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成れ果ての不死鳥の成り上がり・苦難の道を歩み最強になるまでの物語  作者: ネクロマンシー
第2章 変わり続ける感情
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第46話 我儘な花畑

 ノアがギルドに入った途端、周りの空気に淀みが生じる。受付のカウンターに行くには、まず酒場を抜けなければならない。だがそこを通るには必ずと言っていいほどの確率で問題が起こる。

 ノアが席の合間を縫って歩いていくと、酒を飲んでいる男が机の下から足を出してきたのを眼の端に映った。ノアの足を掛けようとしているのだろう。今後のことを考え、ノアは要らぬ抵抗をせずにそのまま歩き続け足に引っかかった。


「ハン!こんなのも躱せねぇのか。アテナさんのひっつき虫が」「アテナちゃん、この前も元気なかったぜ? やっぱりこいつがまた何か…」


 よろめいたノアを皆で小馬鹿にしたように嗤い、侮辱する。しかしそれでもノアは気にせず笑って頭を下げた。足に怪我は無かったか気遣い、気づかなかった自分が悪いと謝罪する。それが一番円滑に進む賢い選択なのだ。どうせ歯向ったところで、この人数に襲われればひとたまりもないだろう。

 どれだけ貶されようが、皮肉を言われようが、立ち向かわなければノアの未来には影響はないのだから。

 だがそんなノアを見て周りのハンター達は、プライドも度胸も無い腰抜けだと、散々嘲笑う。








 今日はアテナが居ないせいか、渡された依頼内容は昨日より比較的簡単だ。ノア一人では難しい依頼はこなせないと判断されたのだろう。

 しかしそれはソフィの心遣いであった。今日の意気消沈したノアを見て、怪我をしてもらいたく無いと思ったからだ。今のノアがただの子供に見えてしまうのも無理はなく、とても機械生物と戦わせようとは思えなかったのだ。

 ノアは途中で寄り道して購入したりんごを齧りながら任務へ向かっていると、後ろから急いでいるような足音が聞こえてきた。


「ノアくん、待って!」


 振り返るとそこには、急いで追いかけてきたのか、髪を乱して膝に手をついているアテナの姿があった。ノアが驚いて立ち止まると、アテナは息がかかるほど顔をノアに近づけて頰を膨らませた。


「もう、なんで先に行っちゃうの!」


「え?約束してましたっけ」


「それは……してない、けど」


 アテナは勝手に約束したと思い込んでいたとが恥ずかしくて俯くが、今度はノアの顔が目の前にあることに気づいて今更ながら意識し始める。しかしアテナはぐっと力を込めて下がりそうになった足を留めて勇気を振り絞る。


「じゃ、じゃあ今日も一緒に行こ!」









 今日の依頼は本当に簡単なものしかないため、一緒に行くか悩んだが断る理由もなく、二人は何事もなく淡々と依頼をこなしていった。暇になってくると好きな食べ物や嫌いな食べ物など、くだらない雑談を交えながら時間を過ごした。するとアテナはその雑談の延長線かのように質問を吐露する。


「最近何かあったの?」


 こちらは見ずに、今も楽しそうに薬草集めをしているが、アテナにしっかりと様子を把握されていたことに驚きを感じた。

 探りを入れていると思いノアは顔に力を入れて警戒した。


「そうですか?いつもと変わりませんけど」


 ノアは内情を隠し、表情を取り繕った。そんなノアを見たアテナは、少しむっとしてノアの腕を掴んだ。


「ちょっ!」


「いいから来て」



 言われるがままに腕を引かれ、ノアは歩かされる。



「……ここは?」


「花畑。私の一番好きな場所」


 アテナに連れてこられた場所は辺り一面、鮮やかな色に覆い尽くされた花畑だった。視界いっぱいに広がる大地を埋め尽くす花。一つ吹くたびに、数十種類の色、数百枚の数の花びらが舞う。

 次の瞬間、ノアは目を見開いた。アテナが花の絨毯に背を向けて、思いっきり花に倒れこんだのだ。

 こんなに綺麗な花達を身体で潰していく少女にノアは驚いて顔を引きつらせた。だが幻想的な美貌を持つ少女が、浮かび上がる花びらの中に沈んでいくその様は、とても美しく綺麗だった。

