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16.ファルシオン海賊団の初陣

 海賊船は先日にグラディウスが予想した通り、午前7時にツァクセス島の沖へと到着した。

「し、島が見えたぞ!」

 見張り台に上っていた漁民の男が言うと、クルーたちの表情が恐怖で凍り付いていた。これから島を制圧しに行くのだから当然だろう。

 小生はクルー。特に漁民組の服装を横目で見た。


 彼らは漁師なのだから鎧はおろか武器すらも持っていない。そこで支給品として手渡したのは槍である。

 これならば少ない金属でも作れるうえに、武術を習っていない素人でもそれなりに戦うことができる。小生は漁民のメンバー1人1人の目を見ながら言った。

『いいか。槍は1対1の戦いなら突きもアリだが、複数人の相手なら振り下ろしながら戦え』


「や、槍って……突き刺す武器じゃないのか?」

 漁民の一人が言うと、他のメンバーも頷いた。

『銛で漁をしたことがあるのならわかると思うが、穂先が相手の体に突き刺さると……簡単には抜けないだろう?』

 そう指摘すると、漁民の特に男連中のうちの3人が顔色を変えた。

「そ、そう言われてみれば……」


 小生は漁民たち男女9名に言った。

『お前たちは基本的に、複数人で槍を構えてお互いの脇や背後を守るようにしろ。天使娘3人組や王女たち飛び道具組が敵を完全に崩したら合図をする。そうしたら海賊どものケツを思いっきり蹴っ飛ばしてやれ』

「は、はいっ!」


 作戦を指揮していたら、ジョニーたち渡り鳥がこちらを見た。

『ピピィ?(俺たちは何をすればいい?)』

『お前たちは、安全なところに身を隠しつつ海賊の動向をチェックしてくれ。伏兵がいたら近くにいる仲間に合図を送って欲しい』

『りょーかい!』


 船首に立って島や港の様子を眺めると、海賊と思しき男たちが寄ってたかって村人に暴行を加えていた。

 その横では何があったのかは知らないが、子供を含む村人たちが十字架に括り付けられてさらされている。報告には聞いていたが、思った以上の蛮行である。

 肩に止まっているジョニーは言った。

『ピピピィ、ピィ!(あいつら、ひげの形が気に入らないとか、目が合ったとかそういう理由で村人を処刑してるんだ。それも家族ごとな)』

『まさか創作の世界のような悪行を、本当にやる者たちがいるとはな……』

 小生は思わず笑っていた。

『これは、倒し甲斐のありそうな小悪党どもだ』



 堂々と船を港へと進め停泊させると、複数の人相の悪い海賊たちが港へと集まってきた。

 誰しもがいびつな笑みを浮かべており、いかにもカモが迷い込んだと言わんばかりである。

「おい、船長は誰だ……この島は俺様たちゴッグ海賊団のモンだぞ!」

 同時に人相の悪い男たちは、あちこちからドクロマークの海賊旗を掲げると、次々と我々に向かって親指を下げる動きや、中指を立てながら罵りの言葉をかけてきた。

「女がたくさん乗ってるなぁ……こりゃいい!」

「お前ら、手ぇ出すなよ……男は俺様がぶっ潰す!」

「ずりぃ、俺にも分けろよ!」

「はっはっは~今日は、昼間から歓迎会だ!」


 その一部始終を眺めていた王女エマは、ため息をつくと言った。

「キャプテン……そろそろお姿を見せてはいかがでしょう?」

『では、盛大な歓迎にお答えして……新人研修開始といこう!』


 小生は赤々とした角を現すと、岩でできた鎧を体中にまとった。

 威勢のいい海賊の何人かが、船から降りた小生に向かってきたが近づく前に炎系魔法で火だるまにし、遠くから弓矢を構える者に向けては大地系魔法の岩つぶてで応戦。

「ごびゃあ!」

「あぢ、あぎゃあ~ 火……火……ひぃ!」

「あぎゃぼが!?」


 敵海賊団が混乱したところで、後ろに控えていたグラディウスも角と翼を現し、脚元からは無数の魔文字のようなものが現れた。

『水のユニコーン得意の守護魔法……行くよ!』


 グラディウスが魔法を発動させると、クルー全員は水精霊の加護を得た。

 これを得られると体の周りに水気が巡るようになり、水の塊が盾となって炎や風などの属性魔法や、物理攻撃などの威力を軽減してくれる。攻撃を防ぐごとに水塊が小さくなることが玉に瑕だ。


