112.力と力?
「主、呼んだ?」
「あぁ、急に悪いな」
自分の小さい時の姿が目の前にいる。
ん~、まだ少し慣れないな。
「どうしたの?」
「少し聞きたい事があって」
俺の言葉に、真剣な表情をするロープ。
……駄目だ。
俺ってこんな顔をしているのか?
なんというか……恥ずかしい気持ちになるんだけど。
何故だ?
「主?」
「あぁ、悪い。えっと、神国で孫蜘蛛達やのろくろちゃん達と何かしているみたいだけど、何をしているんだ?」
「自分の目でしっかり見ようと思って」
ロープの言葉に首を傾げる。
「神国では結界を駆使しても入れない場所があったから、周りからの情報や評価を聞いて判断していたんだけど、それが大間違いだった。だから、自分達の目でしっかりと見ていこうと決めたんだ」
あぁ、創造神の事か。
確かに、彼の周りにいた者達のせいで間違った情報が出回っていたな。
「そうか。それはいい事だと思う」
間違った情報は問題を引き起こすからな。
「それで、孫蜘蛛達やのろくろちゃん達が神国で情報を集めているのか?」
闇に紛れ込める能力を生かして。
「うん。最初は孫蜘蛛達に普通の結界を張って神国で情報収集していたんだ。だけど勘の鋭い神がいて、何度か気付かれそうになったんだよね。それで、もっと安全に神国で動き回れる方法を探していたら、子供達がのろくろちゃんで結界が出来ると話しているのを聞いたんだ。のろくろちゃんの力は呪力。呪力は神国で生まれた物だから、もしかしたらと思ってのろくろちゃん達に協力を求めたんだよ」
なるほど。
確かに呪いが持つ力、呪力は神国で生まれた物だ。
魔神力や闇の魔力より、神国に馴染みやすいと考えたのか。
「神国で動き回っても大丈夫なのか試してみたら、のろくろちゃんの結界で守られた孫蜘蛛達から、不思議な報告を受けたんだ」
ロープの言葉に首を傾げる。
「何を?」
「神国で活動していて気付いたんだけど、空間のあちこちに触れる事が出来ない力があったんだ。調べようと思っても、触れられないから調べられなくて。それが、のろくろちゃんの結界で守られた孫蜘蛛達から、『触れられるようになった』とか『中に潜り込める』とか、色々と報告が来て」
触れられない力が、呪力に反応して触れられるようになったという事なんだろうか?
やはり話に聞いていた突然現れたり消えたりする「正体不明の力」なのかもしれないな。
「最初はアイオン神の近くで調べてみたんだ。バレても怒られないだろうし」
それは、いい判断だな。
「アイオン神の傍で色々試した結果、のろくろちゃんの結界で守られた孫蜘蛛達は、触れられない力から力に渡って神国を移動出来たり、その力の中に入って長時間過ごす事が出来ると分かったり、神国で活動するのに凄く役立つ事が分かったんだ」
アイオン神もまさか自分の周りで色々挑戦されたとは思わないだろうな。
「それで力に呼び方が無いと不便だから『闇』と呼ぶことにしたんだ」
「分かった。その闇の中は安全なんだな?」
「うん。闇は時々消えるけど、中にいる時に消えた事は無いから、たぶん大丈夫だと思う」
消える。
「それは、絶対に安全とは言えないな」
「まぁ、そうだね。でものろくろちゃんの結界で守っているから、闇から出ても神達は気付かないよ。前に気付かれた事がある神に近付いて確かめたんだけど、反応は無かったから。だから闇が消えると分かったら、すぐに外に出たら問題ないと思う」
う~ん。
それはそうなんだけど。
もし気付かずに、中にいる状態で闇が消えてしまったら、どうなるんだろう?
「孫蜘蛛達にはちゃんと説明しているよ、もしかしてという事があるという事も理解してもらっている」
「そうか。納得して協力してくれているなら、俺からは何も言わないよ」
皆が納得しているなら、俺がこれ以上口を挟むのは止めた方がいいな。
それに、神国について知りたい気持ちもあるし。
「気を付けてくれ」
「うん」
あとはロープや孫蜘蛛達、それにのろくろちゃん達を信じよう。
「そうだ、主。神国を調べてちょっと……」
ロープを見る。
子供時代の俺が、眉間に皺を寄せている。
真剣な表情なんだろうけど、笑いそう。
「何かいる」
「えっ?」
何か?
「今、創造神の近くにも仲間が潜んでいるんだけど」
凄いな。
もう、創造神の傍にいるのか。
「彼に向かって何か力なのかな? 何かが近付こうとしている気がするんだ」
「創造神に近付く力?」
俺の言葉に首を傾げるロープ。
「力……力とは少し違うような。いや、力なのかな?」
ロープが力だとは判断できない何か?
「神力や魔神力、呪力とは違うんだ。魔力とは、何処か似ているところがあって。でも力には感じる感触が無くて」
神が独自に持つ力とは違う。
でも、光の魔力や闇の魔力と似ているところがある。
ただし、力から感じる感触は無い。
なんだろう?
気になるな。
「何度考えても、よくわからなくて。力ではないなら、問題ないのかな?」
確かに力ではないなら、それほど問題は無いのかもしれない。
でもロープが気になるのは、そこに何かを感じるからだろう。
「いや、注意しておいた方がいいだろう」
何かあってから後悔するより、注意しておいた方がいい。
「分かった」
「この事を、フィオ神に話してもいいか?」
神側にも、知っている者がいた方がよさそうだ。
「うん。それは問題ないよ。というか、創造神の事だからね。神達は知っておいたが方がいいと思う」
「ありがとう。それではロープ。フィオ神に説明をお願いしていいかな?」
「分かった。任せて」
ロープは自分の胸をポンと叩いて、頷いた。
「あっ、その『何か』。分かったり、変化があったりしたら教えて欲しい」
「了解。創造神に近付いた時も知らせた方がいい?」
「そうだな。その時はフィオ神にも伝えて欲しい」
「分かった。それならフィオ神には、なるべく早く話した方がいいよね。今から行って来るね」
「疲れていないか?」
ここのところ、ロープは忙しく動き回っているから心配だ。
「大丈夫だよ。全く疲れていないから」
確かに、元気そうだ。
「それだったら、頼むな」
ロープがリビングから消える。
神でも魔法陣を使って世界を渡っているのに、ロープには必要ないんだよな。
さすが、上級神が作った魔幸石という事なのかな?
それにしても「何か」か。
それって、俺が感じたこの世界を安定させようとしている力の事かな?
でもそれなら、創造神に近付こうとしているのはどうしてだ?
「……分からないか」
「主、どうした?」
俺の傍でずっと話を聞いていた飛びトカゲが顔を上げる。
「ロープの話に出ていた『何か』が気になってさ」
「力とは言えない物か」
「何か思いつく物は無い?」
神獣の知識に無いかな?
「悪い。記憶には何も引っかからないみたいだ」
「そっか。調べてくれてありがとう」
神達が知っているものであればいいけど。