 清々しく笑い、その好き勝手に我を生きる彼女を心底綺麗だと思えた。花など既に少女の飾りでしかなくなっていたのだ。



「今日ずっと元気なかっから。私も元気が無くなったらここにくるの。花に元気を分けてもらえるから」


 2人は花畑の上に寝そべり空を舞う花を見ながら話していた。


「だからここへ?」


 ノアは理解する。アテナはずっとノアを気遣っていただけだということに。意味のない質問もノアを想ってのことだった。ノアはアテナのことをずっと疑ってばかりで見ようとしていなかったことを恥ずかしく思えた。

 しかし、最初はタルタロスでも自分はそんな感じだったことを思い出す。大事だと思えてきたのはみんながアヴァロンから助け出してくれた時から。だがその大事はが怖くもなった。


 そしてそれは今起きていることでもある。ノアは、話す気もなかった言葉を口から漏らした。


「……自分じゃ出来ないくせに、何かをしたい事があるならアテナさんはどうしますか?」


「うーん、人に頼る。後は……頑張る、かな」


 その質問にアテナは少し考えたそぶりを見せたが、はっきりと今自分がしていることをそのまま伝えた。ソフィに頼り、こうやって頑張って体当たりしている。胸を張って言えることだった。


 ノアはその単純な答えを聞いて苦笑した。いつから自分は壁を乗り換えることを諦めたのだろうか。

 

「……そりゃそうだ」











 2人は日が暮れぬうちに残った依頼を全て終わらせた。そうは言っても、ほとんどはノアが見つけて回収したため、今日もアテナは何もすることは出来なかった。

 アテナはノアの的確さには、素直に感心するも最後まで自分が何もしていないことを思い返す。


「ごめん、私何もできてなくて。Sランクなのに…」


「あはは、そんなことありませんよ、アテナさんがいると安心して依頼をこなせます。それに…誰かと一緒にいるだけで楽しいですから」


 アテナはきょとんとするも、だんだんと嬉しさが込み上げてきた。なんだか初めてノアが笑顔を見せてくれたように感じた。また明日、その言葉をどうにか口に出そうとした。だが先に言い出したのはノアだった。


「これからもご一緒させてもらえませんか?迷惑でなければですけど」


「ほんと?ふふ、嬉しい 」



 ノアに必要とされていると知ると、アテナは顔をほんのりと赤く染まる顔を隠すために自分の髪をすくい上げて顔の前で揺らした。


「じゃあ、はい!」


 アテナはノアに手のひらを向けて伸ばした。ノアが首を傾げていると、アテナはノアの持っている依頼の紙を指差していたずらっ子のような笑みを浮かべる。


「報告するのは私の役目でしょ?」


 パシリなど、本来SランクとCランクのハンター同士の役割分担ではない。そのことにノアは呆れたようにアテナに紙を渡した。















 テトはいつもの道に座って1人もんもんと考えていた。仲間の死、それはテト達にとっては別に初めてのことではない。


 ノアならきっとロイを助けようとしてくれるだろう。でも、そしたらまたノアは1人で行ってしまうのではないか。もしかしたら、もう既に。

 そんなことを頭の中で永遠と、この数時間考え続けている。ここで待ってはいるけど、今すぐにノアを探しに行きたくなる。

 テトは尻尾で地面をパタパタと叩いて砂埃を起こしていた。すると耳が音を拾う。このリズム、この足音は。思い浮かぶのは一人しかいない。

 テトは顔を上げて表情を綻ばせた。テトは待ちわびた少年のもとに駆けつけあることに気づく。昨日の朝から思い詰めた表情だった少年は吹っ切れたように前を向いている。


「テト、ロイを助けたい。でも僕だけじゃ無理だ。だから力を貸してくれないか」


 1人で行かないで自分を頼ってくれたこと。テトはそれが何より嬉しくてゆっくりと顔を縦に振った。


「……んっ」

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