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成れ果ての不死鳥の成り上がり・苦難の道を歩み最強になるまでの物語  作者: ネクロマンシー
第2章 変わり続ける感情
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第43話 間違え探し

 ノアとアテナが依頼に出て数時間が経った頃、酒場でアテナを囲んでいた者達は心の中に苛立ちを溜め込んでいた。彼らは憤慨のままに机の下で足を揺らし、座って酒をちびちびと飲んではいるが腰も半ば椅子から浮かせたままだった。


 日頃から依頼に誘っている者もいれば、少女との距離をどう縮めようか悩んでいる者もいた。憧れや愛欲、親近感や寵愛などそれぞれが様々な感情を抱いていた。それなのにいつ入ったかもしらない新人に奪い取られ、今までの時間が無意味だったことを証明された。

 彼らの心は並ならぬ感情が渦巻いていた。怒りは当然ある。だが、選んだのは彼女なのだ。それを恨み、邪魔をするのは筋違い。

 それに彼らは少女に幸せになってもらいたかった。その少年に声をかける少女の顔は初めて見るもので、少女が嬉しそうに笑うならそれでいい。そう感じる心も持ち合わせてしまっていることに彼らは自分自身に呆れてしまう。


 そんな時。彼らの心を揺さぶる原因でもある存在、アテナが突然ギルドの扉を開いて帰還した。男達は嫌でも様子が気になってしまい中には無意識に立ち上がる者もいたほどだった。そして、彼らはその少女の様子に度肝を抜かれ立ち上がったまま硬直した。











 ーーー依頼は無事に何事もなく終え、依頼は自分が報告しておくとノアに伝えアテナは報告の義務を自ら引き受けた。そのためギルドにはアテナ1人で向かっており、扉を開けると真っ先にカウンターへと向かった。

 いつもは声をかけてくる店主やハンター、職員さえも今日は近づいてこなかった。


 なぜならアテナが、嗚咽まじりに泣きべそをかいていたからだ。


 いつも笑顔で元気を分けてくれていた少女を前に皆、驚きのあまりかける言葉が見つからなかった。


「ちょっ、アテナどうしたの?!」


 その中で唯一声をかけたのは彼女の親友でもあり、ここの女性職員でもあるソフィだった。


「…ソフィさぁんっ…私っ…うぅう……」


 アテナは心配してくれるソフィの顔を見ると我慢出来なくなったのか、ついに揺れていた瞳からぽろぽろと大粒の涙を流した。













 ソフィは奥の部屋を借りると、泣きじゃくるアテナの背中をさすって彼女が落ち着きを取り戻すのを待っていた。


「それで?どうしたの」


「…うぅ、あのね」


 アテナは今日の出来事をぽつぽつと語った。聞いている間は真剣な表情で頷いていたソフィだったが最後には深いため息を吐いた。


「……どうしてそれがノアくんに嫌われたってことになるわけ?」


「だって、会ったことをわざわざ隠そうとしてるから。私と関わりたくないんじゃ…」


 ソフィは改めてため息を吐いた。アテナとは短くない付き合いだが、ここまで彼女の心が弱いとは思っていなかった。


「まずノアくんがアテナの探してた人じゃないだけかもしれないでしょ?前にアテナ、その人の目は赤かったって言ってたよね?ノアくんは違うじゃない」


「そうなんだけど。でも、ノアくんからはあの人と同じものを感じたの」


「で、そのノアくんに違うって言われて逃げてきたと」


「うっ……」


「まぁもし同一人物だったとして、ノアくんにも何か事情かあったんじゃない?」


「………」


 すっかりと弱ったように俯いているアテナを見てソフィはノアの顔を思い浮かべる。確かに何かを感じさせる子ではあったがここまでアテナを夢中にさせ、こんなにポンコツにさせるほどの魅力があるとは思えなかった。だがアテナが、親友がそう信じるのならソフィがやれることは一つだ。


