二二話 ~採取クエストについて~
俺達は森を抜けて街に向かって歩いていた。だが俺だけは痛みに耐えている。
「……痛い」
原因はレニアの全力ストレートがみぞおちに見事にクリティカルヒットしたからだ。でも自業自得だから文句は言えない。
「……ごめん、ちょっとやり過ぎたかも」
「気にするな、これが理不尽な一撃だったら流石に文句言ってるけど今回のは自業自得だし。……それでももう少し手加減して欲しかったけどな」
「根に持ってる?」
「別に持ってないぞ。自業自得だし」
前言撤回する。文句言えないとか言っといて口から文句でてるわ。クズだなぁ俺は。
「でも今度からはもう少し軽くして下さい。さっきのはマジで吐きそうだったから」
「……その今度がないようにしたいんだけど」
実際そうだよなぁ。今度が来ないように気をつけよう。もうみぞおちクリティカルは嫌じゃ!
「……お前ら、そろそろ街に着くからな。とっとと仲直りしろよ」
「そうですね。このままこの雰囲気なのはしんどいですし」
考えてみれば、お互いに謝りはしたが顔を合わせていなかった。謝るなら顔をしっかり合わせるのが筋だろう
「レニア、さっきは下着姿見て本当に悪かったな」
「わざわざ内容言わないで!思い出すだけでも恥ずかしいから!」
うん、俺ってやっぱりデリカシーがないね!こういうのは言わない方がいいだろうに。
「……でもボクも思いっきり殴っちゃってごめんね。しかも二回も」
「いや、だからあれは俺が完全に悪かったんだって……」
「……でも別に殴る以外にもあったような気がするし」
……多分一回目は殴られなきゃもっと酷いことになった気がする
「もうホントに気にすんなって!あれは口が勝手に動いたとはいえ完全にセクハラ以外の何物でもなかった!なら怒るのも殴るのも当然だ!」
「でも……」
「このままだとまた別の方面で喧嘩になりそうだしそこらで終わらせとけ。お互いに謝ったんだからそれでいいだろ」
……確かにこのままだとお互い自分が悪いって言い合って結局喧嘩になりそうだ。
「それもそうですね。ありがとうございます、クルスさん。レニアもそれでいいか?」
「……それでいいよ」
なんだか納得してない感じだけど……取りあえずこれでいいかな
「クルスさん。街に着いたら何のクエストを受ければいいですか?」
「先ずは気楽に採取系のクエストがいいんじゃねえか?殺しに慣れたかの確認は道中にモンスターに遭遇したらでいいだろ。」
それもそうか。やっぱり先ずは採取のクエストだよな。本当にモンスターを討伐出来るか分からない状態で討伐クエストを受けるのはマズいし。
「まぁ安心しろ。俺もついて行ってやるから」
「ありがとうございます!……レニアもついてくるか?」
「……いいの?」
今回は討伐クエストじゃないし、採取クエストなら登録しなくても受けられるらしいしな
「勿論いいぞ。採取クエストなら安全なんだろ?」
「確かに安全だけど……迷惑じゃない?」
「迷惑なんかじゃないぞ。むしろついてきて採取クエストについて教えてくれると助かる」
俺がそう頼んだ瞬間にレニアの表情がパァッと明るくなった
「しょ、しょうがないなぁ。ついてく!今更駄目って言っても無駄だからね!」
……ちょろい。やっぱりレニアはちょろい。あれ?今気付いたけど昨日レニアは採取系はモンスターが出ない所にって言ってなかったっけ?さっきの修助さんの言い方だとモンスターが出るらしいんだけど……
「……あの、すみませんクルスさん?レニアが昨日採取クエストにはモンスターが出ない所に行くって言ってましたけど、本当に出ないんですか?」
「まぁ登録してない奴は基本的に浅い所にしか行けないからな。そのルートだとモンスターには会わない。登録者用の深い所に行けば話は別だがな」
あぁそういうことか。確かに浅ければモンスターに出会う確率はかなり低いだろうしな。
「その場所にいるモンスターって強いんですか?」
「……襲っては来るが全く強くないぞ。多分嬢ちゃんでも倒せる。レベルも1どころか0.5だしな」
「0.5!?」
まさかの少数レベル。1よりも低いレベルなんてあったのか……というか殺しの特訓ならそこに行った方がよかった気がする。
「なんでそんなに弱いんですか!?」
「俺も気になってギルドに聞いてみたが。……どうやらその場所には余程のことがない限り破られない強力な結界が張ってあるらしい。」
結界?結界ってモンスターを寄せ付けないようにっていうイメージがあるんだが……
「ちょっとすみません、結界があるならその中にモンスターは沸かないんじゃ?」
「それを説明するために先ず言っておかないといけないことがある」
「はい、何かあるんですか?」
「これと同じ結界は実は街にも張ってある。昔は街の中でも容赦なくモンスターは現れたらしいからな。結界を張ったお陰で街の中にはモンスターは現れなくなったんだ。でもその場所だけは変わらずにモンスターが沸いているんだ」
まぁ全部ギルドで聞いたんだけどな。という言葉を付け足して修助さんは話を終えた。
