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23.雨の中の奇襲

 翌朝が近づいてきたとき、洞窟の中でケガをしていたマーメイドたちの体調は大きく改善された。

「ありがとうございますユニコーン殿。これほどの戦力があれば……まだまだ戦えます」


 小生はじっと味方の様子を眺めた。

 マーメイドの戦士が50名前後に、小生が連れてきたゴメス隊が18名ほど。この人数で海賊連中と正面から組み合えば、こちらが断然不利だろう。


 せめて晴天ならよかったのだが、外はあいにくの雨天ときている。小生は大地の角を現すとマウラたちを見た。

『人魚隊はなるべく、敵を島の内側に引き入れてくれんか?』


 そう依頼すると、マウラは不思議そうな顔をした。

「か、構いませんが……何かお考えが?」

『敵はこの雨の中を進んでくる。少しでも体力を奪って疲れさせたい』

「わかりました」

『では……大地の精霊の加護を!』


 大地の精霊の加護を授けると、マーメイドの戦士たちの背中や胸部には砂の塊のようなものが出現した。さすがに50人もいるので、1人当たりの効果はサーベルの斬撃を5回さばければいい方だろうが、こんな加護でもないよりはマシだろう。

「では、行ってまいります」

『武運を祈っている』

 マーメイドの戦士たちは槍を持つと、次々と洞窟から打って出た。


 その後ろ姿を眺めているゴメス戦士隊は不満そうだった。

 マーメイドの戦士たちは、普通の女性よりもたくましいと言っても、ゴメスたちから見れば守るべき女性である。彼女たちだけに戦わせて自分たちは後方支援だけというのは、戦士の名折れだと感じたのだろう。

『よし、我々は待機だ』


 そう指示を出したとき、若い戦士は声を荒げながら詰め寄ってきた。

「待ってください。彼女たちに戦わせて俺たちは何もしないんですか!?」

「お、おい……!」

 ゴメスやベテラン層の戦士たちは若者を止めたが、言葉を遮らなかったのは自分たちも本音ではそう思っていたからだろう。

 小生は鋭く若い戦士に目をやった。

『この戦いの主役は彼女たちだ。我々はそっと手を貸す……いつでも出撃できるように体を暖めておけ』

「は、はい……」

 血気盛んな若手戦士たちも、戦いの主役は彼女たちと伝えると仕方なさそうに腰を落ち着けた。

 理解はしたが納得はしていないという様子で、彼らは軽く体を伸ばしたり、剣の構え方の確認などを行っている。



「いたぞ!」

「捕まえろぉ!」

 野太い海賊の声と、高いマーメイドたちの叫び声があちこちから響いてくると、やがて斬り合う音や叫び声が聞こえてきた。

 洞窟の中に残っていたマーメイドの少女たちは、怯えた様子で身を寄せ合っていたが、聞こえてくるのは海賊の断末魔ばかりだ。

 同時に、こんな声も聞こえてきた。

「な、なんだこりゃ!? 砂みたいなのが邪魔して攻撃がはじかれるぞ!」

「くそ、弓矢でねらえ!」

「ゆ、弓も一緒だ……どうなってやがる!?」


「退くぞ!」

 マーメイド隊隊長の号令と共に、マーメイドたちは注文通りに海賊を引き付ける行動に移ってくれたようだ。海賊の声も聞こえてくる。

「逃がすな! これはたぶん……精霊の加護を得る魔法か何かだ! 何度か攻撃すれば消える!」

「確かに、砂はどんどん小さくなってまスね!」

「また支援を受けると厄介だぞ! 離脱させるな!!」

「くそ……魔導士はどこだ! そいつさえぶっ潰せれば」



 小生はゆっくりと立ち上がると、洞窟の奥に向けて歩き出した。

 そして洞窟の奥深く、行き止まりとなっている場所に立つと、地の角をかざした。

「な、なにをしているんです……キャプテン?」

『脇役としてしっかりと仕事をする時が来た。お前たちも準備をせよ』


 ゴメス隊のメンバーはお互いを見合うと、次々と武器を手に取った。

 小生は頷くと後ろを振り返り、ゴメス隊のメンバーを見た。

『今回は、雨天という悪条件の中で捕らわれたマーメイドたちを救出する』

 その言葉を聞いたゴメス隊のメンバーは目を大きく見開いた。その表情は待ってましたと言わんばかりに喜びに満ちていたが、小生は厳しい表情を向けた。


『今回は、かなり危険なものとなる。恐らくお前たちの何人かはここで血を染め……命果てるだろう。それでも……やるか?』

「上等ですよ!」

 若手隊員が言うと他のゴメス隊のメンバーも頷いた。どうやら棄権する者は1人としていないようだ。

 小生は険しい顔をしながら頷いた。

『わかった』

 小生は角を光らせると、ゴメス隊員18名全員に大地の加護を授けた。

 砂の量は先ほどのマーメイド隊の倍程度だ。サーベルの斬撃なら10回を受け切ったときに加護は消滅する。

『小生は入り口付近で敵の増援部隊を迎え撃つ……船内への突入とマーメイドたちの救出……頼んだぞ!』


 小生は角を光らせると、土壁や木の根に働きかけて道を切り開いた。

 その先には光が差し込んでおり、穴から抜け出すと、海賊たちのアジトとなっている船のすぐ前の崖へと出た。

 海賊たちは、意味が解らないという様子でこちらを眺めて某立ちしていた。


 小生はその海賊たちに向けて大地のつぶてを見舞って、一瞬で7人全員を撃破した。

『作戦開始だ!』

「おおおおお!」

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