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成れ果ての不死鳥の成り上がり・苦難の道を歩み最強になるまでの物語  作者: ネクロマンシー
第1章 壊れ続ける日常
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第13話 鍛錬

 バッカスの朝は早く、常に浅い眠りにつくような習慣をつくっていた。敵が来てもすぐさま反応できる状態にするためだ。

 バッカスは手首や足腰を伸ばすと昨日の夕方、ノアを鍛えた場所へ向かった。


(そういえば時間指定すんの忘れたな。 まぁどうせ今頃逃げ出してるだろう。 なかなか見ごたえのあるやつかと思ったが動きはまるで素人。終わる頃にはだいぶマシになったとはいえ、あの様子だともう来ないだろ)


 正直面倒くさかった。だから逃げ出したくなるようなやり方を選んだのだ。しかし、バッカスの思惑は裏切られる結果になった。


「な、あいつ!?」


 そこには今頃逃げ出していると思っていたノアの姿があった。ノアの下には、うっすらと赤く濁った大量の汗が滴っていた。


(この血の混じった汗の量、まさか)


「おい。お前寝てないのか?」


 バッカスは驚きのあまりに、らしくもない言葉をかける。

 ノアはその言葉でバッカスの存在にやっと気づいた様子で、筋トレをやめて立ち上がる。


「ええ、まあ? 今日もよろしくお願いします」


 首を傾げ、さもそれが当然と言わんばかりに笑って答える。


「あ、ああ。だが睡眠は取れ。そんなことで点数稼ぎのつもりか?筋肉は筋繊維の損傷と回復を繰り返して肥大化していくもんだ。やり続けても意味はない」


「僕は大丈夫ですから」


 ノアは不死の力で損傷した途端に再生が始まるので睡眠に頼る必要はなかった。それに睡眠を取ること、何もしていない時間を過ごすことをノアはひどく嫌った。

 しかし、その言葉を違う解釈の仕方をしたバッカスは額にしわを寄せ、ノアを蹴りとばした。


「馬鹿が、効率が悪いって言ってんだよ。俺の言うことはちゃんと聞け」


 ノアはバッカスの蹴りを、腕を胴の前で交差することでガードしていた。威力を殺しきることは出来ないので身体を吹き飛ばされはしたがダメージは殺すことに成功していた。


(こいつ、もうこの速度の蹴りに反応できている)


 バッカスがノアの成長に驚いると、ノアはいきなり何を思ったか自分の拳を石に叩きつけて砕いた。


 流石にその行動は予測できずバッカスは口を半開きにしたまま固まる。なにせ砕けたのは拳のほうなのだから。

 だがバッカスが固まっている間に、ノアの拳はみるみるうちに異様な音を立てて再生していき、最後に腕を振るった頃には血が払われ綺麗になった手が突き出されていた。


「僕は再生能力が高くて、こんな風にすぐに戻るんですよ」


「……そうか」


「ええ。だから大丈夫です」


 説得できたと思い、安心していたノア。その顔にバッカスは思い切り蹴りをぶち込んだ。


「え…」


 バッカスの今までにないほどの蹴りをノアは顔面にもろにくらい、石の壁にめり込んだ衝撃で身体中が潰されそうになる。


「なら手加減はいらないな。 あと自分で身体を傷つけるな。次は許さん」


 顔をぐちゃぐちゃにした本人が何を言ってるのかと心の中で悪態をつきながらも、身体の再生は既に始まっており崩れかけた壁からノアはどうにか這い出る。だが這い出た直後にもう一発、バッカスはノアに蹴りをおみまいし、壁ごとノアを粉砕した。


「無視するんじゃない、返事は?」.



「………は、い」


 ノアは潰れた身体で立とうとするがうまく立ち上がれない。再生が追いついてないのだ。ノアの行動を生意気な態度と取ったバッカスの鍛錬は本当に容赦がなかった。


 あの日、体に変化が起きた時以降、身体の損傷が連続で重なると少しづつ再生能力が落ち始めるようになってしまっていた。今のノアは不死身ではないのかもしれない。何度も何度も殺され続ければいづれ死ぬ時がくるだろう。


