二時間目を待ちながら(36)
ある日。二時間目を待ちながら。
心春が夏海の所にやってきました。
「ねぇ、夏っちゃん。昨日ね夜道を歩いていたらね、知らない人が後ろを歩いていて」
「うん。追いかけられた?」
「ううん。ただ後ろを歩いていただけなんだけれど、夜中だし、知らない人だろうし、怖いな、って感じたの」
「まぁな。出来るだけ夜中とか一人で歩かんことやな。その人に悪気はないんやろうけど、やっぱり怖いな」
「うん。その後ね、いきなりその人が走ってきて、思わず振り向いたの」
「実は知ってる人やったとか?」
「ううん。やっぱりね、知らない人だったの」
「まぁ、ほとんどの確率でそうやろな」
「どうしよう! って思って」
「なんで?」
「だって後ろからいきなり走ってくるんだよ!?」
「まぁ、でも、どうしようもないやん。極端な行動したら相手の人にも失礼やしな?」
「そう。あの瞬間はどうしようもないよね。相手に自分の運命を委ねられるよね?」
「そんな大袈裟なものか? まぁ、万が一、襲われたりすることもないとは言い切れんからな」
「うん。私を襲ってもどうしようもないのに」
「ほんまや」
ちょっと心春はムッとします。
「え? だって自分で言うたんやん!」
「そうだけど、そうなんですけど。『そんなことないよ』って言ってくれてもいいんじゃない?」
「『そんなことないよ』って言って欲しい訳? なんや面倒くさいな。じゃ、そんなこと自体ないよ」
「『そんなこと自体ない』って、私が襲われる事自体ないってことになっているよ! こう見えて『かわいい』とか言われる事もあるんだから」
心春がムスッとして言うと夏海が言いました。
「そんなことないよ」
「『そんなことないよ』の言うタイミングがおかしいよ!」
「まぁ、お互い暗くて顔まで分からんからな。襲われる可能性はある」
「フォローになっていない分析をどーも、ありがとうございます」
「でも、なんで心春は夜中にウロウロしてたん?」
「牛乳が無かったから買いに行ってたの」
「夜中にわざわざ?」
「うん。だって飲みたかったんだもん。お風呂上がりに」
「我慢しいよ! 一日くらい。そんな危険をおかしてまで買いに行かんでも」
「そうだね。これから我慢する。でも、昨日出会ったあの人ももしかして牛乳を買うためにわざわざ・・・・・・」
「絶対に無い!」
「言い切れる?」
「うん。その人に確かめてもいいわ」
「知らない人だから、もう確かめるなんて無理だよ」
「昨日と同じ場所で夜中に待ち伏したらいいねん。前を通ったら追いかけて尋ねてみたら」
「私が逆に驚かせちゃうよ!」
二時間目開始のチャイムが鳴りました。




