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成れ果ての不死鳥の成り上がり・苦難の道を歩み最強になるまでの物語  作者: ネクロマンシー
第2章 変わり続ける感情
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第50話 Aランクのパーティー

 ノアは今Aランクのパーティーについて行き機械生物を討伐に向かっていた。この名も無い枯れはてた大地に、汚染された大気、足元を見失いそうなほど濃い霧。ノアを加えた4人はおぼつかない地面の中でも確実に足を動かして前へ進んでいた。この霧には毒が含まれており、専用のガスマスクを着用しなければ数時間足らずで死にいたる。だがノアは気にせずにそのまま霧の中に入ろうとしたため、ルドルフには驚かれ他の2人には呆れられた。


「ちょっとルドルフ、ほんとに大丈夫なわけ? こんな子供を連れてきて死なせたら私達の責任にもなるんだからね」

「こいつ霧のことすら知らねぇ様子じゃねえか。何にも知らない、何にも出来ない。こんな足手まとい連れて行く余裕なんて俺たちだってねぇぞ」


「まぁまぁ。まだ新人なんだから仕方ないって。俺たちが教えてあげればいいだろ? 」


「それにしたってもう少し難易度の低い依頼もあったでしょ? この依頼なんてほとんどAランク級じゃない」


 ノアの行動を見て、メンバー2人はルドルフに不機嫌そうに文句を垂れていた。小声で話しているようだが霧の中でもノアは口の動きを把握出来るため何を話しているかは筒抜けだった。2人はCランクのハンター自体連れて行くことに不満があるらしく、ノアが霧の危険性を無視してマスクすら用意していなかったことに対して怒りすら覚えていた。

 それにこの依頼はもともとルドルフ達が引き受けたものでギルドがノアを考慮して選んだものではない。ノアがいつも受けている依頼は国の周りに現れた機械生物を迎撃したり、資材を集めることだ。だが今回は霧の中から姿は現さないものの、国に危険をもたらしかねない機械生物も先んじて討伐しにきている。霧の中にいる機械生物はただそこらを徘徊している小型の機械生物と違い、知性もありその分厄介な相手だという。そのため2人はノアに対して怒りもあるがその分ノアを心配し、安易にノアを危険な場所に連れてきたルドルフにも怒っていた。


「そう心配するなって。 俺が責任持って守るしマスクも予備があったじゃないか」


「そういうことじゃ…」


 ノアは言い争う3人を少し離れたところで見ていて来るべきじゃなかったか、と後悔していると広げられた知覚範囲の中に何かが足を踏み入れた。ノアは反応がある方角を警戒し、ナイフを引き抜く。おそらくは小型の機械生物、ノアはこれ以上迷惑をかけないようにと気を引き締めた。


「これは…南側ッ!こっちに向かってきてる」


 ルドルフも勘付いたようで素早く戦闘態勢に入った。このパーティーはやはりかなりの実力のようで、この濃い霧の中で姿も見えない機械生物に気づき素早く対応していた。その数秒後、機械生物の姿がくっきりと確認できた途端にルドルフ達がそれぞれ一撃ずつ攻撃してなんなく破壊した。何かをする暇もなく迅速に処理が行われたことに、ノアは棒立ちのまま実力の差を思い知るばかりだった。


「なんだ、小物だったわね」

「これくらいはあいつに任せたほうがよかったかもな」


「あ、ああ…」


 2人は壊れた機械生物の核を取り出して肩をすくめていたが、ルドルフは違うことを考えていた。それは今この場で誰よりも早くノアが機械生物に反応していたことだ。というよりルドルフはもともと気づいていなかったのだ。ノアが何もない方向に視線を向けてナイフに手をかけたのを不思議に思い、ルドルフもその方角に目を凝らしてそこで初めて機械生物を発見したのだ。


(偶然? いや、そんなことあるはずが)


 ルドルフは悶々とした考えを無理やり振り払い、さらに奥へと進んだ。これが偶然か必然か、それを判断するために今日こうして誘ったのだから。

 ルドルフ達は、ほぼ毎日霧の中で戦っているため機械生物の出現には慣れているし迅速な対応もできる。そんなルドルフ達の姿をノアは自分と見比べ劣等感を覚えつつも、脳や身体に迅速な判断を染み込ませる。それから数時間の間、4人は霧の中を探索していた。今回の依頼内容は意外と大まかで、危険地域の機械生物の討伐と書かれており数も個体も限定されていないのだ。ただ国の安全を確保するといった内容だろうか。ルドルフが辺り一帯を見回し、特に異常がないことを確認する。ノアの実力を見たかったがそろそろ潮時かと判断して帰還命令を出そうとした時、ルドルフは地面の中から浮上してくる存在に気がついた。