それにしてもその場所だけは、ねぇ。いろんなアニメとか小説とか読み漁った俺としてはいつか悪いことが起きるパターンじゃないかと思う。一応この結界がいつ張られた物なのかは聞いておこう
「あの……その場所に結界が張られたのっていつなんですか?」
「知らん。少なくともあのギルドが設立された時には既に張られてたらしい。多分その辺なら嬢ちゃんの方が分かると思うぞ」
まぁ考えてみれば確かにそうだよな。俺と修助さんは日本から来た異世界人だけどレニアだけは純粋に元からこっちの世界にいるわけだしな
「……お父さんとお母さんに聞いたら少なくともボクが産まれるよりもずっと前からあったとしか言ってなかったけど、ギルドが設立される前なら少なくとも30年以上前だとは思う」
「そういう訳だな。30年以上前から張られているがモンスターは一般人でも殆ど無傷で倒せるほどに弱いし、それ以外は特に何も起きてないから放置されてる訳だ。だがいくら弱いと言っても相手はモンスターだからな、絶対に怪我をしない訳でもないから一般人は基本的に浅いところまでしか行かない訳だな。」
……30年以上前か。これが小説やアニメとかなら近いうちにドンピシャで良くないことが起きるんだが……まぁそういうのは主人公限定だし、俺は主人公と言えるような人間ではないし関係ないだろう。
「ありがとうございますクルスさん!レニアもありがとな」
「気にするな、当然のことだ」
「どういたしまして!分からないことがあったらボクにも色々聞いてもいいんだよ?」
修助さんは本当に当然といった風だが、レニアは物凄くドヤ顔になっている。
「そうだな、今度からはレニアにも色々聞くよ」
「うん、そうしてくれたら嬉しいな。正直クルスさんにばっかり聞いてボクには何も聞いてくれないの不満だから」
……まぁ確かに友達なのに困ったときに全く頼りにされないのは結構精神的に辛いよな。多分だが日本にいた時に俺の「アレ」がばれたときの三人もきっと辛かったのだろう。
「……悪かったな、これから気をつけるわ」
「うん!でも分からないことは答えられないからね。それよりも街が見えてきたよ!」
まぁそりゃあそうだろう。俺だって分からないことは答えられない。
「そうだな。取りあえずもう街に着くしギルドに真っ直ぐ向かおうか」
「……ギルドまで競争するか?」
「大人げない!ガキが大人と競争して勝てるわけないじゃないですか!しかも俺自身も体力ある方じゃないし!」
「……体力作りも込みで言ったんだがな。競争の方が盛り上がるかと思ったが、やっぱりダッシュに変更するか?」
「そういうことなら。ダッシュしましょう」
「あ、じゃあボクも参加する。……ふっふっふ、もしかしたらボクが一番最初に着いちゃうかもね」
……まぁ確かに少なくとも俺には余裕で勝てるだろう。逆に言えば俺が一番最後になることは確定してるわけだ。
「おっと嬢ちゃん、大人をなめてはいけないぞ。この勝負は俺が貰う」
……なんかただダッシュするだけだった筈なのにいつの間にか競争する流れになってるんだけど。
「ボクだって足の速さには自信があるんだからね!そんなに言うなら一番最後だった人は罰ゲームにしようよ!」
……ねぇどうしよう、このままじゃ完全に俺が罰ゲーム確定なんだけど。
「あの、すみません。競争になるんだったら俺は辞退させて頂いても……」
「「駄目だ(よ)」」
「知ってたよ畜生!」
というか三人で喋ってたらいつの間にか街の門の前まで来てたな……ギルドにはこのまま真っ直ぐ進めば着くけど絶対に途中でバテるって!100%負け確定だって!
……こうなったらもう割り切るしかない。取りあえず罰ゲームの内容を聞いておこう
「あの……罰ゲームって何を……?」
「1位と2位の言うことをなんでも一つだけ聞くって言うのはどうかな?」
「まぁ確かに罰ゲームと言えばそれが定番だな。それにしようか」
本当に定番中の定番だな!これって人によってはマジでキツいことを言われるからな。少なくとも悠斗達とやったときは三人とも俺達に向かってエロ本を感情込めて朗読しろって言われたからな!お陰で三冊も朗読する羽目になったわ!
「……あまりキツくないのにして下さい」
「ねぇリュート!やる前から諦めちゃ駄目だよ!何事も先ずは挑戦しないと始まらないんだよ?」
「……俺が今こうなってるのは間違いなくお前らが原因なんだけどなぁ!特にお前が罰ゲーム言い出した時点で心が折れたんだよ!」
「そ、それはごめんなさい。でも最初から諦めるのはやっぱり駄目だと思うんだよ」
……確かにやる前から諦めるのは悪い癖だよなぁ。日本にいた時もこの悪癖のせいで色々病んだわけだしな。
「……分かった、取りあえずやってみる。あぁやるよ!やってやろうじゃねぇか!」
「うん!その意気だよ!」
やるなら一位を取ってやろうじゃないか!
「クルスさん!覚悟完了です。早く始めましょう!」
「応!手加減はしないからな!大人げないだろうが本気を出してやるよ」
「むしろ手加減なんてしてきたらキレますよ!今の俺は恐らく過去最高潮に熱くなってますので!」
「じゃあボクがスタートって言うね!……3、2、1。ゴー!」
俺達はギルドの向かって一斉に走り出した。目指すは一位のみだ!