「アテナはどうしたいの。諦める?ずっと探してたんでしょ?それでここまで来たんでしょ?」


 自分は何があってもアテナの味方だがその問題を解決してあげることは自分にはできない。だけだ背中を押してあげることはできる。


 ソフィは腰に手を当てて珍しく怒ったように声を張った。アテナはそんなソフィの様子に驚き、目をパチクリさせる。


「諦めるかって聞いてるの!」


「あっ、諦めない!」


 泣いたせいで少しだけ赤くなってはいるが、アテナの目はもう揺らいではいなかった。その強い目を見てソフィはようやく表情を柔らかくしてアテナの頭を撫でた。


「それでいいの。まったく、Sランクのハンター様が人前でベソかいちゃダメよ?」














 次の日、ノアはまたギルドに顔を出していた。昨日は途中からアテナの口数が減り、帰り道で自分が依頼報告を済ませると言って先に帰ってしまった。そのため最後の最後までノアにはアテナの意図が読めなかった。


(……ん?)


 ノアはギルドの様子がおかしいことに気がつく。視線だ。周りからの視線がノアに集中しており、中にはあからさまに睨む者までいた。


(何かしたか?…おっと)


 通りすがりの男に肩をぶつけられ、ノアは周りの変化に見当がつかず首をかしげる。



「ノアくん、いらっしゃい。今日の依頼は〜あ!少し待ってて」


 男達は職員には気づかれないようにノアに敵意を向けているのだろう。ソフィや他の受付嬢の様子に変化は見られない。強いて言うなら、ソフィはいつも前もって依頼を用意してくれているはずが今日に限って用意できていないくらいだろう。

 ノアは周りに敵意を向けられながらも自分のことなのに特に興味は持てず、ぼんやりとしか考えていなかった。


 そんなノアに軽い足取りで近づく人物に気がついた。


「あっ、あの。ノアくん!」


 その人物はアテナだった。

 ノアが振り向くとアテナは服のすそを握りしめて目を強くつぶっていた。だがしばらく待っていると緊張をほぐすかのように一度深呼吸し声をあげた。


「きょ、今日も!一緒に……行って…いいです…か」


 威勢の良かった声も後になるにつれ萎んでいき、最後辺りはもう殆ど声になっていなかった。


(何故また僕のところに?それに………なるほど。これが原因だったか)


 ノアはアテナの行動を怪訝そうに思う。だが考えても疑惑は暗雲のように頭の中で広がるばかりだ。そして今、原因不明だった周りの視線の理由に気づいた。


(僕が皆から奪ったから、っていうところかな)


 ノアは様々な選択肢と可能性を考え始める。


 アテナは自分に対して何らかの目的があり同行を願っているのは確かだ。だがもしノアの正体がバレておらず、彼女からの誘いを受けて今後も依頼に行くような仲になればノアだけでは不可能な遺跡への道も切り開かれる。彼女を利用すればランクを上げるよりも早く聖杯を探しにいけるかもしれない。だがその選択を選ぶのにもやはりデメリットはあり、まずはここにいる大勢を敵に回すだろうということだ。一回の同行であれだけの敵意を向けられるのだから今後も続くとなるとそれは悪化する一方だろう。

そしてもう一つは自由が限られることだ。あの日彼女を助けた時、彼女は気を失っていたかもしれないが再生と空間の力の両方を使用している。もし怪我でもして彼女の目の前で再生が行われればバレてしまう可能性もゼロではない。そのためこの選択肢を取るなら今後ハンターとして活動する際に怪我をすることはあってはならなくなる。そんなことが自分にできるかどうか、ノアは真剣に考えた。


「だ、だめ…かな?」


 黙り込んでいるノアを見て、アテナは怒らせてしまったのかと慌ててノアの様子を気にした。



「いえ、そんなことないですよ。僕でよければ是非ご一緒させてください」


 だが優しく答えたノアを見て勘違いだと分かり、アテナは目を輝かせながら喜んだ。


「ほんとっ!良かったぁ」


(それが茨の道であろうとも、成し遂げてやる。チャンスが向こうから歩いてきたんだ。利用するにはリスクは高い。だがそれは止まる理由にはならない!)


2人は互いに相手が何を考えているかをまったく理解していない。だが同じ種類で、それでいて違う種類の笑みをお互いが浮かべ合う。

しかしそれは当然のことである。人は他人の心など読むことはできないのだから。



「はい!準備出来たわよ。もしかして今日は2人で行くの?」


その頃、まるで待っていたかのようなタイミングでソフィが依頼を持ってきた。



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