「下だ!」


 ルドルフが叫ぶのとほぼ同時、二本の長い鋭いハサミのようなものがルドルフ達を襲った。その機械生物は今は絶滅し、700年前に生息していた蟲と呼ばれていた生物をモチーフにして作られたものだった。黒光りする装甲を纏い、長い胴体からは左右に何十本もの黄色いく細い足が伸びていた。

 初めて見る個体なのか、その見た目が酷くおぞましいからなのか皆の足は止まっていた。だがその中で1人だけ瞬時に動き出したものもいた。


「ノアくんっ!」


 誰よりも早く気づいていたのもあり、真っ先に走り出したノアに向かってルドルフは叫んだ。何故ならノアが機械生物とは別の方向へ走り始めたからだ。遅れて後の2人も声をあげた。それはノアが逃げ出したことに怒っているのではなく、無闇に逃げ出したハンターの末路は決まっているからだ。しかしノアは逃げ出したわけでも混乱しているわけでもない。確かな意思を持って何もない地面に向かってナイフを振り下ろした。するとナイフが振り下ろされたその地面がいきなり膨らみ始めた。そこは機械生物が顔を出したところだった。さっき地面から突き上げられたのはこの機械生物の尻尾で、頭部はずっと地面の中だったのだ。ノアはそれを眼で把握していたため、顔を出すタイミングに合わせることができた。機械生物の頭部にある触覚を切断すると、まるで痛みに悶えているかのように長い身体を唸らせはじめた。機械生物が身体を捻ると装甲と装甲の隙間が現れ、ノアはその隙間に向かって刺突を繰り出した。ひび割れる音が耳まで届き、ノアはそのままナイフをめり込ませるように力を込めた。砕ける音が鳴り響き、誰もがノアを見て驚き、一粒の声を漏らす。だが、それはノア自身も同じだった。



「「あっ」」


 4人は宙に浮かぶ鉄の欠片を目で追った。ひび割れて砕け散ったのは機械生物の身体ではなくノアのナイフだった。手に残るのは根本から折れたナイフで、それをノアは口を開けたまま見ていた。


「ギャハハハ!最高だぜこいつ!」


「それどころじゃないっつーの」


 ルドルフの仲間が笑い転げながら地面を叩き、それを咎めるように女ハンターが男の頭を叩いた。


「よし!待ってろ。俺らが助けてやる」


 ルドルフと同じくらいの年齢に、鍛え上げられた肉体を持つ男は笑い涙を拭いて剣を握る。頭の一本角が剥き出しになった仲間を見て、女ハンターも悪魔のような羽を広げた。「後は任せろ」と、その言葉でノアを下がらせて機械生物に立ち向かった。その機械生物は強く、複雑な動きと合わせて地面に潜り死角からの攻撃でルドルフ達を苦戦させた。だが的確な攻撃と精密な連携で機械生物の退路を塞ぎ、装甲の僅かな隙間に風の異能を叩き込み両断した。ノアはAランクの、そしてパーティーという凄さを改めて実感した。









「すみません、何度も助けていただいて」


「気にすんなって。無謀に突っ込む、そういうの俺は好きだぜ?」


 ノアがナイフを折ったのがそんなにツボに入ったのか、今までとは打って変わって笑いながら上機嫌に話しかけてくるようになった。しかしノアの心情としては複雑なもので、このナイフは拾い物でたいしたものではないとはいえ、ロイから貰ったものなためそれなりに愛着はあったのだ。


「俺はドモンってんだ。この女はリピア、よろしくな」



 ドモンが名前を名乗ったのはノアを認めたからなのか、それはノアにもわからないが帰り道は最初よりずっといいものだった。ギルドに戻るとリピアに依頼報告してもらい、ノアは3人にお礼を言って帰ろうとするもドモンに止められる。なにやら今から温泉に入るらしくノアも誘われたのだ。霧の中に数時間もいると身体中に毒の成分が付着するらしく、温泉で汚れを落とすまでが依頼だとドモンは豪語していた。ノアは温泉というものに入ったことがないうえに、最近はずっと水浴びばかりだったため快く誘いに乗った。その後ろでルドルフは結局ノアの実力を充分に見れなかったことを残念に思っていた。ただ、あの反応の速さはナイフの踏み込みを見て何かの鱗片を感じ初めてはいた。

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