15.船旅
渡り鳥のジョニーは、友人の渡り鳥たちと3羽で船の上で羽根を休めていた。
『じゃあ、漁村の人たちは、問題なくやり過ごせたんだね?』
『ピュイ、ピピピピィ?(そういうこと。今後は王国にも、お前たちにもいい顔をしながら八方美人作戦で生き残るみたいだぜ?)』
『賢明だ。こちらとしてもその方が助かる』
船の上に渡り鳥用の休憩ポイントを作れば、様々な鳥たちが集まって情報を共有できる。
我ながら良い判断だと思うが、心配事がひとつあり、病気を持ち込む危険性があることは忘れられない。
鳥自身には無害な病でも、他の生き物。例えばウマや人間に感染れば有害なモノになるということも十分に考えられる。
『念のため、ここで休憩す者は健康かどうか調べさせてもらうぞ。1羽ずつ小生の前に来てくれ』
幸いにも渡り鳥たちは健康だったが、1羽だけ栄養素が欠けている者がいたので、マメを与えることにした。
ちなみに、その鳥とはジョニーのことである。
船は順調に風を受けながら進んでいき、夜になるとグラディウスがジョニーに話しかけていた。
『今、北の方角はこっちだよね』
グラディウスが角で方角を指し示すと、ジョニーは『惜しい!』と答えた。
『ピィ(もう2度こっち)』
『な、なるほど……聞いておいて良かった……』
グラディウスは、目をつぶりながら何かをイメージしているようだ。
『2度……ということは、予定よりも速く進んでいるね。潮の流れが思ったよりも速いのかな?』
『ピュイ(現在地はしっかりと把握しとけよ)』
『うん!』
小生は、渡り鳥たちに聞けば、島もすぐに見つかるだろうと気楽に考えていたが、息子のグラディウスはしっかりと現在地や船の行き先をコントロールしたいらしい。
コイツの母親もその日暮らしのことしか考えていなかったはずだ。いったい、誰に似たのだろう?
いや、もしかしたら両親が共にズボラだったからこそ息子がしっかりしたのかもしれない。
翌朝になると、グラディウスは船内でクルーたちに言った。
『今はざっくりとだけど、この辺りの海域にいるよ。船は西北西の方角に進んでいて、明日の午前7時あたりで目的地……ツァクセス島が見えてくると思う』
その予想を聞いたクルーたちは、半信半疑という雰囲気だった。特に船乗りである漁村の男たちは、時間指定は悪手だろうと言いたそうな顔をしている。
「おいおいグラディ。いくらなんでも時間まで指定しなくてもいいんだぞ?」
「そうだよ。特に風ってのは、その時によって流れ方も変わるもんだから、大体明日の午前中に〜とか、そういう言い方のがいいぜ」
その言葉を聞いたグラディウスは、恥ずかしそうに笑った。
『それもそうだね。じゃあ明日の午前中と訂正させてもらおうかな』
さて、この日も船員たちは食事を済ませると、甲板の掃除をしたり、帆を張り直したりとそれぞれの作業をテキパキとこなしていた。
グラディウスはと言えば、エマニュエルと共に風上に立って風の流れを観察している。
「現在地をより、正確に知る方法ですか……」
『うん。何かいい知恵はないかな?』
エマは少し視線を上げた。
「我が王国では、大地と水の精霊に作物の収穫高を聞く……という儀式があります。グラディウスさんなら、水と風の精霊から現在地はもちろん、未来の様子さえもわかるのではないでしょうか?」
『なるほど……』
エマとグラディウスは視線を上げた。
渡り鳥が来たからだが、今回の鳥は大陸ではなく目的地の島からやってきたようだ。
『ピピィ!(よう、しけたツラしてどうした?)』
『ピピピィ……(大陸のジョニーか。島があまりにも危ないから出てきたんだよ……)』
『ピピピピォ?(確か海賊がたむろしてるんだっけ?)』
『ピピ……(ああ、連中……いい人間は殺すし、俺たちには矢を射かけて来るしでロクなやつらじゃねえ)』
『ピピィ(もし、ここの船に俺たちの声が聞き取れる奴がいれば、ツァクセス島には関わるなと言ってやりたいよな。あそこには何人も人を殺している悪名高い男もいる)』
小生はすぐに近づくと、島からやってきた鳥たちに尋ねた。
『その話、詳しく聞かせろ』
間もなく、渡り鳥たちから島の様子を詳しく聞き出すことができた。
海賊の数は200~300人前後いるようだ。その半数以上は現地の住民の中でも腕が立ち粗暴な性格をしており、残りは生粋の海賊で、何人もの人を殺しているような奴らだという。
我が船にいる10人に満たない漁民たちは、全員が怯えた様子でこちらを見ていた。
「ま、マジかよ……それってかなりヤバい海賊じゃねえか!」
「か、勝てるわけねえ……今すぐに引き返しましょう!」
この程度の数で臆病風に吹かれるとは、こいつらはまだ海賊というのがどういう仕事か理解していないようだ。
『阿呆なことを言うな若造ども。こっちには15人を超える戦力がいるんだぞ。300人程度の数に怯えていてはユニコーン海賊など勤まらん』
「い、言ってることが滅茶苦茶ですよぉ!」
「そ、そうですよ……しかも、うちの船にいるの半数以上は女ですよ!?」
まさか、怯えて声まで荒げるとは。できの悪い子分たちだが、ゆっくりじっくりと海の支配者としての自信と自覚を育てていく必要がありそうだ。
「おい、グラディウスに王女、お前らからも何か言ってやってくれよ!」
その言葉を聞いた王女はオロオロとした様子で、小生とグラディウスを交互に見ていたが、当のグラディウスは平然とした表情のまま答えた。
『何かって言われても……正論だからね』
「そ、そうだよな……キャプテンファルの言葉は……」
『だって300人程度……小生ひとりで十分に制圧可能だよ。少し時間はかかるけど……』
さすがに単独で300人はふかしすぎだろうグラディウスよ。まあ、お前なら小生が想像もしない方法で制圧してしまいそうだから怖いが……。
『ツァクセス島の制圧は新人研修を兼ねている。小生が最前線に立ちながら戦い方を実演するから、各自よく見ておくように』
そう話を進めると漁民組。特に男連中が強い関心を向けてきた。
現場たたき上げの彼らにとって、キャプテン自らが陣頭指揮を執るとなれば強い関心を持つものなのだろう。
『愚生も後ろから口出しさせてもらうよ。こんなことくらいで脱落者を出したくないからね』
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