四七話 ~ギルドにて~
長らくお待たせしました
あの後俺達は全ての死体を処理、捕らわれた人達を救出。しかし、奴らにさらわれた人達は例外なく故郷の村を破壊され、帰るべき家がなくなってしまった
流石にこのまま「はい、そうですか」で終わらせる訳にもいかないと考え、俺達はギルドに相談をしたのだった。
そして、それから三〇分後……
「では、そういうことでよろしいですね?」
「あぁ、悪いな。任せる」
「いえいえ、これも仕事のうちですから!」
クルスさんにそう頼まれたユーナさんは満点の笑顔を浮かべて奥にある扉へと消えていった。
こんなに分かりやすく好意を向けられているのにどうしてこの鈍感男は全く気づかないのだろうか。
……よし、ギルドを出て二人だけになったら彼女のことをどう思っているのか聞いてみることにしよう。
俺が心の中でそんなことを思っているといつの間にかクルスさんは俺達の所へ来ていた
「喜ばしい知らせだ。彼らの対応が決まったぞ。……暫くの間この街で働くことになるらしい。寝床はギルドが提供してくれるみたいだ」
「……暫く?」
「あぁ、準備が整ったら村が復興するまで王都で面倒を見て貰えるみたいだ」
王都、異世界系ラノベでは必ずと言っていい頻度で出てくる巨大都市、そして世界の中心。ちゃんとこの世界にもあるんだな
「それはよかったわ。彼らが生活に困ることはないのね」
「そうだな。それに今回捕らえられてた人の殆どが何もされてなかったのが救いだな。……問題は極少数の手に掛けられた人だが……」
クルスさんの言うとおり、今回捕らえられていた人達の大半は殆ど何もされていなかった。だが勘違いしてはいけない。殆どということはつまり、少数の何人かは被害を受けたということだ
例えば男性の場合は死の直前まで働かされていた。しかしこれは解放されてしまえば心に深刻な傷を負うほどのものではない。問題は女性の方だ
盗賊団のアジトに連れ去られた女性の末路なんて考えずとも分かる。何をされたかは言葉にしないが心に深刻な傷を負ってしまったのはたしかだろう。……けれど
「……それは俺達じゃどうしようもないですよ」
心の傷なんてものは俺達には癒やすことは出来ない。魔法が使えれば肉体の傷を癒やすことは出来るが心にまで効力はないのだ
「分かってはいるんだがな。それでもせめてもう何日か早く受けてればって考えるんだよ」
「……もしもの話を考えても起きてしまったことは変わらない。被害がこれ以上に増えなくてよかっただろう」
実際クルスさんの言いたいこともよく分かる。せめてもう少し対応が早ければ……と。俺だってそう思う
だが、今回の件でそんなことを考えるのは何か違う気がする。たしかにあと少し早ければ少なからず被害もこれ以下ですんだかもしれない
しかし勘違いしてはいけない。救うことが出来たのは『今回』の被害者だけなのだ。
奴らがいったい今までこの悪行をいくら繰り返してきたかは分からない。だが今回が初めてではないことだけは確かだろう
……不謹慎なことではあるが、だからこそ少しだけこうも思ってしまう。『数日前にこのクエストを受けていなくてよかった』と
例えば今回彼らが捕らえられたのを三日前と仮定しよう。その場合俺達が四日前にこのクエストを受けた場合。『今回』捕らわれた人達はそもそも住むところは無くならなかった
ここまでだけならいいこと尽くめで、俺達にかかる負担も少ないと思うだろう。……だが実際は違う。むしろ俺達が受ける負担は今回とは比較にならないほどに大きいに決まってる
それは何故だ?……この場合は『前回』の被害者が残っているのだ。それも『今回』とは違い殆どの人が既に犠牲になっている。
つまり沢山の人が奴らによって殺されたと実感出来てしまう。……少なくとも俺はその事実を受け入れることは出来ないだろう
「……モースさんの言うとおりです。それに、それで今回の人達が被害に遭わかったとしても、前回までの人達はどうしようもないですから……」
モースさんの発言に賛同しつつ、俺の考えていた考えの一部を答える
……全てを話すのは止めておこう。こんなことを話してもいい気分にならないのは目に見えている
「……あぁ、それは…な」
俺達四人の雰囲気が徐々に暗くなっていく。そしてその直後に俺達に話しかける声が聞こえてきた
「あの、ちょっといいですか?」
声の主は一人の女性。俺達が牢から最初に助け出した人だった。
「……あ、はい。何かご用でしょうか?」
暗くなった雰囲気を無理矢理振り払い、俺達は女性に視線を移す。俺は今出来る精一杯の表情を作りながら返事をした
