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成れ果ての不死鳥の成り上がり・苦難の道を歩み最強になるまでの物語  作者: ネクロマンシー
第2章 変わり続ける感情
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第41話 傍観者

「あーあ。ルドルフが馬鹿正直だから依頼報酬が貰えなかったじゃーん」


 ルドルフと呼ばれた男の仲間が頰を膨らませて愚痴を漏らしていた。愚痴を言って足をばたつかせているのはルドルフの4人パーティーのうちの1人、悪魔の尻尾を生やした魔族の女ハンターだ。


「別にいいだろ? 誰かの功績を奪っても意味がないし、また稼げばいいじゃないか」


「真面目だなぁ〜。ほんとにルドルフはハイエナらしくないよ」


 ルドルフは獣族で歳は三十半ば、ハイエナと呼ばれる獣の特徴を備えていた。だが性格は真面目でギルドからの信頼も厚く、Aランクのパーティーのリーダーを務めるほどだった。


「言ってろよ。それになんだか気になるんだ。あの機械生物を倒したやつが誰なのか」


 ルドルフはギルドから緊急依頼を引き受けて、被害者が出るのを防ぐべく大急ぎで向かった。だが、到着したもそこにいた機械生物は既にガラクタと化していた。しかも弱点は一撃で破壊され、そのまま置き去りにされていたのだ。それを自分達が倒したと言えば、かなりの報酬が貰えただろう。しかし生真面目なルドルフはしなかった。


 名誉や名声を気にもせず、ただ己の道を歩む者。そんな人物がいると考えると一目見てみたかった。そのためルドルフは周りのハンター達を観察するようにしていた。だが辺りを見回しても、ここにいるハンターは酒を浴びる者、武器をコレクションのように眺める者、醜く自分を誇張する者ばかり。


 そうして周りのハンターを眺めていると、数人が立ち上がり皆同じ方向へと視線を向けた。その理由は一つ、「宝石の剣姫」と呼ばれている少女が帰ってきたからだ。確かに彼女は皆に笑顔を振りまき元気を分け与えてくれる。そのうえ強く気高く美しい。それはルドルフも認めざるおえず、まさにそれは宝石のように輝く華だった。


(でもあの子は違うだろうな、あの時は上界へ行っていたと聞いたし。だが他にあのレベルの機械生物を倒せると言えば……)



「おぉ、帰ったかアテナ。今日は一段と可愛いな」


 宝石の剣姫、アテナに声をかけたのはでっぷりと腹をたるませた男でニヤニヤとした笑みを口元に浮かべていた。


「ありがとうございます、ドープルさん。えっと受付に用があるので失礼しますね」


 アテナは簡単に会話を済ませてその場から離れようとした。だがドープルと呼ばれた男は引き下がるどころか道を塞ぐように立ち塞がる。


「まぁ待てよ。なぁアテナ、いい加減俺たちのパーティーに入れよ。1人じゃお前も大変だろう?」


「その、今はまだ大丈夫ですから」


 ぐいぐいと迫ってくるドープルにアテナに笑みは若干強張り始めていた。


(やれやれ、人気すぎるのも困りものだな)


「おいドープル。その子が困ってんだろ、無理強いはよせよ」


 ルドルフは我慢ならずドープル達の会話に割り込んだ。するとドープルはルドルフのほうを睨みつけ、その間にアテナはぺこりと頭を下げて受付に走っていった。


「ちっ!ルドルフか。俺はアテナのことを想って言ってんだ。邪魔すんじゃねぇ」


 ルドルフに注意され夢中だった相手に逃げられたドープルは不機嫌そうに椅子に座る。その様子を見てから肩をすくめたルドルフは、改めて視線を周りへと配り始める。


(ドープルはこんなやつだ。こいつじゃあないな)


 ルドルフは機械生物の倒した張本人が見つからず肘をついてため息をつく。もしかするとハンターではなく騎士や憲兵達が倒したのかもしれない。そんなことを考えていると、いつのまにか近くに座って紅茶を飲んでいた1人の少年に気づく。


(初めて見るやつだな。それにこいつ、いつからいたんだ?)


