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18.エマニュエルの小さな王国

 海賊ゴメスは、すぐに手下たちを率いて逃亡した海賊たちの討伐へと向かった。

 グズグズしていると逃亡した海賊同士で結託して倒すことが困難になる。こういう相手には先手を打つに限る。

『お父さん、愚生も見てくるね。逃げた賊の中に手強い者がいないとも限らないから』

『わかった。ジョニーたちとも連携しつつ、慎重にやれよ』


 グラディウスが海賊の討伐に向かうと、小生は島民たちを見た。

 彼らの多くは安堵した様子だったが、まだ話は終わっていない。渡り鳥たちの話では、海賊に嘘の密告をして気に入らない島民を間接的に殺害していた者がいるためだ。

『それから、お前たち島民の中にも海賊たちと同等に悪事を働いていた者がいる』

 小生はまず、村長を睨んだ。

『村長……まずはお前だ!』

「お、お待ちください……一体、私が何を!?」

『お前の側に、恐ろしい霊が見えるぞ……その服装。前の村長か』


 それだけを言うと、村長や家族は叫び声をあげながら港へと逃げて行った。高原3姉妹は、捕まえなくていいのかと言いたそうにこちらを見ていたが、小生は追わなくていいと合図した。

 どっちにしても追放を言い渡すつもりだったので、自分から逃げてくれるのなら好都合だ。


 小生は他にも、嘘の密告で商売敵を海賊に処刑させた一族や、恋人を取るために恋敵を海賊に処刑させたが恋人も取られてしまった間抜けな青年。海賊に認められていないにも関わらず、海賊の手下を自称して問題行動を繰り返している男にも追放を言い渡した。

 さて次は……と思っていたとき、王女エマから苦情が来た。

「あの……キャプテン。あまり厳しくやりすぎると、島民がいなくなってしまいますよ?」


 そうだろうかと思いながら島民を見ると、誰しもが怯えた様子でこちらを見ていた。

 まあ、海賊に脅されていたとはいえ、誰しもが後ろ暗いことの1つや2つしているのが普通だろうから、あまり潔癖症になるのもエマの言う通り良くないだろう。

『これくらいにしておこう。今よりこの島は……エマに統治してもらう』


 そう言いながらエマに顔を向けると、島民たちは誰しもが恐々とした表情のまま小生やエマを眺めていた。これから一体、何が始まるのか不安で仕方ないのだろう。

 エマは一歩前に出て言った。

「わかりました。これより……島の代表者を選挙によって募り、ユニコーン議会を作ろうと思います。私はユニコーンの代理として選挙の運営や議会承認など、様々な雑務を行いますので、皆さんよろしくお願いします」

「お、お嬢ちゃん……選挙ってなんだ?」

「選挙というのは……」


 島民たちの食いつきは想像以上だった。エマは選挙というシステムや、議会というものがどういうモノなのかを丁寧に説明して、島民たちが不安がらないように努めている。

 やがて島民たちも安心したのか、先ほどまでの重々しい雰囲気がウソのようになくなっていた。


「選挙は2週間後……4月の上旬に行います。15歳以上の方は誰しもが1票を持っているので、議会の一員に相応しいと思う方を代表者に選んでください」


 せっかく海賊を倒したのだから、後釜として島の支配者になった方が賢い……と普通の海賊なら考えるだろう。

 しかしその方法では、無理やり住民たちの不満を押さえつけているにすぎず、この島に母港を作ったとしても常に島民の反乱に怯えることになる。

 それよりも自由と自治権を提供して、島そのものを味方にしたほうが海の覇道を進むうえで大きな助けになる。

『以上で解散としよう』

 


 政治に参加できるという話は、海賊討伐に向かったゴメスたちの耳にもすぐに入ったようだ。

 自分たちにも1票が与えられるということを知ったゴメス隊の面々は、大いに士気を上げ、1週間も経たないうちに潜んでいた海賊を30人以上も倒したり捕縛する働きを見せた。

 捕まえた賊の中にも、魂の状態が比較的良好だった3名を加えたことで海賊退治もはかどり、選挙前日には島の未開拓ゾーンで抵抗していた最後の海賊グループも降伏。

 降伏した海賊たちは、処刑ではなく追放処分ということで小生とグラディウスは手を打つことにした。


 降伏した海賊たちを見送っていると、グラディウスとエマは話をしていた。

『ねえ、エマニュエル?』

「なんでしょう?」

『どうして王族である君が、すんなりと議会の話を受け入れたの? 普通なら自分の王国を持ちたいと思うんじゃないかと感じるんだ』

 エマは目を細めて言った。

「おじい様もお父様も強い人でした……いや本当は弱いけれど強くあろうとして、様々な無理をしている姿を見てきました。妹たちもそうです」

 グラディウスは印象深そうにエマを眺めた。

「でもそれは、本当の姿ではないと思うんです。自分自身が無理をし、周りにも無理を強いた結果が……今の王家になっている」

『無実の姉に罪を着せて……追放した妹のように?』


 エマは何も答えないまま視線を上げて、海のかなたを眺めていた。

 彼女が何を感じているのかはわからない。しかし、考えていることは案外普通の人と同じなのかもしれないと思えた。

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