二時間目を待ちながら(45)
ある日。二時間目を待ちながら。
窓際に座る千秋は一人で外を眺めていました。大きな入道雲が空に浮かんでいます。
「(雲の、上にも、天国とか、あるのかな?)」
雲はとてもゆっくりと動いていました。
「(だとすると、あそこにも、色んな、生き物が、いるのかな?)」
周囲は生徒達の賑やかな声で溢れていますが、ぼーっとする千秋にはほとんど聞こえていません。
「(化け物、みたいなのも、いるのかな?)」
全く身動きせず、千秋は空を眺め続けています。
「(それとも、この、クラス、みたいに、平和かな?)」
平穏な時間の中、ふと千秋は思いました。
「(あれ? もしかして、あっちからも、こっちを、眺めている?」
千秋の表情はいつものように全く変わりません。
「(だと、すると、空を見てる、私に、気づいている、かも)」
千秋は一瞬、こっそり窓の外に手を振りました。たまたま千秋の教室の前を歩いていた夏海は、千秋が外に手を振る様子を見ました。教室に戻って夏海は心春と冬菜に話しました。
「千秋って不思議やな」
「え? 夏っちゃん。それは今更だよ?」
「はい。千秋さんは昔からずっと不思議な人です」
「まぁ、せやけど・・・・・・」
夏海は空を見上げます。千秋が見たのと同じ、大きな入道雲が浮かんでいます。
「何に手を振ってたんやろう?」
夏海の言葉に、心春と冬菜の頭には『?』の文字が浮かびました。
「たまには、千秋のクラスに遊びに行ったらなあかんな。来てもらってばっかりやったからな」
「そう言えば、そうだね。ちーちゃんのクラスにも遊びに行ってみたいよね」
「わ、私も是非行ってみたいです!」
「じゃ、今から行くか?」
「え? 今から? うん。行ってみる!」
「はい! 私も!」
「よし! 決まりや。行くで!」
そこに丁度、千秋が現れました。
「あれ? 千秋やん!」
「あっ、ちーちゃん。噂をすれば・・・・・・」
「もう、千秋。なんで来たねん?」
千秋は一瞬言葉に詰まった後、言いました。
「じ、じゃ、帰る」
千秋は引き返そうとしますが、夏海が千秋の手をつかみます。
「なんで帰るねん!」
「え? どうしろって、言うの?」
「今から三人でちーちゃんに会いに行こうとしてたの」
「私に?」
三人が頷きました。千秋はほんの少し恥ずかしそうに目をそらしました。
心春が笑顔で言います。
「さぁ、ちーちゃん。退却! 退却! 私達がお邪魔するんだから!」
夏海が言いました。
「あぁ、でも。次の休み時間にしよか?」
「えっ!? なんで?」
心春と冬菜が不思議そうに夏海の顔を見ます。
「なんでって、ほら。もうすぐ・・・・・・」
二時間目開始のチャイムが鳴りました。




