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成れ果ての不死鳥の成り上がり・苦難の道を歩み最強になるまでの物語  作者: ネクロマンシー
第1章 壊れ続ける日常
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第15話 黒鳥のペストマスク

「怪盗?」


「そうさ。キミにはボクが指定した金目のものを盗んできてもらいたい」


「盗むっていっても、騒ぎになるんじゃ?」


「安心してくれ、そこらへんは大丈夫。持ち主でも盗まれたと気づかない物、あるいは盗まれたと人に言えない物をボクが指定するから。決して騒ぎになることはない」


「盗まれたと言えない、というのは?」


「例えば、盗まれた物が本人も人から奪った物だとしたら周りにも言えないだろ? 狙うのはあくまで卑しい心を持った奴らからだけだ」



 ここにいるからには仕事をしなければならない。それに、願いを叶えるためにまずはタルタロスの全員に認められるくらいの人物になることを目標にするべきだとノアは判断し、二つ返事で了承した。


「うんうん、いい心がけだね。それとここでは仕事を行う際には、パートナーを作り二人一組で行動してもらう。流石に一人だと予期せぬ事態に対応出来ないこともあるしね。危ない目にあった時、一人だけでも逃げ出せてボクたちに助けを求めてくれればこちらも動けるから。 必ず二人で行動すること」


「でもここのメンバーは6人ですよね?余るんじゃないですか?まさかバッカスさんと?」


「いや、バッカスくんはタルタロスの防衛という仕事があるから基本的にはここからは出ないんだ。それに6人の中の1人、ニーナくんは戦闘員じゃなくて治療専門の子だからね。 ちょうど1人余ってたんだ」


 その名前は先ほど集まりには顔を出していなかった人物だった。その人物がいたら話が進まない、そうバッカスが呟いたのを聞いていた。次はどんな癖のある人なのかと考えただけで頭が痛くなりそうだ。


「それでだけど、キミにはテトくんと組んでもらおう」


 ノアは最後まで座り込んでいた人物を思い浮かべる。上手くいくか以前に一緒に行動してくれるかどうかの話で、考えれば考えるほど不安がこみあげてくる。


「安心しなよ、あの子はバッカスくんとボクを除けば1番強い。しかもあの子とキミはよく似ているしね」


「似てる……?」


 ノアはなんとなくだがあの赤毛の少年、ロイが1番強いと思っていた。覇気を直に味わい、そう決めつけていたがまだまだ上がいるということだ。

そしてよく似ている。その理由はわからないがユグドラのニタニタとした笑みを見るに、聞いても教えてくれなさそうだ。


「それと、これが今回盗んでくる物のメモと地図。今回だけはロイくんと行くといい。教え上手だから彼に聞くのが1番早いだろうさ。そしてこれはボクからのプレゼントだ。昨日作ったんだよ、顔は見られたらまずいからね。特にキミはハンターになるんだから、その前に怪盗として顔が売れたら一大事だよ」


 ユグドラに渡されたものは黒い鳥をイメージされて作られたマスクだった。ペストマスクといわれているもので、黒光りする黒いクチバシと目の部分にはゴーグルような物がついている。

 ノアがペストマスクをじっくり見ているとユグドラは落ち着かない様子でノアを見ていた。


「あの、変、だった? いやいや、ボクだって少し変だとは少々感じていたんだけど、怪盗がつけるマスクなんだから多少は気味が悪いモノにしたほうがいいかなって、それでも、その・・」


 ユグドラの声は最初は不安そうな色を帯びていたが段々と早口になっていた。

 その様子を目にしてノアは思わず吹きだすと嬉々な笑みを作り頭を下げる。


「いえ、わざわざありがとうごさいます。とても気に入りました」



「ん?そ、そうかい?いいさ別に。ここにいても暇だったしね。ほらほら、早く行ってきたまえ!」


 明らかに機嫌を良くした様子のユグドラはノアを急かして部屋から追い出した。

 しかしノアは、鉄の門が閉まると同時に手に持っている鳥のマスクを見下ろし、新たに羞恥心も捨てなければならないことを悟った。


「……ダサいな」













 ―――――――――


時間がある時、決まってノアは身体を鍛えた。朝が来るまで身体をほぐす体操を行った後、筋トレや教わった蹴りを何度も繰り返した。数時間全速力で走り続けていると脚がピキピキという音を立ててひきつるような痛みが走り足が動かなくなるが、そんな時はきまって爪を突き立てて脚を傷つける。そうして脚を破壊すると再生が行われ筋肉も本調子に戻るのだ。


