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成れ果ての不死鳥の成り上がり・苦難の道を歩み最強になるまでの物語  作者: ネクロマンシー
第2章 変わり続ける感情
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第64話 環境は変化する

 ロイが死んでから一週間が経った。最初は少し暗かった皆んなも今は明るくなり、たびたび笑い声も見られるようになった。大きな大樹の下にロイのナイフが突き立てられた暮石があり、毎日忘れず花を添えて祈りに通っていた。


「ノア、おはよ」


 テトは目を覚ますと決まってあはようと言う。傷がまだ完治していないノアはテトに言われてベッドの上で過ごしていた。だが何故かテトもノアの寝ているベッドに潜り込み抱きついて眠り始める。ベッドが狭いため仕方ないとはいえ、隙間をあえて作っていないかのように密着してくるため鼻の下をピコピコと動く猫耳がくすぐったい。

 だが今日は行きたいところがあるため体を起こす。テトは少し残念そうな表情を浮かべて離れるが、まだ腕が再生途中のノアを見て「わたしが腕になる」と言い出して真横でつきっきり状態だった。




「あ、あの!」


 突如声をかけられてそちらを向く。すると小さな子供達が数人、こちらをキラキラとした目で見上げていた。


「ノアさんですよね?」


「そうだけど」


「お、俺達今日からここに入ったんです。それで俺達ノアさんには感謝してて、その……ノアさんは俺達の憧れです!」


「ええと……ん?」


 訳が分からず首を傾げる。どうやらタルタロスのメンバーの新入りなのは本当らしく、最近になって数人が入ってきたそうなのだ。それはユグドラが招き入れたというのもあるが、一番の理由はノアがいることだった。ノアは下界を彷徨っていた子供の一人だったがタルタロスに入り、八咫烏として名を売り、今や高額の賞金をかけられるほどになっていた。そして奪った宝はユグドラが金に変えて飯にありつけない無力な子供に配っていたこともあり、どこの区域にも属せなかった子供達はノアのことを知らないところで英雄視し始めていたのだ。


「なるほど、僕も新入りじゃ無くなったわけか」


 これからどんどん増えていくのかと思い、嬉しいような悲しいような気分を味わう。ロイみたいに色んなことを教えてあげられるとは思えないが、そこら辺はキュプラー達が教えるから大丈夫だろう。



 その後、ノアは子供達に多量の質問をぶつけられ、笑みを引きつらせながらもひたすら答えた。あまりにも純粋な視線を向けられ、慣れない状況に陥ったノアは、子供達がアルティナ達に呼びだされる頃にはぐったりであった。

 その様子を隣で見ていたテトは、眉を下げておずおずと聞いてくる。


「ノア、人気者だった」


「なに?」


「ノア、取られる?」


「取られはしないよ」


 何を勘違いしたのか、子供達に囲まれたノアを見て、皆んなに奪われると思ったテトは尻尾を立てて遠くにいる子供達を威嚇していた。

 その様子にはまだテトが人付き合いが上手くなる気配はないなと苦笑するしかないが。










 



「こんにちは」


「お、ノア坊いらっしゃい」


 妖精族が営む武器屋、相変わらず客が居る様子は無くノアの声が店内に響く。リーシャは退屈そうに本をめくり、ノアの来店に気づくも片手だけ上げて挨拶をすませた。テトも一緒に来たのだが、布一枚で豊かな胸を隠すという大胆な服装のリーシャを見て、ノアの後ろで言葉を失いながら自分の胸部と見比べていた。


「今日はどうしたんだ?また大量のナイフを作れって言うんじゃないだろうな〜」


「いえ、今回は防具のことで」


「おっ、任せとけ……ってノア坊…おまっ、腕無くね!?」


「あ〜、そのことでも相談があるんですけど」








 ノアはリーシャに自分にある不死の能力について話した。あまり情報をばら撒きたくは無かったがこの店は騎士などの繋がりも薄いだろうし、今から頼むことには必要不可欠なことだったからだ。

 ノアは毎度毎度破れていく服にうんざりして防具を買うことにした。ローブや長ズボンを買ったはずが腕を切り落とされたり腹に穴を開けられたりとしていくうちに、どんどん数が減っていき買っても買っても無くなっていくからだ。今残っているものはほとんど半袖半パンとなり、血や焼け跡で汚れている。ノアはそのことをリーシャに相談した。


「なるほど、呪い待ちか。まぁ珍しいな。それなら再生する防具を作ってやろう」


「そんなこと出来るんですか?」


「私にかかればお茶の子さいさい。ノア坊の細胞の一部を貰えればそれに応じて作れるさ。他にも炎の異能を使う人に燃えない服とかも作ったりするしそんなに難しいことじゃないさ」


