第25話 クロノシィ教団
「ここは建物の中か……?」
転移先で目に映ったのは白亜のだだっ広い空間だった。
「ここは帝国の首都にあるクロノシィ教団の神殿だよ」
クロノシィ教団の神殿?
「それってクロノスを信仰する教団か?」
「うん。そうだよ」
「さすがお嬢はすごいでやんすね!」
農業者ギルドの反応で薄々気付いてたけど、また随分と大層なことだ。
しかし、ひとつ気にかかることがある。
「聞きたいんだけど、今回はお忍びだよな?」
「見つかったら面倒だからね」
「クロノシィ教団ってかなり小規模なのか?」
「失礼な! クロノシィ教はベジタブルワンダー帝国の国教だよ! 言っておくけどこの国においてぼくの影響力は計り知れないんだからね! いくらアムルくんだからって、ぼくに不敬を働いたらこれだよ、これ」
親指で喉を掻っ切るジェスチャーだ。
なにそれ恐い。
「いやそうじゃなくて、教団の神殿ってことは人がいっぱいいるってことだろ? 変装したところで普通に見つかるんじゃないか?」
「多分、お嬢には考えがあると思うでやんすよ」
「そうなのか?」
「…………。一理あるね!(テヘペロ)」
無策!!
その瞬間、ダダダっと人が駆ける音が聞こえて、扉が勢いよく開け放たれた。
そこにいたのは農業者ギルドでも見た黒装束の連中である。
「クロノスさま~、よくぞお越しくださいました~」
こうしてクロノスは簡単に見つけられたのであった。
◇
「え!? なんでこんなにすぐバレたんだろ?」
クロノスが狼狽えていると一番乗りした奴が嬉しそうに挙手した。
「ここの転移魔法陣はクロノスさま専用となっております。他の方は郊外の神殿に繋がりますゆえ」
……そりゃバレるわな。
「おいクロノス」
「何だい?」
「自演乙」
「ブヒブヒ(乙)」
「本当に知らなかったんだよ!」
キーっと怒るクロノスを尻目に黒装束たちはその数を増やしていた。
「皆の者~クロノスさまがいらっしゃったぞ~」
「「「おおお~」」」
神殿内はもはやお祭り騒ぎである。
「みんな静まってくれ! 今回ぼくはお忍びなんだ」
「「お~ぉ」」
「ぼくはこれからジャガイモタウンに行くからね。恒例の宴は遠慮しておくよ」
「「NO~!!」」
黒装束の連中がこの世の終わりかのように打ちひしがれている。
ていうか恒例の宴ってなんだよ。
招かれたいのだが……
「せめて、せめて何かお役に立たせて頂けませんか?」
さっき元気よく挙手して発言した奴が懇願していた。
「うーん。それじゃあジャガイモタウンまで向かう馬車を一台お願いできるかな?」
「馬車ですね! かしこまりました!」
そこから一同の騒めきが始まったのだ。
「おい馬車だ」「クロノスさまをお乗せする馬車……天翔ける馬車」「ユニコーンか……」「伝説の魔物だ。捕まえられるかどうか……」「お待たせするのは一番の下策」「リムジンタイプの馬車があっただろ」「そうだ。そうしよう」
意見がまとまったようで、教団の奴らが一斉にクロノスへ熱い眼差しを向けた。
「クロノスさま、今すぐにリムジン「普通のでいいから!!」
……神殿を出た俺たちの前にはとても立派なカボチャの馬車が用意されていた。




