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二三話 ~強くなるには~

……まぁ当然のことながら意気込みだけで一位になぞなれるわけがなかった。

 

 ギルドに着く前に何回バテたことか。スタートから数十秒も経てばあっという間に差は開き、案の定俺は最下位だった。……正直諦めて途中から歩いていたのは内緒だ。

 

 「……知ってた」


 ちなみにレニアは一位で修助さんは二位だった。だってレニア凄く足速かったもん。

 

 「やった!一位だよ!」

 

 「龍斗が罰ゲーム決定だな。……俺の分の命令権は嬢ちゃんに譲ってやろう」

 

修助さんがレニアに命令権を渡したが俺にとっては全く関係ないことです。どちらにしろ二回命令されるの変わらないからね。


 「いいの?」

 

 「俺は元から別になにか命令する気なんぞなかったからな」

 

 「ありがとう!」

 

 レニアがなんだか輝くような笑顔になっている。そんなに俺になにか命令したかったのか。

 

 「……何を命令するんだよ。言っておくが精神的にしろ肉体的にしろダメージを負うのは禁止だからな。これからクエストも受けるんだし」

 

 「そんなダメージを負うような酷い命令なんてしないよ!」

 

 「……そうか、それはよかった……何を命令するんだ?」

 

 少なくとも無茶苦茶な命令は出てこないとは思うけど……

 

 「えっとね、ボク今一位取ったじゃない?」

 

 「あぁ、取ったな。それがなにか?」

 

 「うん、せっかく一位を取ったんだからご褒美が欲しいな~って」

 

 ……金を使えということか。ヤバイよ金全然ないよ。どうか安い物でありますように……

 

 「……1000マニスまでなら」

 

 「違うよ!別に何か物が欲しいわけじゃないの!」

 

 なんだ違うのか。じゃあ何が欲しいだろうか?

 

 「どうすればいいんだよ……」

 

 「褒めて!一応大人の人に勝ったんだもん!これは十分に褒めてくれてもいいと思う!それとクルスさんに貰った追加分、撫でて!」

 

 撫でて褒める?そんなことでいいのか。というか撫でていいのか。普通は彼氏が相手じゃない限りは撫でられるのは嫌がる様な気がするんだけど……まさか本当にレニアは俺に気が……いや、理由がないし俺の思い込みだろう。

 

 「……分かった。絶対に怒るなよ」

 

 「流石に自分で言っておいて怒るなんてしないよ?」

 

 「よし、分かった」

 

 正直レニアみたいな美少女を撫でられるとか役得な気がする。正直負けて良かったって思ってしまった。

 

 「……こんな感じでいいか?」

 

 レニアの髪は柔らかいな、というか女の子の髪の毛なんて初めて触ったよ。

 

 「うん、そんな感じ」

 

 「大人相手に勝負してよく勝てたな。凄い凄い」

 

 「むっふっふ~」

 

 ……褒め方が凄く子供扱いな気がするがこれでいいのか。

 

 「……って、今のは完全に子供扱いしてたよね!?もっと別の褒め方して欲しいんだけど!」

 

 まさかの時間差。やっぱり駄目だったか

 

 「足が速くて羨ましいなぁ。俺もそのうちお前よりも速くなってやるよ」

 

 「うん、冒険者をするんだから最低でもボクにぐらい直ぐ追いつけるようにならないとね」

 

 「……多分嬢ちゃんはそこらの冒険者よりは足速いぞ?現に二年近く冒険者やってる俺も嬢ちゃんに負けたしな」

 

 「……冒険者に足の速さとスタミナってあまり関係なかったりします?」

 

 「大いに関係ある。足が遅いとモンスターの討伐不能と判断した時に最低限撤退することも難しいからな。そういう意味ならお前は落第だ。ギルドに来る前に何度もバテてるようじゃ論外だ」

 

 ……結構厳しい言葉を貰ったな、正直凹む。それにしても落第ねぇ。これは本格的にスタミナとスピードを鍛えないとマズいかな……

 

 「はぁ…やっぱりそうですよね。まだまだ体力つけないとだめですよね」

 

 「落ち込むな。ずっと続けてさえいればバテることは先ずなくなるし、足の速さだってそうだ。継続さえすれば基本的な身体能力は確実に身につく」

 

 「……やっぱり努力って大事ですね」

 

 「早く且つ楽に強くなりたいなんて気持ちは誰にでもある。でも本当に強くなりたいなら努力が出来なけりゃ論外だ、これが出来なくなった奴はどんどん腐っていくからな。どうせ自分なんかじゃ……なんて考える奴がいるがそんなのはただの思考停止だ。俺は『最初から諦めるな!自分を否定するな!どうせ諦めるならせめて一ヶ月だけでもやってからにしろ!』って思うね」

 

 ……今の言葉は俺に結構刺さったぞ。

 

 「……や、やっぱりそうですよね。諦めるより先に努力しないと」

 

 「そういうことだ、強くなるために楽をしようとするな。近道なんてないんだから。」

 

 楽をするな、かぁ。これって現代でも言えることだよな。何かを上手くするためにはただひたすらに練習するしかないんだから。

 

 ……まぁ俺は出来てなかったけどな。

 

