二時間目を待ちながら(44)
ある日。二時間目を待ちながら。
心春が夏海の所にやってきました。
「ねぇ、夏っちゃん。昨日満月だったね」
「あっ、そうなんや?」
「すごく綺麗だったよ」
「へぇ、見たかったなぁ」
「あんまり綺麗だったから、つい興奮して『オオカミ男』になっちゃった、ガオ~!」
「へぇ~。つい『男』になったか」
「『オオカミ男』だよぉ!」
「うちも満月見て『かぐや姫』になってみたかったなぁ」
「なんで夏っちゃんだけそんな良い役なの?」
「え? 想像は自由やろ? それに『オオカミ男』は心春が自分で言うたんやん」
「まぁ、そうだけど」
「オオカミ男に変身して発狂する心春。そしてかぐや姫のうちは月へと帰る」
「二人の接点がないよ」
「あ~哀れな心春。うちは月で暮らすわな」
「すごく上から目線」
「実際月に登るからうちは上におるもん」
心春は夏海にかぶりつくフリをしました。
「がぶぅ~!」
「コラ! うちは空におるからかぶりつかれへんの!」
そこに冬菜がやってきます。
「楽しそうですね? 何の遊びですか?」
「おっ、冬菜」
「がぶぅ~!」
「いや、心春。もうええから」
二人は冬菜に説明しました。
「え? 心春さんがオオカミ男で、夏海さんがかぐや姫ですか」
「改めて冷静に言われると恥ずかしいな。ただ心春の遊びに付き合っとるだけで。実際うちはかぐや姫なわけやないで?」
「そうですよね」
「冬菜、普通のリアクションやん。そこは『えっ! そうだったんですか!!』って冗談で驚いてくれらな」
「あっ、すいません! えっと、今度は絶対に驚きます!」
「驚く予定を立てるのもおかしいけどな」
今度は心春が冬菜に話しかけました。
「ねぇねぇ、ふーちゃん。私ね、実はね、かぐや姫じゃなかったの。ごめんね、今まで紛らわしくて」
冬菜はわざとらしく驚いて言いました。
「えっ! そうだったんですか!」
「おっ、うまいやん。今のは良かったで、冬菜」
冬菜は嬉しそうに言います。
「なんだか少し分かってきたように思います!」
「後は言うタイミングかな? あっ、そうそう、ちなみにかぐや姫はうちやで。心春はオオカミ男」
「もう、夏っちゃん。それはさっきの話でしょ? そんな事言うとまたかぶりつくよ!」
「ほんまのオオカミ男やん」
「オオカミ男じゃないもん! 普通の女の子だもん!」
そこに冬菜が口をはさみます。
「え! そうだったんですか!」
心春は机の上にパタンと倒れてつぶやきました。
「不意打ちだよ、それは」
「やったな、冬菜。オオカミ男を退治した」
二時間目開始のチャイムが鳴りました。




