111.役に立ちたい!
家に戻る途中、広場で不思議な物を見つけ足を止める。
「なんだ、あれ?」
広場では今日も仲間達が元気に特訓をしている。
朝から、竜巻が起こったり、雷が落ちたり。
うん、いつも通りだ。
朝だから、子供達の姿も見える。
でも、いつも通りとは異なる物がいる。
いや、ある?
どっちだろう?
「のろくろちゃん?」
ただ、いつもの空中に浮いている丸いのろくろちゃんとは違う。
人型だ。
しかも、あの背丈と形から……風太バージョン?
目をこする。
うん、見間違いでは無いな。
のろくろちゃんの、等身大風太バージョン。
「えっ?」
中から風太が出てきた。
本物……だな。
「気になるし、聞きに行こう」
広場に入って、風太に近付く。
俺に気付いた、仲間達が朝の挨拶をしてくれる。
それに返しながら、風太の前まで来る。
風太の周りには、先ほどまでいなかったいつもの丸いのろくろちゃん達が空中に浮いている。
「風太、ちょっといいかな?」
「うん。どうしたの?」
風太の力に、異常が無い事を確認する。
問題は無いな。
「さっきのは、何だったんだ?」
俺の言葉に、風太と空中に浮いているのろくろちゃん達のテンションが上がった。
のろくろちゃんは、テンションが上がると小さい呪いをまき散らす。
今もあちこちに呪いが飛んで行く。
まぁ、これもよくある光景だから焦る事も無い。
呪いが当たった者達は、いつも通り浄化をしてお終いだ。
あっ、他の子供達が集まって来た。
「あれは、のろくろちゃん達と作りあげた『呪いの結界』だよ!」
呪いの結界?
「そんな物が作れるのか?」
いったいどうやって?
「結界を作る時に使う力を、のろくろちゃんでするんだ」
まぁ、のろくろちゃんは呪力の塊だから、使おうと思えば出来るのか?
ただ、呪力はまだ不安定な部分がある。
呪力を貸したのろくろちゃんは、大丈夫だろうか?
空中に浮かんでいるのろくろちゃんを見る。
あれ?
のろくろちゃんを形作っている呪力が……安定している?
数日前までは、呪力に揺れのような不安定さを感じた。
今は、全く揺れを感じない。
「創造神が、呪界を認めた事と関係があるのかな?」
……考えても、分からない事だな。
悪い事ではないから良いか。
「呪力が安定したんだな。のろくろちゃん達、良かったな」
俺の言葉に、嬉しそうにくるくる回るのろくろちゃん達。
「それでなのかな?」
「んっ?」
翼の言葉に首を傾げる。
「今までは、孫蜘蛛達しかこの結界は作れなかったんだ。何度か挑戦したけど、失敗ばっかり」
孫蜘蛛達が呪いの結界を作っていた事を、初めて知ったんだけど。
後で、確かめておこう。
「それが今日は、まだ失敗もあるけど風太だけじゃなくて桜と太陽も出来たんだよ」
桜と太陽を見ると、嬉しそうに頷いている。
翼は少し悔しそうな表情をしているので、彼は失敗したのかな。
「そうか。うまく出来て良かったな」
ところで、呪いの結界を作ったのはどうしてだろう?
広場にいるという事は、特訓で使うのか?
「あのさ、呪いの結界を使って何をするんだ?」
「神国に忍び込もうと思って」
かみこくにしのびこむ?
……あぁ、「神国に忍び込む」か。
なるほど。
「はっ? いや、待って? どうして?」
神国に遊びに行くのは止めたけど、諦めていなかったのか。
いや、遊びにではなく忍び込むに変わった。
これは……んっ?
「ごめん。前は遊びに行こうとしていたよな? どうして忍び込むに変わったんだ?」
「「「「「その方が面白そうだから」」」」」
子供達の言葉に、頭を抱える。
「でも、それだけではないですよ」
あれ?
ヒカルの声が聞こえる。
「どういう事だ?」
子供達の傍にヒカルが来る。
「のろくろちゃん達に、役目を与えたいみたいです」
役目?