「それなら是非お願いします」


「だがそのかわり素材を集めてきてくれ。なんか前みたいに珍しい機械生物の核を持って来てくれれば作ってやらんでもない。 私は面白くない仕事はしないからな」


「客が少ないのに仕事選んでどうするんですか」


「職人にはこだわりってもんがあんの!」


「はぁ、まぁいいですけど。 あ、これならどうですか?」


「あ〜ん? ……ッ、嘘!?まさかこれ旋廻獣の心臓!?!」


「旋廻獣?何ですか、それ」


「ジャック・オー・ランタンとか呼ばれてる古代兵器だよ!本によると球体の形をした化け物らしいが」


「あー、そう呼ばれてましたね」


「呼ばれてましたねって、これどうしたんだよ」


「倒しました。 殺されそうになったんで」


 古代兵器を倒したというノアに、リーシャは開いた口を閉じられなくなった。実際にノアは死を味わったのだが、その辺の感覚が乏しくなったノアを見て、古代兵器をいとも簡単に倒す姿を想像した。

 しかしノアが古代兵器を倒せるほど強そうにはとても見えず、前回の機械生物の核もAランクのパーティーに譲ってもらったという話をノアがしていたのを思い出し、今回もそれと同じで今のは冗談なのだと判断した。


「でもこれ、いいのか?使っちゃって。売ったらめちゃくちゃ高額で取引してもらえると思うぞ」


「うっ」


 その言葉はかなりノアの心に響いた。現在ノアは金欠状態なのだ。なぜならノアは、テトを助けに行くのに協力を得るため、ティグリスから買った恨みや片目を潰した慰謝料などを全て金で済ませたからだ。「お前は金が全てなんだろ?なら金をやるから力を貸せ」と怒るティグリスを脅す勢いで話をつけたため金はほとんどない。ティグリスもティグリスで「パートナーのためなら金を惜しまないよな?」とつけ込まれた結果、かなりの金額を絞り取られることとなったのだ。そのことはテトには言ってないが、そのせいで今や全財産の8割は失っている。


「仕方ない、今回は素材に免じて半額にしておいてやるよ」


「え!? いいんですか?」


「いいとも。 こんなレアな素材使えることなんて滅多にないからね!」


「……そうやって気分で仕事するからこの店ボロボロなんじゃ」


「あー!? うっさいなぁ! そういうのが職人っぽいだろ」


 痛いところを刺されたのか、リーシャの態度が急に荒なり、必要な細胞の一部だと、ノアは翼の毛を乱暴にごっそりと引きちぎられた。


「まったく。そういや、前使ってた防具とか持ってる?もし持ってたらそれを使って強化してやってもいいぞ」


「ハァ…ハァ……。 いえ、防具はまだ使ったことなくて。それと出来るだけ重量を減らしてもらえませんか?動きにくくなるのは避けたいので」


 リーシャは驚きを通り越して呆れてしまった。古代兵器を倒したとか言う割には防具をつけたこともないと言う。防具が無ければ機械生物の爪や牙が掠るだけで致命者になりかねないだろう。いくら再生能力があったとしても、死にたいわけでもあるまいに防具なしで行くのは馬鹿のやることだ。そのうえ前回ノアの折れたナイフを見た時にも思ったが、子供がそこら辺で拾った刃物で機械生物に挑むのもありえない。刃が折れるのも当然で、核を取り出す作業すら難しいはずだ。リーシャはノアの常識を疑い、一冊の本を渡した。


「これやるからとりあえず読んでおきな。そんなんじゃ立派なハンターになれないぞ? できるだけ軽い鎧を作ってやるから一週間後くらいに取りに来な」


「あはは、助かります」


 これらは全て、リーシャによる「思いやり」だ。この一連の流れを見たテトは頰を若干膨らませて――


「……ノア、楽しそう」












 タルタロスに戻るとアウルム達にこき使われている子供達を見て懐かしさを覚えた。そして手に持つ本の存在を思い出し、目を通しておこうと木に座り込む。それはハンターの基礎知識のような本だった。昔ノアもハンターに関する童話なら本を読んだことがあったが、この本の中身は使う道具の名前や機械生物の種類が記されている図鑑のようなものだった。とりあえずペラペラとめくっているとテトがノアの膝の上に向かい合うような形で座り、ノアの胸に顔を埋めた。


「ちょ、テト?」


 テトの体は羽のように軽いため全く重くはないのだが少々読みづらさもある。名前を呼ぶが、テトは顔をノアの胸に擦り付けて上機嫌に尻尾を揺らすだけだった。至福と安心に包まれて表情をだらしなく崩しているが、角度の問題でノアには見えない。時折匂いをすんすんと嗅がれて若干の恥ずかしさを覚える。


「おーい、テトさーん」


「ん、パートナーだから」


 答えになっていない言葉におもわずため息をつく。頭を撫でれば揺らす尻尾を激しく降られ、耳をピンと立たせる犬のようになった猫に苦笑する。しばらく経つとくぐもった息がテトから伝わってきて、どうすればいいか困惑してしまい本の内容は頭に入らなかった。

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