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成れ果ての不死鳥の成り上がり・苦難の道を歩み最強になるまでの物語  作者: ネクロマンシー
第1章 壊れ続ける日常
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第18話 赤いりんご

 昨晩差し伸べた手をキュプラーは拒んで立ち去ってしまった、しかしそれからは会うたびに絡んできていたキュプラーも絡んでこなくなった。

 ノアはあの戦いの中で眼の力を使いこなせるようになり、空間を掌握して知覚範囲を通常の何十倍にも広げることに成功していた。眼が赤くならずとも周りを知覚することは出来るようにもなった。だが流石に空間を捻じ曲げるほどの力を使うと外見にも変化が現れ、眼は赤くなり翼の色も変化してしまう。勿論その時は不死の性能も落ちてしまうようだ。




「仕事ですか?」


「ああ。今日は中央街の西区に行ってもらうよ。狙うのは博物館に展示してある麒麟の化石だ」


 ユグドラは磨き終えた壺を眺めながら頷いた。この仕事は2回目だが、前回はほぼ何もしていなかったため、ほぼ初仕事といってもいいだろう。


「わかりました。では今日の夜にでもいきますね」


「ふむ、まただいぶ雰囲気が変わったね、何かいいことでもあったのかな?」


 ユグドラは頬杖をつきながら楽しそうにノアを見て、何かが入っている絹袋をノアに投げた。


「これは前回の仕事の報酬さ。ロイくんにも既に渡してある。ちゃんと仕事をしてくれれば報酬も出すからそのつもりで頑張ってくれ」


 中を確認すると赤と黄色の宝石、ジェムが入っていた。それぞれ一つづつ入っており合計15ジェム、あの仕事量で15ジェムが高いのか低いのかはわからないが15ジェムあれば一日分の食事はできるくらいの金額だ。


「ハンターの登録料の金は改めて用意するからそれは好きに使ってくれてかまわないよ。まぁ使い道が無いなら武器でも買ってくればいいしオシャレに使ってもいいんじゃないかな」


 ノアはユグドラの言葉に礼を言って部屋を出る。盗みに行くのは今日の夜なのでまだ時間はあった。

 ノアは、ユグドラも言っていたが買い物をしてみるのも悪くはないと思い中央街へ向かった。もしこの下界が北区タルタロスではなく別の区域であったのなら中央街へ行く前に数人と金の取り合いをしなければならなかっただろう。仲間同士の金の取り合いは禁止はされており、北区にいる人数もバッカスが見張っているお陰でタルタロスメンバーだけなためその点に関してもこの区域は本当に安全だった。

 中央街に着くとそこらの店の品を見て行く。この街は上界に大きな城が建っているため城下町となっており賑わっていた。夜中盗みに来た時のことを省けばここに来たことは初めてだった。この国に入ったばかりの時に中央街西区には行ったことはあるがあの時は余裕が一切なかったため凄く新鮮に感じた。

 それからは色々見て回ったのだがアクセサリーや服、どれも値が張り手が届く金額ではなかった。やはり下界と中央街にはそれだけの差がある。だがノアも服やアクセサリーに金を使ってまで手に入れたいとは思えずなんとなしに歩いているとあるものを見つけてノアは足を止めた。


「あの、それ」


「ん?りんご買うの?」


 りんご、赤くて丸いあのりんごだ。今まで食べ物を見ても食欲が湧くことがなかったが今非常に目の前のりんごが食べたくなり屋台のお姉さんから一つ購入した。

 ノアはりんごを恐る恐るかじってみる。


「美味しい」


 本当に味がしているのかはわからない。カナリアに貰って食べた時の、あのりんごの記憶を脳が再現してくれているだけかもしれない。だが美味しいと感じられた。シャキシャキとした果肉の食感と果汁、ノアには本物の味に思えてならない。


 りんご一つで凄く複雑な表情で味わっているノアを見た屋台のお姉さんは、下界で貧相な暮らしをしている子供なんだなと同情するほどで、何故か一個まけてくれたノアは首を傾げた。




 タルタロスに戻ると1人の少女がうろついておりノアを見かけるとこっちに向かって走ってきた。ノアは最初りんごを狙ってきたのかと思ったが、そんな様子でもなかった。少し癖っ毛のある薄い青色の髪をした少女でパッチリとした目に涙を溜めていた。


「助けてぇ!」


 なにやら必死にしがみついてくる少女に落ち着くよう宥めていると、くぅ〜という音が少女のお腹から鳴った。ノアは肩を竦め、持っていたりんごを一つ少女にあげた。

少女はあっという間に食べ終わるもすぐにまたお腹が鳴り始め、それが恥ずかしかったのか顔を赤面させていた。名残惜しいがまた買えばいいだけの話なので袋ごとりんごを少女に渡すと満遍の笑みで受け取り次々に食べ始めた。


