22.状況確認するウマ
人魚の避難場所となっている洞窟には、大勢のマーメイドたちがいた。
その大半が、幼い女の子たちであり、母親とはぐれたのか不安そうな顔をしている者や、姉妹と思しきマーメイドたちが汚れた体のまま、抱き合うように体を暖め合っていた。
「表もひどかったが……ここもひどいな」
「同業者とはいえ……ひでぇことしやがる!」
ゴメス隊のメンバーは、じっと彼女たちを見守ることが苦しいと言わんばかりの表情をしていた。海賊の中でも心優しい心を持つ彼らが、そう思うのも無理はない。
特に若手の戦士たちは、罪もない少女たちをこんな目に遭わせた海賊に対し、許せないという感情をむき出しにしていた。
さて小生はと言えば、違和感を持っていた。
なぜマーメイドばかりで男人魚がいないのか不思議だ。ここまで人魚がいれば男の子だって混じっているはずだ。
『男の子はどうした?』
「我々人魚族は、基本的に女しか生まれないのです。女王に力を認められた戦士が初めて男となる権利を得て性別を変更することができます」
人間に近いから男女がいるのかと勝手に思っていたが、実際はこういう変わった方法で子孫を残していく種族もいるのか。
『なるほど。ちなみにブラッドウィリアムの連中の目的は、この島そのものか?』
「この島には大した資源もありませんし、土地そのものも痩せています。恐らくですが……目当ては我々マーメイドを捕らえることだと思います」
どうやらマーメイドたち自身も、自分の国には多くの財宝が眠っていることを知らないようだ。
小生はけが人が寝ている区画で座ると、角を緑色に光らせた。
緑色の光が持つ力にユニコーンのパワーが加わることで、痛みを抑える効果が強化され、痛みで苦しんでいたマーメイドたちも表情を和らげている。
『連中はどれくらいの数で襲ってきている?』
「海賊船4隻……200人前後と思われます。今は夜襲を恐れているのか船の付近まで後退していますが、明日の朝にはまた攻撃を再開するでしょう」
『なるほど』
外を見ると、ちょうど日が暮れて辺りが闇に包まれようとしていた。
『とりあえず、応急処置は終わらせておいた……少し出かけて来るぞ』
その言葉を聞いたマウラは「き、危険です……ユニコーン殿!」と叫びながら付いてきた。
『大丈夫だ。少し確認したいことがあるだけ……』
小生は人魚族が隠れている洞窟を出ると、角を隠して単なる黒毛馬になった。
すでに日は暮れていたが、ウマの目は深夜帯でもしっかりと辺りが見渡せるので問題はない。とぼとぼと歩き回ると、焼け焦げた森や村々が見えてくる。
『むごいな……』
ざっと見まわった感じではアウラに案内された島は、ほぼ全焼。マーメイドも3割が死亡してしまっているという、小生から見れば全滅と判定せざるを得ない状況だった。
『他の島からの援軍も来ているだろうから、ここまで戦士を失ってしまうと……長期間戦い抜くのは厳しいだろうな』
とても悩ましい状況だと思った。
島一つを領土化した今なら、人魚たちを母港まで逃がすことはできるだろう。しかしそうなると、この島の一帯は海賊たちに占拠されるだけでなく、サンゴや真珠という財力まで提供し、更に我々の母港攻略の足掛かりにもなりかねない。
『…………』
かといって、このまま堅守しても、彼女たちが守り切れるかと言えば……現状では厳しい。
『ピィーピュイ?(何か手伝えることはあるか?)』
そういえば渡り鳥のジョニーたちも、一緒に来てくれていたのだった。
『人魚族とブラッドウィリアムの連中の被害の比率を知りたい。夜のうちに人魚族の死体がどれくらいあるのか……大雑把でいい。調べてきてくれ』
『ピー…… (知りたいのなら調べて来るけど、海賊の死体なんて全然見当たらなかったぜ?)』
そう言われてみればそうだ。小生も島のあちこちを見回したが、マーメイドの遺体の回収は追いついていないが、海賊側は遺体を回収しているように見える。
『……わかった。それなら、安全な場所に退避してほしい』
そう伝えると、ジョニーは飛び立った。
小生は島を歩き回っていると海賊船を見つけた。
数は報告の通り4隻が停泊しており、海賊どもは捕らえたマーメイドを荷物のように担ぎ上げて海賊船へと連行し、砂浜ではベテラン風の海賊たちが、泣きわめく幼いマーメードを笑いながら酒盛りをしていた。
『ふむ……思った以上に多くの人魚が捕まっているようだな』
息を殺しながら、海賊船の周りにたむろしている連中の力量を測ったが、抜きん出た力を持っていると思われる人間はいなかった。どう見ても一番腕の立つ者でもゴメス以下。数と凶暴さだけで人魚の入り江を荒らしまわっているという雰囲気である。
さて、どうやって連中の数を減らそうかと思案していると、海賊たちの話し声が聞こえてきた。
どうやら人魚の捕縛数にノルマを課せられているらしく、その数が明日にも満たされるという。そして船乗りとしての勘から明日は雨天だから油断するなという声も聞こえてきた。
ふむ……今の人魚たちや我々の装備だと、海賊船が引き返しはじめてしまうと、洋上で追撃を行うのは難しいだろう。
こいつらを叩き潰して、人魚の入り江に手を出すと恐ろしいことになるとわからせるには、明日しかチャンスがないということになる。
『しかし、雨かぁ……』
小生は困ったなと思いながら空を見上げていた。
雨ということは、得意の炎系魔法の威力が大きく下がってしまう。降らないでくれたことに越したことはないが、最悪の事態を想定しておいた方がいいだろう。
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