 「……というかお前はそろそろ嬢ちゃんを撫でるのを止めろ」

 

 ……そういえばさっきからずっと撫でてたな。なんで頭から抜けていたのだろうか

 

 「クルスさんはこう言っているけどレニアはどうしたい?」

 

 「後10分ぐらい!」

 

 ……結構長いな。まぁいいか。役得だし

 

 「ふぁぁぁぁぁぁぁぁ」

 

 「変な声を出すな」

 

 「……勝手に出ちゃったんだから仕方ないじゃん」

 

 「勝手に出たなら仕方ないけど出来れば抑えてくれ、さっきからクルスさんの目が怖い」

 

 「……お前らホントに付き合ってないのか?早く切り上げないとギルドの連中の間で話題になるぞ。というか既に話題になってるぞ」

 

 「「……え?」」

 

 周りの話に意識を集中してみると

 

 「なぁ、あの二人は本当に付き合ってないのか?」

 

 「少なくともクルスは疑いながらも付き合ってはないらしいって言ってたが」

 

 「おいおい、じゃあなんであの坊主は嬢ちゃんの頭を撫でてるんだよ」

 

 「多分ここにいる連中にそれが分かる奴なんぞいねぇだろうな!」

 

 ……マジだ。完全に話題になってる。

 

 「リュート……やっぱりもう離していいよ!」

 

 「そ、そうだな!そうしておこう!」

 

 俺とレニアは慌てて少しだけ距離をおいた。……まぁ確かに女の子が男に頭を撫でられてるところを見たら誤解するよな。俺でもする。

 

 「……やっと離したか。じゃあクエスト受けるために受付に行くぞ。一応今回手順とか見せつつ俺が全部やってやるからしっかりついてこい」

 

 「あ、はい。分かりました」

 

 修助さんについて行き手順を見せて貰ったが特に難しいことはなく、ピンで貼り付けられた内容の書いてある紙を持って行って受付の人に渡すのみだった。

 

 ……あれ?これって結局この世界の文字が読めないとクエスト受けれなくない?

 

 「まぁ、手順はこれだけだ。簡単だろ?」

 

 「……ちょっと耳貸して下さい」

 

 「どうした?」

 

 修助さんの耳元でホントにささやくような声で質問した。

 

『あの?今の手順だと字が読めないと無理ですよね?昨日はこの世界では文字が読めない人も沢山いるって言ってましたけどそういう人はどうすれば……』

 

『あ~そういえばそうだったな。安心しろ、普通は受付の人にどんなクエストがあるか聞くんだよ、そうしたら持ってきて読んでくれるからそこから決めるんだ。だが文字が読める奴はその手順は踏まずに直接持ってくるんだ。』

 

 ふむ、要するにやっぱり文字は読めた方が余計な手間を省けていいってことだな。

 

『じゃあ昨日も言いましたけどこっちの世界の文字を教えて下さい』

 

『……じゃあクエストが終わったら簡単に教えてやるよ。』

 

『ありがとうございます!……だいたいどれぐらいで覚えられますかね?』

 

『お前次第ではあるが……そうだな、一ヶ月もあれば覚えれるんじゃないか?こっちの世界の文字は日本のひらがなとかカタカナとかを崩した感じだし』

 

 一ヶ月ぐらいねぇ……ひらがなとかカタカナを崩した感じってことは特徴さえ掴めばいいってことかな。

 

『だが形は似てるが全く違う文字もあるからその辺は注意しておけ』

 

『はい、分かりました』

 

『ならいい、……そろそろ出発するから嬢ちゃんにも伝えろ』

 

『了解です!』

 

 俺はレニアに出発することを伝えるために振り向いた。

 

 「あ、話は終わった?」

 

 「あぁ終わったよ。待っててくれてありがとな。今から出発するぞ」

 

 「オッケー、今からね、ところでさっきは何の話をしてたの?」

 

 「文字についてだ。恥ずかしいことに俺は文字が読めないからな、クエストが終わったら教えて貰うんだ」

 

 「……へぇ、じゃあボクも一緒に教えて貰おうかな」

 

 あれ?気のせいかな、なんだか少し機嫌が悪くなった気がするんだけど……

 

 「……もしかして怒ってる?」

 

 「気のせいだよ。ほらもう行くんでしょ?ならさっさと準備!」

 

 完全に怒ってるじゃん!……何故かは分からないけどここで理由を聞いたらまた喧嘩になりそうだし気にしないようにしとこう。

 

 「準備もなにも、既にこれで準備出来てるんだが」

 

 「そうだぞ嬢ちゃん。これ以上の準備なんて無理だぞ?というかそもそも採取クエストなんだしそんなに準備する必要もないぞ」

 

 「二人ともうっさい!」

 

 「「理不尽!」」

 

 レニアはそういうと真っ先にギルドの外へ飛び出した。

 

 「……どうします?」

 

 「どうするもなにも走って追いかけるしかないぞ」

 

 「まぁそうですよね、後ろをついて行くので前お願いします」

 

 「任せとけ。お前もペース配分考えろよ」

 

 「了解です。それじゃあ行きましょう」

 

 そして俺達もレニアを追ってギルドを出たのだった。

 

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