「あ、いえ。用と言う程のことじゃないんです。……ただ最後に改めてお礼が言いたくて」
「……礼を言われるようなことはしてないさ。冒険者としての仕事をしただけだ」
特別なことをしたわけじゃないとでも言うようにクルスさんが淡々と応える
「それでも…です。結果として私達は皆さんに助けられたのですから」
さて、果たして俺にこのお礼をされる権利はあるのだろうか。俺は今回盗賊との戦闘で何の役にも立っていない。さらにさっきまで最低なことを考えてしまっている
……駄目だな、無理にでも思考を切り替えなければ、さっきの考えは早く無くしておこう。このまま考えているとこのまま負の連鎖が続くのは確定的だ
「ですが今の私達にお礼として差し上げられる物は何もありません。だからこそ最後にせめてお礼の言葉を……と」
「そう、ならこっちも素直に受け取らせてもらうわ。……村、早く復興するといいわね」
「……はい、皆さん本当にありがとうございました!」
彼女は最後にそう言い残して、ギルドの外へと姿を消していった
……さて、これでクエストは完了したってことか。被害者達が路頭に迷う必要がなくなってよかったていうのになんか釈然としないなぁ
きっとさっきあんなことを考えてしまったのが悪いのだろうけど
「さぁ、私達はこれでお暇させてもらうわ。また何かあったら呼んでちょうだいね」
あ……そう言えば確かにそうだ。アンナさんとモースさんの二人はここでお別れだったな
「あぁ、アンナ、モース。今回は本当にありがとうな」
「気にするな。俺達は仲間だろ?」
「……あぁ、そうだな!」
……いいなぁ、こういう関係。もしもあの三人と一緒にこっちの世界に来ていたら俺達もあんな会話をしていたのだろうか。……いや、考えてても意味ないな。それよりもこれからのことだ。……その前に
「俺からもお礼を。お二人とも、今回は本当にありがとうございました!もしよろしければ今度何かあった時も頼っていいでしょうか?」
「おう、じゃんじゃん頼ってくれても良いからな。嫌なことがあったら話くらいは聞いてやる」
「私も、もし何か聞きたいことがあったらいつでも聞きに来てくれてもいいわ。何かクエストを受けてないときはいつもここにいるからね」
「はい!これからもよろしくお願いします!」
お礼を兼ねたお願いというのはなんだか失礼な気がしないでもないがそんな俺に二人は気を悪くすることも無く、快く了承をしてくれた。
「龍斗、俺達も宿に帰るぞ。今日はなんだか随分と疲れたからな」
「はい、一緒に帰りましょう。……では、お二人ともまた今度、さようなら!」
俺は二人に大きい声でそう言うと、ギルドの扉を開いた
少しだけ歩いた後で俺はあることに気づいた。ギルドの中にレニアの姿が無かったのだ
そのことをクルスさんに聞いてみると、しっかりとその辺りまでユーナさんに聞いてくれたらしく、もう宿に帰らされたとのことらしい
俺達がいない間に喧嘩してないだろうな……追い出されたわけじゃないよなという思いが無いわけでもないが、宿にいるのなら心配することはないしいいか
そしてギルドから暫く歩き、だいたいあと数分で宿に着くと言うところで先程聞こうと思っていたことを聞いてみることにした
「……ところでクルスさんいきなりなんですが、ちょっといいですか?」
「おう、どうかしたか」
「クルスさんはユーナさんのことをどう思ってるんですか?」
そう、この鈍感男は自分に好意を寄せているユーナさんをどう思っているのかということだ。どうしても聞かなければならないってことでもないが、気になることは気になるのだ
「どう思ってるって……そうだな。基本的にはどんな仕事でもこなせる出来る子だなぁと。嬢ちゃんが絡むとアレだが」
「……それだけ?他にも自分がどう思われてるのかなぁとか考えたりは?」
「まぁ嫌われては無いんじゃ無いか?」
駄目だこの人。誰か何とかしてくれ。正直今この場で貴方はあの子に好意を持たれてますよとお節介を焼きたい気持ちはあるが流石に自重しておく
向けられている好意には流石に自分で気づかないといけないと、意味がないと思うからだ
「……はぁ。分かりました」
「何か納得してなくないか?」
正直全く納得してないがこんな話を長々と続ける意味はないのでこの場でうちきっておく
「気のせいです。ほらもう着きま……ありゃ?」
そして宿の入口まで歩き、扉に顔を向けようとした時だった
「どうかしたか?」
「いや、あそこで女の子が……」
なにやら困った様子の少女を見つけたのだ
二ヶ月近くも投稿を遅らせてしまい申し訳ありません。今後は可能な限り更新ペースを早めたいと思います