朝日が昇れば、他のメンバーも広場に集まってくる。挨拶くらいはしておくべきだろうとノアも行ってみると、なにか大きな鍋でスープのようなものをかき混ぜている双子の姿があった。



「どけッ。お前は要らないって言ったよなぁ?」


 隣に現れたキュプラー。彼は後ろからわざとノアに体をぶつけ、悪態をついてきた。確かにいい匂いがして美味しそうではあるが、食べても味は感じないだろう。味わえる人が食べた方が絶対いいだろうと、ノアもそれに関しては対して気にする様子もみせなかった。


「はぁ、いらないよ。えと…キュプラーだったよね。ロイは何処にいるかな?」


 キュプラーはノアが強がっているようにしか見えなかったのか、苛立ちを感じてスープを一気に飲み干した。


「目上の人には敬語を使えって習っただろう。お前は新入りなんだから俺たちには敬語を使え!」


 流石にここまで横暴な態度を取られるといい気分では無いが、面倒ごとを避けるためノアは低姿勢で接することを選ぶ。


「…すみません。ロイの場所を知りませんか?」


 キュプラーは怒るどころか気にしてもいない様子で笑うノアの様子にさらに苛立ち、知らねぇと叫んで立ち去っていく。


 ノアは自分の対応の何が悪かったのかが分からずに、より慎重に対応することを心掛けるようと頭を掻きながら双子に近づいた。


「アウルム、アルティナ、おはようございます。ロイの場所を知りませんか?」


 鍋の中身を注ぎあっている双子にノアが挨拶をすると、2人は整った顔に張り付いている表情をほとんど変えず、無表情でノアを評価し始める。


「自分から挨拶をしに来たことは、まぁ及第点だ。挨拶は新入りの1番の仕事だからな」

「このスープが欲しいのですか。働かざるもの食うべからず、という言葉をご存知ですか? 食べ物が欲しいのならまず実績をせいぜい積むことですね」


 ノアの欲しい答えとは違うことだけ喋ると、また2人は鍋をつつき始める。どうしてここにいる人たちは話をろくに聞かないのだろうか。

 ノアは肩をすくめながら少し離れた所に座っていたテトに挨拶をしに歩み寄った。だが声をかけてもテトは反応もせずに、違うどこかを見ているようだった。ノアはどう対応すればいいか迷ったが、これからパートナーになるのだからもう少し距離を縮めようと粘る。


「君のパートナーになりました。これからよろしく」


「………」


 テトは何か言おうとしたのか、一度は顔を上げたものの結局は何も言わなかった。そのうえ猫の仮面をつけているせいでその表情もわからない。


(何言っても無駄って感じかな)


 大人しくロイを待つことにしたノアだったが、挨拶をして周っても、一度も挨拶を返してもらってないことに気づき一人失笑した。







「お、いたいた。ノア」


 しばらくするとロイが姿を現し、ノアを手招きした。


「今日のことは聞いているだろ?今日の夜に始めるから準備しておいて。今回は簡単な仕事だから準備することはないと思うけどね。ターゲットは中央街の領主の家、狙うものは本だから」


「わかった。僕は何をすればいい?」


「ノアはついてくるだけでいい。 まぁ、ついてこれたらの話だけどね」


 ロイは挑戦的な笑みを作り、ノアに黒いコートを投げた。ノアはまだ知らなかった。怪盗の、この貧民街の洗礼がまだ終わっていないことに。






 ちなみにロイは挨拶を返してくれた。

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