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四十階のボスフロアで、フィオ達はサイクロプスに挑んでいた。広いフロアで、ヒーラーのリリーが悲鳴をあげた。
「リリー! 落ち着いて! ラウルを回復してやってくれ!!」
フロアの中央で、サイクロプスが棍棒を振り回していている。四人にいる内の仲間の二人が倒れてしまった。頼みの綱のリリーは、震えて混乱状態にある。先ほどから何度も詠唱に失敗している。
「くっ!」
倒れた仲間達が潰されないように、フィオはサイクロプスを引き付けていた。こん棒を剣で受け止める。
「ぐぅう!!!」
巨体のサイクロプスは、一撃一撃が重い。ステータス向上のバフも剝がされてしまった。バフをかけられるラウルは意識を失って倒れている。
(このままじゃ俺達……!)
フィオは、腹の奥がすくむような恐怖を覚えた。
もう一度、こん棒が振り上げられる。バフが剥げた今、あのこん棒を無事に受け止められる自信が無かった。
「ウラアア!!!」
突然、真横から黒い人物がサイクロプスに蹴りを入れた。
「ーーー!!!!」
サイクロプスの頭部が一瞬で破裂した。
「あ……」
それは、フィオのよく知る人だった。
「ア、アーヴィントさん……」
黒い甲冑のような鱗で覆われた『竜化』したアーヴィントが、死体になったサイクロプスを見下ろした。
アーヴィントの姿を見て、フィオは力が抜けた。気力が尽きて、床に倒れてそのまま気を失ってしまった。
「おい……!!」
アーヴィントの焦ったような声が聞こえたが、フィオは彼の声を聞いていると、とても安心した。
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フィオが目を開けると、そこはギルドの医務室だった。今まで何度もお世話になった場所である。
(俺……また、倒れちゃったのか……)
くらくらする頭で起き上がり、周囲を見渡す。隣に、ラウルが寝ていた。
(あ……)
ダンジョン攻略に気を抜いたつもりはなかったのだが、五十階のボス部屋でパーティーはボロボロになってしまった。攻撃を引き受ける、タンク役の冒険者が早々に倒れたのが痛かった。その後、ラウルが倒れ、ヒーラーのリリーも混乱して詠唱が上手くいかなかった。
しかし、彼がやって来てくれた。
(アーヴィンドさん!)
もうダメだと思った時、黒い影がサイクロプスの頭を打ち砕いた。黒い鱗に体を覆われたその人物は、間違いなくアーヴィンドだった。
(アーヴィンドさんが、連れて来てくれたのかな……)
額に触れると怪我が治っている。肋骨の方も大丈夫そうだ。
(お礼を言わないと……)
ベッドから下りようとしたら、誰かが医務室に入って来る音がした。のしのしとベッドの側に歩いて来て、カーテンを開ける。
「あ!」
アーヴィンドがフィオを見て睨む。フィオは慌てて立ち上がって、頭を下げた。
「あの! 助けていただいて、ありがとうございました!!!」
「おい」
アーヴィンドが、フィオの頭に手を置く。
「?」
そのまま顔を上げて、アーヴィンドを見上げる。
「傷は良いのか」
「あ、それは! バッチリです! 痛み止めも効いてます!」
「そうか」
アーヴィンドが、フィオの頭から手を離す。
(も、もしかして、心配してくれてる?)
嬉しくて、胸がじーんとした。
「おまえ、弱過ぎないか」
「え」
「サイクロプス程度に負けるなんて……」
「す、すいません……」
フィオは情けなくて、背を丸めた。
「こんなに弱かったら、俺の評判まで落ちちまう」
「うっ……」
アーヴィントの言う通りだった。
「……おい」
「はい……」
「明日から、オレが訓練をしてやる」
「えっ!」
「嫌なのか」
「そ、そんな事はないです!」
「……なら、前に使った空地に朝から来い。良いな」
「はい!!」
アーヴィントは、鼻を鳴らして医務室から出て行った。まさか、また訓練を付けて貰えるとは思わず、フィオは嬉しくなってしまった。
「おまえの先輩も、良い人だな」
不意にかけられた言葉に驚く。
「ラウル! 大丈夫か?」
「あぁ、傷は塞がってる。けど、痛み止めが切れてるみたいだ……まだ動けそうにない」
ラウルは、棍棒で右肩を強打されていた。
「アーヴィンドさんに礼を言っておいてくれないか」
「あぁ!」
フィオは、先輩のアーヴィントをとても誇らしく思った。彼のおかげで、自分達のパーティーは生きて帰って来れたのだ。
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ドニはしかめっつらでやって来た男を見返す。
「フィオの様子はどうだった?」
「ピンピンしてやがった」
「ふふっ、あんたって意外と後輩思いなのね。見直したわ」
「ふんっ」
つづく