 小生もまた向かってくる海賊を炎魔法や蹴りで倒すと、クルーたちに向けて角を光らせた。

『では、炎のユニコーンのお家芸だ』

 クルーたちの拳に、炎精霊の加護が現れた。

 これを得られると殴った際はもちろん、槍を振った時や弓矢で狙いを定めたときも炎属性による追い打ちが行われる。攻撃をすればするほど加護は小さくなるが、小生の場合は一度付与すれば10回は連続使用ができる。


『行けお前たち。海の男の強さを存分に見せつけろ!』

「お、おおおおおお!」

 漁民の男たちが先陣を切ると、王女エマや錬金術師レンチ、高原3姉妹に漁民の女たちも武器を手に海賊に向かっていった。

 小生は彼らに向けて、もうひとつ守護魔法を使うことにした。


『地のユニコーンの十八番と言えば……やはりこれだな!』

 小生は角を緑色に光らせると、クルーたちの体に砂の塊のようなものが張り付いた。海賊は男漁民に斧を振り下ろしてきたが、現れた砂の塊は漁民の肩口と頭の辺りで固まって岩となり、海賊の攻撃を防いだ。

 本来受けたダメージに比例して砂の量は減ったが、男漁民は叫びながら槍を振り下ろしたので、海賊はもろに攻撃を受けて火だるまになった。

「ば、バカなぁ――――!?」


 その横で身長190センチ、100キログラムはあろうという海賊は、150センチメートルほどの女漁民から逃げ回っていた。

「く、くそ……俺様は悪名高い海賊だぞ。王国の兵士だって10人くらい殺してるんだ……なんでこんな青臭い奴らにぃ……!」

「逃げるなー。このコシヌケー!」

 直後に追いつかれて槍を振り下ろされると、ベテラン海賊は火だるまになって断末魔を叫んでいた。


 別の場所では、海賊が複数人で王女エマを睨んでいた。

「こいつは魔女だ……気を引き締めてかかるぞ」

「わかってる。一気に組み伏せてどっちが強いかわからせてやる!」


 エマの背後に小柄な海賊がしのぶ寄ると、海賊たちは一斉に武器を振り上げた。

「やるぞ!」

「……ライトニングアロー!」

 エマが天に向けて手をかざすと無数の稲光が走り、不用意に近づいた海賊連中は残らず感電し、体中から黒い煙を出しながら崩れ落ちた。この様子だと痛みも感じる前に即死だろう。



 次々と敗走する海賊たちだったが、海賊の頭と思しき男だけは民家の屋根上から戦いを眺めていた。

「ガキどもは単なる目くらませだ。あのウマをやれ……あいつだ、あの黒いの! あれがボスだ!!」

 その言葉を耳にした小生は、笑ったままリーダー風の男を睨んでいた。


『偉そうに命令する前に、お前が来たらどうだ?』

「うるさい……やっちまえお前ら!」

 命令が出ると、海賊は20人ほど盾を構えて向かってきた。

 恐らくは、炎による魔法や大地系のつぶて攻撃を警戒しているのだろう。確かに正しい判断だと思うが、小生をこれだけのウマだと思ってもらっては困る。


 しっかりと脚を踏みしめて走ると、まずは1人目を角で突き倒した。

 続いて2人目に蹴りを入れ、3人目には脚先から放った高速つぶてで吹き飛ばし、後ろに回った4人目には蹴り、5人目には側面からの炎攻撃と、取り囲もうとする海賊を1人ずつ確実に返り討ちにした。

「囲め、囲め、ウマは両脇が弱点なんだ! 何度も攻撃して……ヤワな横っ腹を……」


 そう怒鳴っていた海賊の頭だが、吐血しながら屋根から落下し、頭から水中に叩き込まれていた。グラディウスがその弛んだ脇腹に、蹴りを見舞っていたようだ。

『そう。人もウマも弱点を攻めるのは基本だよね?』


 グラディウスは頭のいた場所から街の様子を眺めていた。

『あ、そろそろ……追加で水の守護魔法をかけないと』

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