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成れ果ての不死鳥の成り上がり・苦難の道を歩み最強になるまでの物語  作者: ネクロマンシー
第2章 変わり続ける感情
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第55話 連続射撃

 息が出来ない。呼吸が出来ない。


 酸素を求め口を開けて必死にもがぐも、体内に入ってくるのは鉄の弾丸のみ。


「ぷはっ…っは…ぁぶっ…」


 鉄の雨に濡れながらひたすら痛みに溺れる。


 いつまで経っても生命反応が途絶えないノアに、古代兵器は腕に装着された銃火器から弾丸を撃ち込み続ける。


「……っうぉぉおおおおお!!」


 体は痙攣して言うことを聞かない。それでもノアはどうにか翼を広げ、空中へ逃げるように古代兵器の攻撃は躱した。だが躱せただけで力は入らず、そのままよろよろと空を漂うことしかできていない。そんなノアを狙って銃火器が高音を鳴らしながら高速回転を始め、瞬く間に尋常じゃない数の弾丸を放出される。弾丸と弾丸の間に隙間などほとんど無く、避けられるはずもないノアは蜂の巣状態となり落下していった。






「はぁ…はぁ…あれが、古代兵器……あんなの、どうすれば」


 翼は穴だらけとなって落とされはしたが、近くの廃墟の中に転がり込むことに成功していた。ノアは肺の中に思う存分酸素を取り込み身を潜めて体の再生を待つ。今の一瞬でノアの体は数十回以上の致命傷を受けており、再生能力もかなり低下している。息を整えようとするが、自分の身体から大量に吹き出している血の量を見ると自然と指が震えだす。


「……とりあえずあいつは、追ってきていないみたいだ」


 ノアは眼で古代兵器が近くに居ないことを確認し、安全な場所を目指して階段を上る。ジャック・オー・ランタン、その名前だけはソフィから聞いていた。この遺跡の中で最も避けるべき兵器だということを。だが避けるべきと言われてもあの機関銃が放たれればそれは至難の業だ。


 ノアは息が整ってくると、側にある球に手をつきながらよろよろと立ち上がった。

 勝てるのか、そんなことを考えようものなら頭痛がしてしまいそうなほど状況は絶望的だ。そんな考えを振り払うように力強く拳を握ると、あることに気づき驚愕する。いや、気づかなかったことに驚愕したという表現が正しいだろう。


「‼︎、いつのまに!?」


 今無意識に手をついていたものは、先ほどノアを無残なまでに殺し続けたあの古代兵器だったのだ。ノアの眼を騙し、ここまで接近していたジャック・オー・ランタンは機関銃の標準をノアに合わせた。


「いったいどこから! 空間まるごと見たはずなのに、まさかこれが…」


 ノアは即座に身体を反転させて走り出し、古びたガラスを突き破った。周りに透明な破片を散らしながら、外へ飛び出したノアに一瞬遅れて連続射撃が始まる。一瞬で窓の淵ごと木っ端微塵に吹き飛ばされていく。

 そしてノアはこの眼を疑う日が来るとは思わなかった。射線が通らなくなったジャック・オー・ランタンは手足を引っ込めて球体へ戻るとみるみるうちに消えていったのだ。虹色の薄い膜が体を覆い始め、周りの風景と同化し始める。

 おそらくジャック・オー・ランタンは体を球体にして転がるように移動しているのだろう。だがその音すら聞こえず、消えるというより存在そのものが居なくなっているようだ。知覚範囲を広げるも既にこの建物内に何の反応もしないのだ。


「これが、科学の力…」


 ノアはそっと着地するとすぐさま瓦礫の裏に隠れた。気配を完全に消し、何もかも見逃すまいと眼で周りを覗き込む。緊張感を保ちながらも深呼吸するように息を吸う。


 だが、そんな立ち回りを全て嘲笑うかのようにジャック・オー・ランタンはノアの目の前に現れた。気配を消そうとも命反応を探知している機械生には関係ない。気づけば後頭部に銃口が向けられており、振り向いた瞬間に頭を貫かれた。


「っぁ!」


 一度足が止まればそこからは惨たらしい攻撃が待っているだけだった。乱射される弾丸を受け、血しぶきを描きながらノアの体は踊るように宙を舞う。


「……ぅぁぁあっ!」


 ノアは次々に撃ち込まれる鉄の雨に、たまらず瞳を赤く燃やした。このままではいずれ朽ちるだけ。それなら再生能力を失おうとも反撃をするしかない。ノアは眼を見開き空間を歪めて銃弾の軌跡が僅かにずらすと、弾丸は皮膚を削るだけに収めた。弾丸の威力が強すぎて空間を歪める力に影響を及ぼすため、完全に弾くことが今のノアにはできない。だがその隙間が出来れば十分。ノアは無限に続く射撃線から抜け出した。



