17.ガンザスとゴメス
街の片隅で抵抗を続けていた海賊たちも、次々と島民たちからの攻撃を受けて倒され、降伏した海賊たちは、村人たちの手によって小生の前へと連行されてきた。
海賊の反応は様々だった。相変わらず怒鳴り声をあげて威嚇する者や、怯えた様子で声を上げ責任を他の海賊に擦り付けようとする者。後は黙ってうつむいている者などもいる。
『けっこういるもんだな』
『島の樹海部分まで逃げた海賊もいるみたいだよ。後で残党狩りが必要だね』
息子のグラディウスと話をしているうちに、村人たちは海賊を残らず小生の前へと引っ立てていた。
村長と思しき初老の男性は言う。
「ユニコーン様。我々を苦しめていた海賊たちを倒してくださり……まことにありがとうございます!」
『我々の前に連れてきたということは、全員の処遇を決めて欲しいということか?』
「その通りです。ユニコーン様なら、悪人を残らず的確にさばいて下さると……我々は信じています」
島民の多くが賛同の視線を送るなか、海賊の一人が気に入らなそうに舌打ちをした。そして「殺すならさっさとしろ!」と小生に向かって唾も吐きかけてきた。
『そうだな。たとえ罪人でも長く待たせるのは悪い。すぐに処罰を決めるとしよう』
小生はゆっくりと立ち上がると、縛られたまま座っている海賊たちを1人1人見て回った。ふんぞり返って開き直っている者。怯えている者。周囲をキョロキョロと見て隙があれば逃げ出そうとしている者などさまざまである。
その中の1人に興味を持った小生は、脚を止めることにした。
『そこの目つきの鋭い男。名はなんという?』
「へっ……ユニコーンさまに興味を持って頂けるなんて光栄」
そう言うと男は、いびつな笑みを浮かべながら身を乗り出した。
「俺様は処刑人のガンザスさ。この手でざっと50人は葬ってきたぜ?」
正直な男だと思った。コイツの周囲には確かに様々な魂が浮遊しているが、そのほとんどが憎悪の感情をガンザスに向けてはいない。魂の輝きから考えても、私利私欲のために殺生を働いてきた人間……とは言い切れないようだ。
『これから罪人を処刑したい。手伝ってもらえるか?』
そう言うとガンザスは驚いた顔をしてから、不敵に笑った。
「へっ……いいのかよ。俺はそこのしょぼくれた海賊の長に命じられるままに、罪もない人々を殺した張本人だぞ。まあ俺を死刑執行人にした後で、最後に俺自身も処刑するのならいいアイディアだけどよ!」
『罪なき魂を消したのなら、最低でも同じだけ罪人の魂も処分してから死ね』
そう言いながら角でガンザスを縛っていた縄を切ると、この男は調子が狂ったと言わんばかりに頭を掻きながら立ち上がった。
「わかったよ。で、どいつからやるんだ?」
そうだなと思いながら視線を動かすと、ちょうど目が合った海賊が「ひいっ……」と悲鳴をあげながら目を逸らした。魂の濁り方や周囲を見る限り4人は殺している。しかも女や子供という弱い者ばかりをだ。
『あいつからだ。容赦するなよ』
「りょーかい!」
「た、助けてくれ……助けてくれ……ぐぎゃあ!?」
さすがに海賊をしているだけあり、殺人経験のある連中が多数いた。
人を殺めたと言っても、海賊同士の戦いで殺めたケースから、無抵抗な子供のような存在を殺めたケースまで様々だったので、小生はまず丸腰の相手を自らの意志で殺めた者を処断させた。
『半分以下になったね』
『後は小者と、5人以上を殺した者だけだな』
再び残った海賊連中を見ると、海賊の多くが震えながら廃墟になっている教会を眺めていた。
島の者の話によれば、この教会は海賊たち自身が焼いただけでなく、中にいた神父やシスターまでつるし上げて火あぶりにしたと聞いている。
自分たちで壊しておいて、最後に神に助けを求めているのだからふざけた連中だ。
『今から小生が前脚で軽く蹴った者は追放処分だ。小舟にでも押し込んで沖にでも流しておけ』
弱い者いじめ……特に女性を虐げることをこよなく愛する者は、目の辺りに独特の瘴気に似た光が宿っているものだ。そういう者にまずは目を付け、周囲を読みてみると生霊と呼ばれる被害者の念のようなものが見える。
それが3体以上付いている者を軽く蹴って追放していくと、海賊たちの数も40人を下回るほどになった。
小生は処刑人ガンザスを見た。
『ガンザス。今まで死刑執行ご苦労だった』
そう言うとガンザスは、もしかして俺ってもう用済み? と言いたそうな顔をしているが、小生が言いたいのはそういうことではない。
『ここからは、自分の命1つでは罪を償えない者を地獄へと落とす。処断は小生自身で行うゆえ、お前はそこで罪人が逃げ出さないか見ていろ』
今の言葉を聞いたガンザスは、目を点にしたまま青ざめた顔で「は、はい……」と答えていた。
5人以上の殺害に該当した26名のうち、小生が悪質とみなしたのは23名だった。
殺害数が比較的少ない者や、被害者を苦しませずに殺してきた者は、同じように痛みを感じる間もなく屠ったが、島民の心の拠り所だった教会を焼き討ちし、神父たちを火あぶりにした連中、又は強く賛同していた連中には炎による洗礼を与えることにした。
「ぐああああああ……あちい!」
「この、自分だって人殺しのくせにい!」
『確かにそうだな。もし小生のやることが気に入らないのなら……いずれ神とやらが、このファルシオンを裁くだろう』
小生は海賊たちを睨んだ。
『だが、お前たちを裁くのは小生だ!』
「ち、ちくしょー……このウマあぁぁぁぁちい!」
『さて……残った15名』
そう言うと、まだ座っていた15人は全員がビクッとしていた。周りにいた海賊たちが次々と処罰されたので自分の番だと思ったのだろう。
『お前たちは、海賊にしては魂がきれいだが……それでも蛮行に手を貸したことに変わりはない。チャンスを与えるゆえ、島民の鉾となれるよう努力をするように』
ベテラン風の海賊は、不思議そうな顔をしながらこちらを見ていた。
「な、なあ……一角獣さんよ。アンタは俺たちに何させようってんだ?」
小生は、この顔に傷のある男にも興味があった。単純に100人近い人間を殺めている男であるが、この者の魂は美しく、周囲を飛び回っているのは悪しき魂ばかりである。
『お前の名は?』
「ゴメスだ……あんたに名前を聞いてもらえるなんて光栄だよ!」
『ゴメス。お前を戦士隊の隊長に任命する……島の奥地に逃げた海賊どもを掃討せよ』
「……俺を使ってくれるのか! 喜んでアンタの剣になるぜ!!」
ガンザスもまた小生をしっかりと見た。
「俺も行っていいか? 無抵抗な人間を殺す役割ばかりで嫌気がさしていたんだ」
『構わんが隊長はゴメスだ。彼の指揮下に入ってもらうぞ』
ガンザスはしっかりと頷いた。
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