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フィオは、ノヴェリの日以来、全くアーヴィンドと会わなくなってしまった。
(贈り物、失敗しちゃったかな……)
アヴィがあの飴を好んでいたので、アーヴィンドも好きかと思ったのだ。
「はぁ」
「どうしたの、来て早々ため息ついちゃって」
受付のドニが笑う。彼女はいつも笑顔で尊敬する。
「ドニさん……アーヴィンドさんって、最近は何してるんですかね」
するとドニが笑う。
「貴方達って似てるのね」
「え?」
「アーヴィンドも、少し前まで貴方の事を気にしてたのよ。あいつは何してるって、毎日ココに聞きに来てたの」
「そ、そうなんですか?」
アーヴィンドが少しはフィオの事を気にしていてくれる事が嬉しかった。
「けど、最近はダンジョンに潜りっぱなしだけどね」
「え?」
「もう、二週間は経つかしら?」
「潜りっぱなしって……一度も戻って来てないんですか?」
「そうよ。アーヴィンドって、実は昔はダンジョンに住み着いてたのよ」
「えっ!?」
「ダンジョンに住み着いているところを、上からやって来た冒険者に見つかって、まぁいろいろあって地上に出て来たってわけ」
初めて聞いた話だった。
「けど、ダンジョンに暮らすとか出来るんですか……」
「うーん、出来なくはないかな。水場もあるし、食料は魔物を食べてるみたいだし」
(さすがアーヴィンドさん……)
「けど、なんでダンジョンに潜ってるんですか?」
「さぁ。あいつの考えてる事なんて、誰にもわからないわよ」
ドニは肩をすくめる。
「ちなみに、どの辺りにいるんでしょうか……」
「たぶん、六十階ぐらいじゃないかしら。元々、その辺りに住んでたらしいし。家にしてた場所があるんじゃないの?」
(六十階か……)
フィオはようやく四十階に到達したばかりである。ダンジョンは五十階から下が、格段に魔物が強くなるらしい。やっかいなトラップも増える。六十階まで下りられるようになるのに、あと半年から一年はかかりそうだった。
(アーヴィンドさん大丈夫かな……)
フィオはそう思った後に、慌てた。
(いや、何、失礼な事を考えてるんだよ! アーヴィンドさんはSランク冒険者だぞ! 俺なんかが心配するような事はおきないよ!)
しかし、頭の中に小さなアヴィの姿が思い浮んでしまった。
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魔物を狩りながら、アーヴィントはイライラしていた。
毎日のように、知らない記憶を思い出した。
子供のアーヴィントは、『アヴィ』と呼ばれ、フィオに大事にされていた。
飛び掛かって来た狼を殴り殺す。
「はぁ、はぁ……」
胸が痛かった。針で刺されたような痛みがずっとしている。
子供の『アヴィ』は確かに幸福を感じていた。それはアーヴィントが、かつて欲っしていた物だった。それを『アヴィ』は手にしていた。
けれど、夢から覚めたアーヴィントの手元には、もうその幸福は無かった。
狼たちの唸り声が聞こえる。
「アァーーーーーー!!!!!!」
大声を上げると、狼たちが怯む。
アーヴィントは、後先考えず群れの中に突っ込んで行った。
どうすれば良いかわからなかった。今のアーヴィントには、『幸福』の喪失に耐える事しか出来なかった。
狼の群れを片付けた後、肉を解体していると、腕輪が赤く光った。
それは、指定した相手の場所を示す魔石の埋め込まれた腕輪だった。光ったと言う事は、フィオがダンジョンに入って来たと言う事である。
アーヴィントは、肉を倉庫に片付けてフィオの元に走った。
顔を合わせる事はしない。ただ、遠目に見ているだけだった。
自分が何故、こんな事をしているのかは考えたくなかった。この腕輪だって、安くない物なのに。わざわざ道具屋で買って、こんな風にずっと身に着けて、フィオがダンジョンに入って来る度に見に行くなど。少し前の自分なら、絶対に考えられない行動だった。
つづく