「反応はかなりマシにはなったな。 今日は体術を極めてもらう」


「わかり、ゴホッ、ました」


 体術と言われて、蹴りのフォームなどを教えてもらえると思っていた。しかしバッカスが命じたことは「走れ」の一言だけだった。再生が終わるとその後は本当に午前中の間はひたすら走り続けさせられた。ノアは素足で走っているため、足の裏に石が刺さったり擦れたりで血がでてくる。それでも止まらずに走り続けさせられた。数時間走り終え、息も絶え絶えになり膝に手をつく。脳もひたすら酸素を求めて呼吸を荒げていた。


「よし、その状態でかかってこい」


 ノアは肩で息をしている状態で今すぐにでも座り込みたい気分だったが、バッカスに今からが体術の訓練だということを教えられる。

 喉からへんな音が漏れるほどの軽い絶望感をくらったが、ノアは無理やり手足を動かした。状況が状況だ。動きは鈍く、キレもなくなる。そのうえ昨日より遥かに強いバッカスの攻撃が飛んでくるのだ。昨日の鍛錬も過酷かと思ったが今日のほうが精神的にも辛かった。 それでも前に進んでなんとか隙を見て蹴り返してみる。しかし当たることは一度もなく自分が蹴りをもらうばかりだった。


 息が乱れていても普段以上に動けるようにするため。あとは単純に体力をつけるための鍛錬で、予想以上に苦しく、バッカスの終了の合図を告げられたと同時にノアは崩れ落ちた。


「今日はここまででいい。夕方は他のやつらと顔合わせをしてもらう。あと隣にある水浴び場は好きに使っていいから体くらい洗っておけ。お前の体、気持ち悪いくらい汚れてるぞ、服はこれに着替えろ。お前のそれはもう服とは言わん」



「……ありがとう、ございま、した」


「ふん」


 バッカスはノアに白いザラザラとした布でできた服を投げつけた。ノアの服はほとんど布の面積がないほど削れており、色も元の色がわからないほど変色していた。




 ノアはドームの横に設置されている水浴び場で水を被り、髪の毛をゆすいで血と汗の塊を流した。体から流れでた水は茶色く濁っていて、汚れもこびりついていていたおかげで中々取れなかった。この国に来てから体を一度も洗っていなかったことに気づき、自分でもそれはどうかと思えてきた。

 丁寧に洗い流した後、ノアは体を拭くものを持っていない事に気付き、仕方なく自然に乾くまで風に当たっていた。







 ーーー「やぁ。あの子の様子はどうだい?順調かな?」


 黒く長い髪の毛をふわりと浮かせたユグドラはソファに座りかけ、優雅に脚を組んでバッカスに笑いながら問いかける。


「順調すぎるくらいですね。飲み込みがとてつもなく早く成長速度が半端じゃない」


「それはいいことだ。やはりキミに任せて正解だった」


 ユグドラは満足そうに頷く。


「ボスはあいつの呪いを知ってあいつをここへ?」


「そうだよ? あの子はこのタルタロスでも素晴らしい戦力になる。どうしてだい?なにか不満でも?」


「やり方を間違えました。あいつは自分の体を大事にしなさすぎる。俺と始めて会った時も翼を使い捨てるように扱って殴りかかったり、鍛錬の時も攻撃を受ける前提の行動が多すぎる。俺の蹴りで痛みの恐怖を覚えさせようと試みましたが、何度死んでもおかしくない蹴りをくらっても平然と笑って立ち上がる。あの歳の子供なら顔面を殴られそうになれば普通は目をつぶってしまうもの。 だがあいつは目を見開いて何かを見ようとしている。あれは、狂ってますね」


 バッカスは目を伏せてそう答えた。バッカスはノアに攻撃を受ける怖さを知ってほしかった、そのために何度も強く、殺す気で蹴った。だが結果は真逆だった。ノアはもう平然とバッカスの蹴りをうけ、それが当たり前のように感じ始めている。蹴られながらも押し切って反撃しようとするほどだ。

 そのバッカスの反応にユグドラは思わず吹き出した


「ははっ。そうか、あのキミが育成を失敗するほどか。面白いじゃないか。…そうだね、あの子は生き急いでいる。それが悪いことじゃないんだけどね、そこをどうにか頑張ってキミが導いてあげてくれないかな。これはキミにしかできないことだ。バッカスくん、キミにも期待しているよ」


 バッカスはすごく面倒くさそうな表情を作るが、了解。その二文字で答えた。

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