「私はニーナ、本当に助かりました!」


「いえ、別にいいですよ。ん、ニーナ?」


 ノアはその名前に聞き覚えがあった。前に姿がなかったタルタロスの最後のメンバーだ。バッカスの言い方で要注意人物だと判断していたが想像とは少し違っていた。とりあえず泣いていた訳を聞くと


「そうだ、実は……」


 ニーナは道に迷っていたという。タルタロスのメンバーでありながらタルタロス内で道に迷うというなんとも奇妙な少女だった。


「なるほど。でしたら一緒に行きましょう。紹介が遅れましたね。僕はノア、最近タルタロスに入った新入りです。ニーナさんの話は聞いてますよ」


「へぇ、新しいメンバーだったんだ。あ、私には敬語は使わなくていいよ。お兄ちゃんから何か言われたかもしれないけど気にしないで」


「お兄ちゃん?」


 バッカスの言葉の意味がやっとわかった。ニーナはバッカスの妹だったのだ。


 ニーナを連れてアジトに戻ると他のメンバーは夕飯の支度を始めようとしていた。


「おい!新入り、お前はいつも何をしている!毎度毎度顔を出さずに。食事の手伝いくらいはしろ!」

「働かざる者食うべからずとは言いましたが、食べなければ手伝わないでいいという意味ではありません」


 帰ると早々にアウルムとアルティナに見つかり咎められた。確かにここに来てからずっと鍛錬に励むことばかりだったためメンバーの手伝いをしたことはなかったことに気づく。新入りの癖に何もしていないのは流石に生意気と思われても仕方ないなと思い手伝いを申し出る。


「当たり前だ。サボりっぱなしだったのだから1週間の間食事の準備はお前だけでやれ!」


 アウルムはノアに手に持っていた包丁を押し付け食材の場所を指差すと何か作れと言って近くの椅子に腰かけた。

 料理はカナリアに習い出来ないことは無いため別にかまわなかった。それにもしかしたらりんごのことで味覚が戻っているかもと思っていたのでちょうど良かった。ノアは淡々と食材を包丁で切り始め料理を始めた。


「あら?ニーナ。あなたどこに行っていたんですか?バッカスさんが探していましたよ?」


 アルティナがニーナの存在に気付き声をかけるとばつが悪そうに道に迷っていたと言うとアウルムとアルティナは2人揃ってまたかと言っていたのを聞く限りニーナの迷子はよくあることのようだ。


 しばらくして料理を作り終わった頃にはタルタロスのメンバーは全員集まっていたので全員分の皿によそって配る。隅の椅子にテトの姿もあったためテトの料理を持っていった。


「はい、これ。口に合うかはわからないけど。あと聞いたかもしれないけど僕が君のパートナーになったから、これからよろしく。今日の夜に仕事で中央街西区の博物館に行くつもりだけど大丈夫かな?」





「……行かない」


 返ってきたのは明確な拒絶だった。顔の仮面も取らずにくぐもった声でそれだけ発するとノアの料理を持ってどこかへ行ってしまう。

 その後ろ姿をノアは品定めするかのように見ていた。


「ノア!これすっごい美味しい!!美味しさが口の中で洪水を起こしてる!」


 後ろから大きな声が聞こえ、声のするほうを見るとニーナが口いっぱいに頬張り子供のようにはしゃいでいた。


「確かにこれは。中々やるじゃないか新入り」

「意外なところで才能の鱗片を見つけました」


 アウルムとアルティナもいつもの無表情とトーンの低い声ではあるがどこか機嫌よく箸を動かしている。


 ロイやバッカスと男性陣の方も中々高評価で一言づつノアの料理を褒めてはくれたがキュプラーは無言のままでノアも一応口にしてみたがやはり味は感じなかった。期待していなかったわけではなかったが別に今すぐどうにかしたいとも思わなかったため特には気にしなかったが。

 ニーナは先ほど4つもりんごをたいらげたにもかかわらずおかわりを希望したため自分のぶんを渡すとニーナは申し訳なさそうな顔をするがノアが気にしないでと伝えると嬉しそうに食べ始めた。美味しいと言われるのも悪い気はしないので作って良かったと思えた。


 ノアは使った食器などを洗うとすっかり夜が更けたので1人その場を離れ、黒いコートを羽織り鳥のマスクを被り仕事の準備を始めた。


 怪盗としての技術もロイから盗み、ノアは自分の力を試めたかった。仕事は2人1組でと決められていたがノアは1人で夜の街へ出て行った。




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