「彼等も何か役に立ちたいみたいですから」
ヒカルの言葉に、のろくろちゃん達を見る。
俺の視線に気付いたのか、空中で頷くような仕草を繰り返している。
「そうか」
そう言えば、俺はのろくろちゃん達にだけ何も求めていないな。
仲間達には、この世界とこの星に住む者達を守る事をお願いした。
子供達には、まずは勉強をして知識をつける事をお願いした。
それなのに、のろくろちゃん達には何も出来る事は無いと決めつけてしまった。
「ごめんな」
のろくろちゃん達が俺の周りをくるくると回り出す。
それに小さく笑う。
「いいよ~」
「大丈夫」
あっ、のろくろちゃん達の声だ。
そう言えば、さっきまではどうして無言だったんだろう?
「あっ、良かった。声が戻ったね」
風太の言葉に、無言だったわけではなく話せなかったという事が分かった。
「呪いの結界を作ると、話せなくなるのか?」
「そうみたい。でも、暫くすると元に戻るし、のろくろちゃん達も特に気にはならないみたい」
「そうそう」
「気にならないよ~」
「問題なし」
桜の言葉に、賛同するようにのろくろちゃん達が一斉に話し出す。
今、俺達の周りにいるのろくろちゃんの数は9匹なので、ちょっと騒がしい。
「分かった。分かった。大丈夫なんだな」
「そうそう」
「うんうん」
「ほわほわ」
質問の答えの中におかしな言葉が紛れ込んでいるけど、大丈夫という事だろう。
周りを跳びまわるのろくろちゃん達を見る。
この子達にして欲しい事か。
……どうしよう、何も思いつかない。
「主。のろくろちゃん達は今、ロープと一緒に神国で活動しています」
ロープと?
ロープは神国の現状を調査していたよな。
それに、のろくろちゃん達が協力しているという事か?
「神国と関わって、嫌な気分になったりしていないか?」
神達の行動で、魂が呪いに落ちた。
あまりこういう言い方はしたくない。
でも、その通りだからな。
だから、神国と関わって気持ちが落ち込んだりしないだろうか?
「大丈夫、仲間、友達出来た」
「ここ、いいとこ」
「うん。うん」
「気にしないよ~」
どうやら、俺が思っている以上にのろくろちゃん達はこの呪界を好きみたいだな。
「それは良かった」
「今、神達の動向を調べているのですが、孫蜘蛛達とのろくろちゃん達がかなり活躍してくれてます」
「そうなのか?」
ヒカルの言葉が嬉しいのか、小さく叫びながらのろくろちゃん達がヒカルの周りを跳びまわる。
あっまた、呪いが飛び散ってる。
「はい。孫蜘蛛達を呪いの結界で守って、その状態で神達に近付き、彼等の動きを見張っているんです」
「神に近付いて」と言ったのか?
ヒカルを見る。
真剣な表情で俺を見ている。
「神に近付いて大丈夫なのか?」
「はい。呪いの結界は、神国にある闇に紛れ込む事が出来るようなんです」
闇に紛れ込む?
意味が分からず、首を傾げる。
「影の事か?」
俺の言葉に首を横に振るヒカル。
「神国には、呪力に似た力のような物があちこちにあるんです。名前が無かったので、ロープが『闇』と名付けました」
呪力に似た力?
「そんなにあちこちにあるのか?」
「問題を起こしている神の近くには、特にいっぱいあるみたいです。だから、紛れ込んで調べるのが楽だと孫蜘蛛達が言っていました」
呪いが生まれる前。
神国では、正体不明の力が突然現れては消えるという現象が起きたと言っていたな。
神達は、その存在を一切認めなかったようだけど。
もしかして、その力の事か?
でも正体不明の力は、突然現れると聞いたけど……別の力なのかな?
「その力を神達は感知しているのか?」
「いえ、不思議な事に神達はその存在すら知らないようです。まぁ、呪力に比べるとかなり弱い力ではあるんですが」
そこにあるのに、存在すら知らない力。
ずっとその力の存在を拒否し続けた結果、あるのに見られなくなるという事はあるんだろうか?
「い~い~?」
「だめよ~?」
えっ?
のろくろちゃん達が、俺の周りに集まっている事に気付く。
おそらく、ロープと一緒に行動していいのか聞きたいんだろうな。
「危険ではないのか?」
ヒカルを見ると、笑って頷く。
「見えない力の中にいるんだから、バレるわけが無いですよ」
「分かった。ロープと一緒に頑張って。ただし、危険を感じたらすぐに逃げる事」
俺の言葉に、凄い数の呪いをまき散らすのろくろちゃん達。
嬉しそうでなによりだ。
ロープに色々聞かないとな。




