第24話 転移魔法陣
遥か昔のこと、人族にとって野菜という食物は肉類と同じように狩るものだったという。
野菜族はそこかしこで生活を営みながらも、人族の襲撃に怯えて戦々恐々と暮らしていた。
ある日、そんな生活を打開しようと一人の若者が立ち上がる。
かぼちゃ族の少年、カボロン・パンプキノアである。
彼はその類稀なる魔法の腕と不屈の精神によって数々の強敵を打倒し、圧倒的カリスマで各氏族をまとめ上げ、遂に集団は国の形を成すに至る。
これが後のベジタブルワンダー帝国である。
勇者カボロンは名をパンプキン一世と改め、帝国は主神として農耕神クロノスを戴き……
「ってお前、ベジタブルワンダー帝国の主神なのか!?」
俺は農業者ギルドで貰った『おいでよ! ベジワン帝国!』の冊子から顔を上げて驚きの声を発した。
「いや~パンプキン一世にどうしてもって頼まれちゃってね。いや~困っちゃうよね~えへへ」
「とても一国の主神とは思えない恰好だ……」
クロノスは変装中であった。
チョビ髭にデカ鼻の付いた丸眼鏡を装着している。
「人は見た目じゃないと言うだろ? 神も同じさ。もっともぼくの神々しさはこの程度の変装では抑えきれないだろうけどね!」
「それで困るのはお前だろ。何を勝ち誇ったように言ってんだ」
なぜクロノスがヘンテコな変装をしているかというと、彼女もジャガイモタウンに向かうことになったからだ。
農業者ギルドでの惨劇を目の当たりにして日が浅いわけだが、地獄丸の激しい説得の末にとうとう首を縦に振ってしまったらしい。
「皆で旅行なんて楽しみでやんすね~」
嬉しそうな声を上げる地獄丸はエンチョを抱ながらONEに乗ってプカプカ飛んでいた。
俺たち一行はクロノスの案内でとある場所を目指して移動していたのだ。
◇
「みんな着いたよ」
辿り着いたのはグラッセルから徒歩30分ほどに位置する謎の古代遺跡であった。
なんでもベジタブルワンダー帝国に繋がる転移魔法陣があるというのだ。
先日、クロノスが豊穣エネルギーを持って旅に出たときも、それを使用していたらしい。
やたら早い帰宅だと思ったら、こんな裏技があったのだ。
「起動させるからちょっと下がってくれ。ふぬぬ」
遺跡を登っていくと頂上に吹き曝しの祭壇があった。
クロノスはそこで足を止めて唸り声をあげる。
すると空中に幾多もの光の魔法陣が展開され、光の収束につれて今度は祭壇上に巨大な魔法陣が現れる。
なにこれ凄い……
「こんな大掛かりな術式は初めて見たでやんす!」
「これは大昔の天才魔術師がぼくたち神に捧げてくれたものなんだ。元々グラッセル付近には結構な数の神が住んでいたからね。ここと繋がる転移魔法陣が色々な国に造られてるんだよ」
へぇー、これ自体が文化遺産って感じだな。
「それじゃあみんな集まってくれ。転移を始めよう」
「わくわくするでやんすね!」
「ブヒブヒ(ドキドキ)」
「ギャギャ」
全員が集まると目の前が眩い光に包まれた。




