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成れ果ての不死鳥の成り上がり・苦難の道を歩み最強になるまでの物語  作者: ネクロマンシー
第2章 変わり続ける感情
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第49話 ルドルフの誘い

 ノア達は無事ニヴルヘイムから秘薬を持って脱出することができたが、テトが来てくれなければあの鷲の男に勝てていなかっただろう。猛吹雪の中、テトは先に壁を登っていたにもかかわらずノアの危険を察知して戻ってきてくれた。それは何度もあの壁を越えたことを意味し、テトの指は氷の壁で削れて血が滲みボロボロになっていた。石に疲れたのかテトは帰る途中でうつらうつらとし始め、倒れこむように眠り始めたテトをノアは黙って受け止めておんぶをする。文句ひとつ言わないテトにそっと感謝の言葉を口にしてそのまま大切にタルタロスへと運んだ。











「ニーナ、テトの傷を治してくれないか」


「え?テトちゃん怪我したの! どこ?早く見せて」


 タルタロスに戻るとテトを治療してもらうためにニーナに任せた。最初はあわてた様子だったニーナも、テトの傷が指と他にはかすり傷程度しかないことを知りほっと胸を撫でおろした。

 ニーナの手に優しい光が集まり、触れたところから傷が癒えていくのが側から見てもわかる。ニーナの異能を見たのは初めてだが、ここまでの密度の光を扱うにはかなりのマナを所有している者でないと無理だろう。


 ノアは自分の傷ひとつない綺麗な手をみつめてため息をはく。自分も光の異能が使えたらどれだけいいか。自分だけしか助からない自己中心的な能力を持ったことを恨めしく思った。











「おい、ノア! いるのか?!」


 傷の癒えたテトを抱えて寝床へ寝かせていると、外からロイの声が聞こえてきた。ロイには渡したい物もあったため都合がいいものの、ロイの声からは何か慌ただしいものを感じた。


「ロイか、丁度良かった。 そんなに慌ててどうしたんだ?」


「お、お前らまさか城に潜り込んだのか?!」


「なんだ、もう知ってたのか。 これ、僕とテトで取ってきたよ」


 ノアは隠し事がバレた子供のように笑って懐に入れていたものを取り出した。それはエメラルドのように輝いている液体が入った瓶で、ロイはその薬を見て言葉をなくした。ロイは潤んだ目を見せないかのように強くつぶるが、堪え切れずに膝をつきポタポタと乾いた地面に嬉しみの涙を零す。


「……俺のために。 すまん…すまん」


「そこはありがとう、じゃないのか?それと礼を言うならテトに言ってあげて。 僕だけじゃ絶対に不可能だったから。 今は頑張りすぎて寝ちゃってるけどね」


 ノアはかつてロイに言われた言葉を言い返す。ロイは秘薬を受け取ると涙を滲ませ表情を歪ませたが、それは次第に笑顔へと変わっていった。

 ロイは嬉しさとともに驚きもあった。自分では城に潜り込めたとしても生きては帰れないだろう。それなのにノアがこうして平然と戻ってきていることに驚きを隠せなかった。昔、侵入者と勘違いしてロイがナイフを突き立てたあの貧弱な子供にはとても思えなかった。



「……本当に強くなったな」


 ロイは手に持つ秘薬を握りしめてノアに笑いかけた。その言葉を呟くロイの目はどこか遠く、そしてなによりも親しみがこもったもの言葉だった。








「そういえばよく僕たちが城に行ったことわかったね」


「ああ、そうだ。これ見てみろよ」


 ロイは涙を拭うと思い出したようにノアの前に紙を広げた。それはこの数日の間に町中に配られたもので、そこにはこう書かれていた。


 〈八咫烏(ヤタガラス)・30000ジェル〉

 〈毒猫・20000ジェル〉

 八咫烏を捕縛し上界・南区アルフヘイムへ連行した者には多大な賞金を与える



「さ、三万ジェル!? それになんで僕の金額だけこんなに上がってるんだ」


「確かにお前の懸賞金は不自然なくらい高くなってる。 それに生け捕りにして南区へ連れてこいって意味もわからない。 一体何したんだお前」


 今回隊長クラスの騎士と殺りあったわけだが、それは2対1の状況でほとんどテトに任せた戦法だった。それなのにノアの懸賞金だけがここまで伸びるのは不自然。そしてなにより、侵入したのは東区のニヴルヘイムだ。それなのにノアの首に賞金をかけたのはこの紙を見るかぎり南区らしい。


