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成れ果ての不死鳥の成り上がり・苦難の道を歩み最強になるまでの物語  作者: ネクロマンシー
第2章 変わり続ける感情
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第56話 血濡れ少女

 まるで優しい光を束ねたようにサラサラと輝く金色の髪、逆にそれとは対照的なほど強く邪悪な闇を抱える血のように赤い目。そして柔らかそうな桃色の唇から見え隠れする鋭い牙。その少女は血だらけのドープル達を側に投げ捨ててノアに歩み寄る。


「まさか倒しちゃうなんて、あの機械だけで皆殺しできると思ったのに」


 どうやらノア達を古代兵器に殺させようとしていたらしく、それを邪魔された少女は子供のように頰を膨らませた。


「そんなに強そうには見えなかったんだけどな〜」


 少女は顎に手を当てて体ごと傾けながらノアをまじまじと見つめた。ノアはこの少女が何なのかはわからないが危険な人物ということだけはわかった。ドープル達は死んではいないようだが、かなりの深手を負っている。ドープル達の有り様を見るに相当の力を持っていると言える。

 ノアが半歩後ろに下がった次の瞬間、凄まじい速度で顔の真横を何かが通り過ぎていった。



「えっ!すごい、今の避けるんだ」


 驚きを隠しきれない様子の少女、その手にはいつのまにか赤い赤い大きな槍が握られていた。ノアは今、この遺跡に来てから何よりもこの少女を警戒していた。まずこの遺跡に生息している機械生物の数が明らかに少なかったことに、ノアはずっと不審に思っていた。おそらくは殆どの機械生はこの少女が始末したのだ。そして、こんな場所に来るはずもないと言っていたジャック・オー・ランタンがノア達のところに姿を現したのも、少女が古代兵器を連れてきたからだろう。そんな芸当が出来るほどの少女と面を合わせ、ノアは一切油断せずに何があっても動けるように構えていた。

 だが、それでもノアは少女の攻撃を完全には避けきれていなかった。頰から血が滴り落ち、その傷は治る様子もなかった。


(これはちょっとまずいな、今こんなのと殺り合えるとは思えない)


 ノアは眼の力を酷使し、再生能力を失っている。そのうえ腹にはどでかい穴が開いており、今も大量の血が溢れ続けている。正直立っているのも限界なほどだ。


「君の目的は? ここが君の縄張りだったのかな、それならすぐに出て行くけど」


「ん〜目的か。 そーだね〜」

 

 ノアは逃げる隙を伺いつつ、時間を稼ぐためにどうにか会話を試みる。すると少女は少し考え込んでニパッと笑った。その様子を見て、話は通じるようだと思い密かに胸を撫で下ろす。だが、その安心も少女が発する次の言葉が耳に届くまでだった。


「あなた達の血肉でお腹を満たすことかな」


「ッ!?」


 少女はノアを見て舌舐めずりをした後、命を串刺しにすべく槍を放つ。その高速で襲ってくる槍をなんとか躱す。しかしその槍は止まらず、二撃、三撃と、次々に繰り出されていく。ノアは槍を避けていくが、さらに槍は加速していき体力の限界が近づいてくる。


「ウォォォォォォオ!!」


 ノアは純白の羽を大きく広げて獣のように吠えた。威嚇するように大声を上げたノアを警戒したのか、少女は槍で防御態勢を取った。だがノアは攻撃しようとしていたわけではない。羽で地面を力強く扇ぎ、砂埃を巻き上げる。立ち込める砂に囲まれた少女は小さく悲鳴を上げ、ノアはその間に全速力でその場を離脱した。そして逃げる際、地面に捨てられていた鎖を掴みドープル達も連れて行く。

 ドープル達はノアを殺すつもりで置き去りにしたがノアはそんなこと気にしていなかったし、逆に感謝しているくらいだった。ノアにとって遺跡に行く経験を積めたことは、それくらい価値のあるものだった。そのためドープル達にはまだ利用価値もあるかもしれないと考え、鎖を引き摺ったままひたすら足を動かした。

 あの少女の容姿、そしてあの言動から察するに彼女は血を貪る悪魔、吸血鬼(ヴァンパイア)だろう。ドープル達の新鮮な血を吸うために殺さず捕縛していたのだろう。

 ノアは大量に溢れる血を手で抑えながら遺跡の出口、狭間を目指して必死に歩く。もうその狭間は目前(もくぜん)で、自然と安堵の息が口から漏れていく。


(今回は血を流しすぎたな。…………血?、ヤバイ! )


