二時間目を待ちながら(40)
ある日。二時間目を待ちながら。
心春が冬菜の所にやってきました。
「おはよう、ふーちゃん」
「あっ、おはようございます」
心春は冬菜の机の上を見ると、おにぎりの絵の下敷きがありました。
「あれ、ふーちゃん。これ、おにぎり?」
「この下敷きですか? はい。おにぎりです」
「おぉ! ふーちゃんもおにぎり好きなんだ?」
「え? そうですね。おにぎり好きですよ?」
「ちょっと待っててね」
「はい」
心春は自分の席に戻って、黄色い分度器を持ってきました。
「見て、ふーちゃん!」
「えっと、分度器ですか?」
「うん。黄色いでしょ?」
「はい。珍しいですね」
「何かと似てない?」
「何か、ですか?」
冬菜は下敷きと分度器をじっと見て考えます。
「ほら、お弁当に持って行く食べ物といえば、おにぎりと?」
「梅干し? ですか?」
「おしい! 梅干しもいいけど、黄色くてカリカリする物といえば?」
「あっ、たくわんですね?」
「正解! ふーちゃんのおにぎりと私のたくわんがあれば、もうどこでも行けちゃうよ」
冬菜はクスクスと笑って言いました。
「そうですね。どこでも行けますね」
そこに夏海がやってきます。
「おはよう」
「おはよう、夏っちゃん」
「おはようございます」
「何?『どこでも行ける』って、どっか行くの?」
心春が分度器と冬菜のおにぎりの下敷きを持って言いました。
「これとこれさえあれば、どこでも行けるね、っていう話をしてたの」
「その分度器とその下敷きがあれば、どこでも行ける?」
心春が『うん』と頷きます。
「あぁ、分かった。分度器で方角測って、下敷きで煽りながら空飛んで、どこでも行けると言う訳か?」
心春が説明します。
「具体的に行くんじゃなくて、気分的に行くんだよ」
「そりゃそうやろう? 実際に分度器で方向を測れれへんし、下敷きで空飛ぶって、もはや論外やん」
「夏っちゃんが言ったんだよ?」
「え? うちの推測間違えてた?」
「全然、違う。全然」
「なんで『全然』二回言うたん? でも何? 分度器と下敷きでどこでも行ける? どういう事?」
冬菜がアドバイスしました。
「夏海さん。ヒントはこの下敷きの絵と、分度器の色と形に隠されています」
「下敷きの絵? おにぎりか? それから分度器の色と形? ん?」
悩み続ける夏海を見かねて、心春は正解を言いました。
「夏っちゃん、答えは『たくわん』だよ」
「たくわん? おにぎりとたくわん?」
心春と冬菜は頷きます。
「それがヒントなん?」
「違うよ。答えだよ」
「え? それでどうやってどこでも行けるようになるの?」
心春と冬菜が言います。
「だから『気分的に』」
「クイズみたいに言うと分かりにくいですよね。かなり飛躍していますが、おにぎりとたくわんがあれば、遠足みたいに、どこかに出かける気分になりそうで」
「うん。言いたい事は大体分かった。でも納得できん。だって水筒がないやん」
心春が言いました。
「だから『気分的』にだって」
夏海が断言します。
「水筒が無かったら気分も乗れへん!」
二時間目開始のチャイムが鳴りました。