 ノアは、ドープル達の狙いを、ノアを古代兵器の囮に使おうとしていることを知っていた。ノアの眼には薄い笑みの中の感情や、密かに話す企てもお見通しだったのだ。それでもなおノアは同行したかった。その理由はただ一つ。自信が欲しかったから。何をするにも自信が持てず、自分の道が見えなくなってきていることにノアは悩まされていた。だから今一度バッカスのような大きな壁とぶち当たり、自分で切り開くことが一番だと考えた。

 それでもノアが思っていた以上に古代兵器は恐ろしく、身体が固まりまんまとドープルにしてやられた。それほど目の前に古代兵器が現れた迫力は凄まじかったのだ。だが今のノアは燃えている。


「やってやる! そのために僕はここに来た」


 ノアは覚悟を決め、新たに手にした黒剣を握りしめた。この世界では瓦礫が何故か宙に浮いている。ノアはジャック・オー・ランタンが破壊してばら撒いた瓦礫を足場にして空を走った。

 ジャック・オー・ランタンはまた虹色の薄い光を発して消え始め、もうノアの眼でも見つけることはできない。だがあの巨大、相当の重量があるはずで姿は無くとも周りへの影響は大きいはずだ。ノアはジャック・オー・ランタンを見ようとせずに地面に注目した。すると、僅かに漂う砂埃の流れ方に変化した場所がある。つまりそこが今ジャック・オー・ランタンが転がって移動している場所だ。そこを目指して空に浮かぶ足場を力強く蹴り、何も無いはず所を切り裂いた。


「手応えありだ」


 剣を差し込んだ所から火花が散らされ、鋼鉄の球体が姿を現した。機械はまるで発見されたことを驚いているように銃火器を構えて乱暴に撃ち始める。紅く輝く眼で銃口の向きから弾の軌道を予測するのは容易く、躱しながらもその黒剣は地面に突き刺さっている鉄の脚を次々に切断していく。

 もうジャック・オー・ランタンは球体に戻らない限り移動は困難だ。それでもジャック・オー・ランタンは、古代兵器の恐ろしさを見せつけるように両腕の機関銃からこれでもかという量の弾丸をぶっ放す。ノアが飛び移っていく瓦礫を次々にその激烈な威力の雨が削っていき、徐々に破壊が迫ってくるのを感じる。だがそれでもノアは止まらず、ただ冷静に対処して距離を詰めていく。

 そしてついに、暴れ狂う銃火器を切り落とした。もうこの機械に攻撃する手段は残されていない。手脚は切り崩し、最初に加えた傷からは自分で放った射撃の反動からか亀裂が広がっている。ノアはトドメを刺そうと亀裂の中心へと刺突を放った。

それは甘えだったかもしれない。早くこの古代兵器の恐怖から逃げたいあまりか決着を済ませようと思い、未知の機械に対して攻撃手段がもう無いと決めつけてしまった。

ジャック・オー・ランタンは裂けた口を更に大きく開けて中から大きな大砲を突き出したのだ。ノアの勢いはもう止まらない。だが、それを見ても止まる気もなく強気な笑みを浮かべる。


「いいさ、機械と呪いどっちがタフか勝負してみるか?」


 ジャック・オー・ランタンを中心に凄まじい爆発音が鳴り響き、高熱の光がノアの腹部に炸裂した。だがノアは身体が後方へ吹き飛ばされそうになるるも、血が出るほど歯をくいしばり前へ前へと進む。


「ぶっ壊れろ!」


 体のどこかが持っていかれるのを確かに感じながらも腕を力強く突き出した。それは口の中から奥へと入り込んで急所を貫いた。次の瞬間ジャック・オー・ランタンが暴れ回りノアを弾き飛ばして転がりながら廃墟の中へと突っ込んだ。

そのまま古代兵器は大爆発を起こして次々に崩れ始める廃墟の中に埋もれていった。






 腹に大きな穴が開いたノアは寝転がって荒い呼吸を繰り返す。そしてその手には串刺しにしているも、まだ脈打っているジャック・オー・ランタンの『心臓』があった。


「はぁ…なんとか、なったな」


ノアは深いため息を吐いて手にある心臓を眺めた。それはエネルギーの爆弾、これがジャック・オー・ランタンの力の源だとすぐさまわかった。ノアはこれも武器か何かに出来るかもしれないと考えた。



「…誰だ」


ノアは何ものかの存在に気づき立ち上がり、声を上げた。すると瓦礫の陰から1人の少女がじゃらじゃらと鎖を引き摺りながら顔を出した。



「バレちゃったか。おかしいな〜、コレだけでみんな片付くと思ってたのに」


少女はジャック・オー・ランタンの方を眺めて残念そうに肩をすくめる。そしてノアが警戒するように睨んでいることに気づき、恐ろしいほど無邪気な笑みを浮かべた。鎖の先、少女が引き摺っていたのは血だらけのドープル達だった。

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