二時間目を待ちながら(35)
ある日。二時間目を待ちながら。
心春と夏海と冬菜の三人がいました。心春が冬菜に言いました。
「ふーちゃん、この前ね、夏っちゃんと山に登ってきたの」
「山ですか! すごいですね、お二人とも」
夏海が言いました。
「山言うてもハイキングみたいな低い山やけどな。うちら二人とも実は山好きで時々登るねん。うちは気分転換に、心春はダイエットのために」
心春がすかさず言います。
「ダイエットのためじゃないもん! 自然を味わうためだもん」
「そっか。でも心春、山歩いたからちょっと痩せたんとちゃうか?」
心春は嬉しそうに言いました。
「え? ほんと? どのあたりが? どこ?」
「腰とか引き締まったんとちゃう?」
「そう? 痩せた? そう見える?」
夏海が冬菜に説明しました。
「と、まぁ、こんな風に。小春はダイエットのために登ってるみたいやねん」
「ひどい、夏っちゃん!」
「心春が正直に言わへんから」
「でもでも、私、ほんとにちょっと痩せたと思わない?」
心春はくるりと一回転すると、夏海が言いました。
「そうなん?」
心春はガクッと膝を付きました。夏海は冬菜に尋ねます。
「冬菜も一回登ってみる?」
「あっ、はい。是非。でも、体力が少し心配です」
「しんどい時もあるけど、ゆっくり登ったら大丈夫やから」
「はい。登る前に、少し練習をしておきます」
「練習? どんな?」
「えっと、そうですね。例えば・・・・・・ あっ、滑り台を下から上に登っていくとか」
「パンツ見えるで?」
「せ、制服のままでは練習しません! ちゃんとジャージに着替えます」
「一人でジャージに滑り台、それも恥ずかしいで? しかも危ないし」
「それでは、ジャングルジムで」
「あんまり山登りと関係ないような」
「そうですね。困りました。砂場で山を作っても、小さすぎて練習にならないでしょうし」
冬菜は、自分で作った砂山を一またぎで簡単に越えてしまう姿をイメージして、何だかおかしくて笑ってしまいましたが、
「公園以外の場所はないのか!」
夏海にツッコまれて慌てました。
「す、すみません! 公園以外は車とか自転車とか危険がいっぱいで」
「ビビリ過ぎや! でも、特に練習せんでも大丈夫やって。ゆっくり登ろ」
冬菜が笑顔で答えました。
「はい。お願いします」
夏海は心春に言いました。
「じゃ、決定やな。なぁ、心春。今度三人で登ろ」
心春が頷いて言います。
「了解! でも、何グラムかは減ったんだよ?」
夏海は首を傾げます。
「何が何グラムなん?」
冬菜が夏海の耳元で囁きました。
「あの、体重の話だと思います」
「まだその話してるの!?」
夏海は驚いたものの、すぐに気を取り直し、心春を気遣います。
「うん、まぁ。ほんま体重減ってると思うで」
冬菜も続けます。
「はい。夏海さんの言う通り、体重減ってるように思います」
夏海が少し面倒くさそうに繰り返しました。
「減ってる、減ってる。体重、ほんまに。体重減ってるよ」
心春は怒って言いました。
「もう! 『体重、体重』って、私どんなに太ってるの! って思われるじゃない!」
夏海は心春のお腹を指して言いました。
「どんなに太ってるって、こんなに太って・・・・・・」
冬菜は慌てて夏海の口を手で塞ぎます。
「なっ、夏海さん!」
二時間目開始のチャイムが鳴りました。