「俺のせいでこんなに……」


「ロイのせいなんかじゃないさ。 僕が未熟のあまりバレたのが悪い。 それに懸賞金が高くなったところでそこまで影響はないよ」


確かに生きづらくなるだろうが捕まらなければいいだけのことだ。心苦しいのはテトの懸賞金も上がってしまったことだがテトも簡単に捕まるほどヤワじゃない。その後も2人は木の根元に座りかけ、話しながらテトが起きるまでの時間を過ごした。

ロイは雲ひとつない綺麗な星空に眩しそうに目を細め、誰にもわからない涙を一粒流した。









 

 次の日から、ノアはまた同じようにギルドへと顔を出した。いつものようにわかりやすい敵意を向けられ、ノアはため息をつきながら席へ座った。受付は今混雑しているようで、しばらくはこの視線に囲まれながらここで待機しなければならない。


「やぁ。確か…ノアくん、だったよな」


 いきなりノアに話しかけてきたのはAランクハンターのルドルフだった。ルドルフはにやにやとしながらノアの向かい側の席に座った。


「君も災難だね。高嶺の花に気に入られた男でもいいことばかりでもないってことか」


 どうやら周りからの視線のことを言っているようで、ここまで露骨に視線を集めているノアを面白がって茶化しにきたのだろう。その態度は失礼なのかもしれないが、周りとは違う接し方のルドルフに新鮮味を感じてノアも曖昧な笑みで答えた。その後も、黙って白けた視線に晒されるよりは幾分かマシだと思え、ルドルフの言葉に自然と耳を貸して雑談を交わした。最近物騒で恐ろしい怪盗が出ることや、下界で大きな火事があったなど話題はつきなかった。その話の中でノアが早くランクを上げたいと思っていることを知るとルドルフは顎に手を置いて考えはじめ、しばらくして少し離れたところに座っていたパーティーメンバーを呼び出した。ルドルフのパーティーは3人組なようでルドルフとあとの男と女でなにやら話し合いを始めた。なにやらルドルフが頭を下げるように2人にお願いをしているようで、2人はルドルフの言い出したら聞かない性格を知っているためか早々にめんどくさそうに諦めた。その答えに満足してルドルフはノアのもとへ戻ってくる。


「ノアくん。 今から俺たちも依頼に行くんだけどよかったら一緒に行かないか? 今日はあの剣姫もこないんだろ? 」


 ルドルフはいい考えだと言わんばかりにノアを誘った。剣姫とはアテナのことで、今日はアテナは不在だということをさっきルドルフに話していた。数日に一度はこういうことがあるようで、アテナはもともと上界のギルドに所属しておりそちらにも顔を出さないといけないらしい。何故このギルドにも所属しているのかは知らないが、先日アテナがそのことをノアに話して今日来れないことを残念がっていたのを覚えている。


「いいんですか? 僕はCランクですし役に立てるとは思えませんが」


 唐突すぎる誘いにノアも流石にルドルフを警戒し始める。アテナの時もそうだが何故こうも高ランクのハンター達に誘われるのかがわからない。高ランクのハンターは低ランクのハンターを誘うのが普通、というわけじゃないのは周りの反応から見てもよくわかった。ここまで来るとやはり自分の正体が八咫烏とバレているか、懸賞金が上がり有名になったことでルドルフも勘付いたのではと思えて仕方がない。


「構わないさ。俺もあの剣姫のお気に入りに興味が湧いただけだよ。 俺たちと来ればそこそのギルドのポイントも稼げるだろうし、危なくなったら絶対に俺が守ってやるからさ」


 2人のパーティーメンバーが後ろで呆れてはいるが、ルドルフの言葉に嘘は無さそうだ。 それにルドルフはハンターの中で腫れ物扱いされていたノアに気遣って話しかけてくれた。そんな良い人をノアは信じてみようと思った。


「わかりました。 是非お願いします」


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