているようだ。
特に小生がジョニーから念入りに聞いたのは、浅瀬がどのように広がっているかである。
マーメイドの女王の屋敷のあるマーメイド諸島の一番大きな島は、周囲を浅瀬で囲まれており、わずかに上陸できる場所も崖や深い森林に阻まれている。
そして、2番目に大きな島はと言えば、上陸自体はできるが標高800メートルほどの山があり、定期的に噴火もしているため、港を作ることにも向かない土地である。
『なるほど。つまり海賊連中がアウラたちの住む島を攻撃したのは……いわば当然という訳か』
『ピィー、ピュイ!(そういうこと。海賊連中から言わせれば、西の入り江を足掛かりにしないと、マーメイドの女王の島を攻撃できないんだ)』
それはそうだろう。船を起点に攻め込む海賊から見れば、浅瀬ほど厄介なものはない。
水深の低い土地に乗り込めば船はたちまち乗り上げて転覆し、水中でこそ本領発揮できるマーメイドから集中攻撃を受けるだろう。
『つまり、西の入り江を要塞化できれば……島の制圧はかなり困難なものになるということだな』
『ピィ♪(そーいうこと!)』
その話を聞いた小生は、すぐに戦場となった入り江の広がる島へと向かった。
すでに、戦没したマーメイドたちの遺体の回収は終わっていたが、まだ成仏しきれていない魂たちがかなり残っており、意思を通わせてみても、霊魂になった今でも入り江を守る気迫が伝わってくる。
『ふむ……ならば、洞窟などを地下で繋いで、奇襲しやすい地形を作ってみるか』
小生は入り江の先にある岩場へと向かうと、大地魔法を用いて洞窟同士をつなぎ合わせて通路を作った。
『1か所長いトンネルを作ると、地中がどういう構造をしているのか手に取るようにわかるな』
他にも繋げられそうな洞窟同士を連結させていくと、洞窟を通ることで岩場から森や砂浜にショートカットしたり、敵の上陸ポイントとなる入り江を挟み撃ちにできる場所を確保することも可能となった。
『アウラたちに、洞窟の構造を伝えておくか』
間もなく小生はアウラから紙を受け取ると、3日かけて作った無数の洞窟の構造を記してから渡した。
「た、たったの3日でこれほどの洞窟を作られるとは……さすがですね!」
『実際にマーメイド隊全員で、洞窟内を歩いてみて欲しい』
「わかりました……すぐに招集します」
間もなくマーメイドたちと洞窟内を歩いたが、マーメイドたちは小生のように暗闇でも周囲を見渡す力はないようだ。
洞窟に入って少し歩くと、その歩く速度は目に見えて落ち、松明だけを頼って進むという状況となっていく。
「こ、これは……地図がなければ周りの様子がわかりませんね」
「うわ、なにかぶつかった!?」
『お前たちが慣れたらツタを這わせたり、入り口付近を岩でふたをして偽装も行って欲しい。そうすれば、簡単には攻略できない入り江になるはずだ』
そう伝えると、マーメイドの戦士たちはビシッと敬礼しながら答えた。
「勉強になります!」
十分に入り江も強化したので、小生はエマたちの待つ母港へと帰ることにした。
そのことをマーメイドの女王に告げると、彼女は残念そうに小生を見ながらも、このファルシオンの立場を理解してくれたようだ。
「わかりました。では……こちらの金貨はファルシオン殿が勝ち取ったものです。使ってください」
『いや、金貨は親御さんを失った子供たちの養育費や、島の軍備の増強に使って欲しい。それよりも……』
小生は女王を見ながら言った。
『サンゴや真珠があればもらえないだろうか?』
女王は頷いた。
『もちろんございますよ。それから、さすがに金貨全てを頂くのは忍びないので……100枚はお返しして、残りはサンゴや真珠を売ったということにしてください』
そう提案すると、側近のマーメイドはしっかりと彼女を見ながら言った。
「さすがは陛下。今後も我らはユニコーン殿とだけ取引を行いましょう!」
思わぬ形で、彼女たちと交易する機会を得られたものだと思う。良心的な値段を提示しながら取引を独占できれば、我が船団に莫大な富が転がり込むだろう。
『では、失礼する』
こうして、大海原への足がかりを得たことを確信した小生は、満足に思いながらゴメスたちと共に船に乗り込んだ。
人魚たちの用意した船へと向かっていると、ゴメスは顔色を伺うように言ってきた。
「キャプテン……ちょっとお話が……」
『どうした?』
「実は、隊員の中で……人魚の島に残りたいというやつがいまして……」
ガンザスも苦笑いしながら言った。
「まあアレですよ。恋仲になったみたいなので……まあ……」
その話を聞いて小生は、なんだそんなことかと思いながら頷いた。
『それはそいつらが決めることだ。残りたい者は残れ、付いてきたい者は来い』
「へ、へい!」
こうして小生とゴメス隊12名は、残った隊員やマーメイドたちに見送られながらツァクセス島の母港を目指した。
ちょうどそのころ、王国ではミツボーや勇者率いる軍勢と、国王や皇太子率いる軍勢が衝突しようとしていた。
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