 少年は紅茶が口に合わなかったのか、一口飲んで眉を潜めている。ルドルフはその少年に何か異様なものを感じて少し迷った後、隣に座って声をかけた。


「君は新人だよね?」


「……? はい、そうですけど」


 その少年は唐突に話しかけたルドルフに驚きはしたようだが警戒する様子は見られなかった。さっきは何かを感じさせられたが、ルドルフは何を喋るかを考えておらずしばらく見定めるように眺めるだけだった。


(…とても強そうには思えない、見た限り平凡。それ以上でもそれ以下でもないって感じだ。あの機械生物を倒せそうには見えないな)


 ルドルフはその少年が自分が探しているハンターである可能性を消した。














 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 受付の順番待ちの間に匂いにつられて紅茶を買ってしまい、結局味は感じられずにがっかりしていた。そのうえ何故か周りの人達が立ち上がって騒ぎ出し、唐突に話しかけてくる人もいる。

 ノアは居心地の悪さを感じて一刻も早くギルドから出たいと思っていた。


「あの、何か用があるんじゃ?」


 知らないハンターがいきなり隣の席に座り込んできたと思えば、固まって何も言わなくなったことにノアは困惑する。


「おっと悪い悪い。俺はルドルフ、俺もハンターだ」


 ノアはルドルフの首から下がっているものを見る。それは金色の首飾り。Aランクのハンターだという証拠だ。何故自分に話しかけてきたのかは謎だが、悪い人には見えない。そのうえ相手は高ランクのハンターだ。ノアは十分に利用価値があると判断して愛想よく笑って対応した。
















「今日はありがとうございました。興味深い話ばかりでためになりました」


「気にするな。何か困ったことがあったら俺に何でも言ってくれ」


 ノアはルドルフに礼を言って席を立つ。話の大体の内容は困った人を助けたい、といったものでノアが知りたい情報はあまり聞き出せなかったため早めに話を切り上げたのだ。

 だが気を良くして手を振っているルドルフを見ると知り合いを作るのも悪いことじゃないとも思えてくる。

 



「すみません、ソフィさん。今日も依頼を受けに来ました」


「ええ、ちゃんと用意してるわ」


 ノアは最近、ソフィにあらかじめ依頼を用意してもらっていた。何でも引き受けてくれるハンターはギルドにとってかなり重宝される存在でもあり、ソフィもノアをかなり贔屓していた。

 ソフィが本を開いて数種類の依頼をノアに見せる。それは普通ならどれかを選べという意味なのだが、ノアの場合はそのページを全て受けるためただの確認作業でしかなかった。


「どのくらいで上のランクに上がれるんですか?」


「まだハンターになってから数日しか経ってないじゃない。でも、そうねぇ。普通はCランクからBランクに上がるには3ヶ月くらいかかるんだけど、ノアくんのペースなら3週間あればいけちゃうんじゃないかしら」


 ソフィは口に出してから改めてノアの桁外れな仕事ぶりに、驚きを通り越して呆れてしまう。

 薬草や鉱石を採取する依頼でも普通は一日で1つの依頼を達成するので精一杯なはずだ。だがノアは眼の力で何がどこにあるかを瞬時に把握できるため、もの凄い速度で依頼を消化出来ていた。


「まぁでもランクを上げるにはギルドマスターを通さないといけないんだけど、今は不在なのよね」


 ランクの昇格をするためにはギルドマスターに与えられた試験を合格しなければいけなく、こればかりはどうしようもないのだという。ノアは焦っても仕方がないと言い聞かせて気持ちを押さえ込み、笑顔をつくるといつも通りギルドから出て行こうとした。だが出口の辺りがまたもや大勢のハンター達が集まっていた。


(また騒がしくなったな。何かあるのか?)


 ギルドから出ようにも人だかりが出来ており、ノアはその原因がいい加減気になり眼を凝らす。すると中心に一人の人影が確認でき、この人だかりの原因がその人物なのだと理解する。ノアはなんとなく一目確認してみようと人を掻き分けながら進んでみる。

 壁となっていた人達は皆、防具をつけているため鉄と鉄に挟まれて顔を押しつぶされそうになるがやっとの思いで隙間から顔を出す。


 人混みに揉まれた疲労感から解放され、ノアはひと息つくと顔を上げた。そして、その中心の人物の姿を瞳に写した瞬間に心臓の鼓動がピタリと止まったように感じた。





 その人物は雪のような白い髪に湖の底のように揺らめく紺色の瞳をした少女。周りのハンター達の誘いに困ったように笑っており、その困った笑みすらも芸術品のように絵になるものだった。


「大丈夫です!わたしはソロですから。ごめんなさい!通してくださーい」


 ノアはその人物に見覚えがあった。いや、見覚えどころの話でないほどだ。まだタルタロスへ来て日が浅い頃、大切な人と面影を重ねてしまい仕事を放棄してまで動いたのを覚えている。

 ノアの中の何かがここに居てはならないと訴え始め、一刻も早くこの場を離ようと思った。だが心臓はまだ止まったままで足も動かない。

 そしてそのままノアは、止まった時の中で少女と目が合ってしまったのだった。

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