 ノアは自分の血を見てあることに気づく。だがそのことに気づいた頃には既におそく、遥か遠くから放たれた赤い槍にノアの肩は貫かれた。


「危ない危ない、逃げられちゃうところだった。 まったく!私の餌を取られちゃうと困るんだよね〜」


 視線だけ声のするほうに向けると、先ほどの少女が悪魔の羽を羽ばたかせながら宙でケラケラと笑っていた。槍を引き抜こうにも力が入らず、ノアはその場に崩れ落ちる。ノアから流れ落ちた血は、道のように続いており少女はその血を辿ってノアを追いかけてきたのだ。そして笑い声とは裏腹に、少女の目はまったく笑っておらずノアにゆっくり近づくきノアの肩に突き刺った槍を掴むとかき回すように傷口をえぐった。


「ァガッ!」


「逃げられると思うな」


 どこまで逃げても追いかけるという燃えるような意思が込められた目。少女は喉を震わせながら赤い血を求めて渇望する。

 少女は槍を乱暴に引き抜き、ノアの喉に狙いを定める。ノアは意識が朦朧とするなか力を振り絞り、少女の横腹に蹴りをいれて吹き飛ばす。死は免れたが、たいしたダメージにはなっておらずただ怒りを蓄積させただけに終わる。


「早く! 大人しく! 喰わせろ!」


 牙を剥いて睨む少女から、ノアは逃げることを諦めて短剣を引き抜く。


「無抵抗で食べられる気なんて毛頭無いね!」


 ノアは手に持っている鎖を思いきり振り回してドープル達を投げた。だがそれは少女に向かってではない。狭間の中、つまりは遺跡の外へとドープル達を出したのだ。餌を逃がされた事実を理解した少女は固まり、その隙を突いてノアは短剣を振り抜いた。少女の首から噴水のように血が吹き出す。


「ッ、痛ったいなぁ〜!!」


 だが少女は怯む様子を見せずにノアを睨み続ける。その光景にノアは息を呑んだ。少女の意思はノアの想像よりも遥かに強かった。槍を構える少女の首の血はもう止まっており、なんと傷まで無くなっていた。そして何よりノアを驚かせたのは、少女の首から出血した血が流れ落ちずそのまま少女の周りを漂っていることだ。


「なっ、こいつ、呪い持ちか!」


 宙に浮いている血は形を変えて数本の鋭い槍となり、ノアに向かって放たれた。ノアは必死にその槍を弾き飛ばすも、それは形を変えながら何度も襲いかかり段々と傷が増えていく。空を舞う槍だけでも厳しい状態、それに加えて少女の猛攻も塞がなければならなかった。

 正面から放たれる怒涛の乱撃を避け、唐突に地面から噴き出る槍を躱す。ノアは眼であらゆる角度から襲いかかってくる攻撃を全て予測してギリギリの攻防を続けている。


(何か、何かないのか)


 このまま続ければ先に終わるのはノアの方だ。冷静さを保とうとはするものの、やはり焦りはジュクジュクとノアを包んでいく。本能的にその焦りを感じた取ったのか、少女の猛攻はさらに激しさを増していく。そしてついに、防ぎきれなくなった数本の槍がノアの体に突き刺さった。


「もらった!」


 少女は獰猛(どうもう)的な笑みを浮かべ、手に持つ血でできた槍を三叉に変形させた。少女の凄まじい速度で放たれる槍を、ノアは躱すことができず腕が弾け飛んだ。


「ちぃッッ!」


「あはははは! も〜もったいないじゃん!」


 少女は、返り血の雨を浴びると嬉しそうに笑い声を響かせる。そして顔にべっとりと付着したノアの血を指で拭い、赤い舌でペロリと舐める。ノアは痛みに悶えて膝をつき、それを少女は口を開けて見下ろしていた。勿論ノアの腕の再生も行われていない。血の流しすぎで寒気を感じ始め指の先の感覚は既に無かった。


 ノアの周りに暴れ回っていた凝固された針のように尖った血液は、ゆっくり落下していき辺り一面に血の池を作り出した。

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