二時間目を待ちながら(33)
ある日。二時間目を待ちながら。
心春がシャーペンの上に付いている鎖付が付いたマスコットキャラクターをクルクルと高速で回していました。夏海がやってきます。
「何回してるの? 心春」
心春は回すのを止めて夏海にシャーペンを見せました。
「ほら」
鎖の先には雪だるまのキャラクターがあります。
「私のお母さんの実家が山形なんだけど、この前、サクランボと一緒にこのシャーペンも送ってくれたの」
「ふーん。ええなぁ。サクランボかぁー」
「これはシャーペンですけど」
「見たら分かるよ」
「このシャーペン、いいでしょ? すごく気に入ってるの」
「山形県って言うたら、すごいんやろな?」
「うん。すごいらしいよ。体の半分以上が埋まる事もあるんだって」
「へぇ、すごいな。サクランボ」
「え? 雪だよ」
「雪? そうか。雪も多いやろからな」
「うん」
「ちょうど今頃なんや?」
「7月だから雪なんて降らないよ」
「雪じゃなくて」
「え? あっ、サクランボの事? そうだね。今頃だと思う」
「ふ~ん、今頃か。食べ頃かぁ。そっかぁー」
心春はちょっと呆れた顔で夏海を見ました。
「実はね、夏っちゃんにもサクランボ食べてもらおうと思って・・・・・・」
心春の会話の途中でしたが、夏海が割って入ります。
「え? そうなん? いや、なんか悪いわ~。ほんまにええの? うちサクランボ大好きやねん! もしかして知ってた? ありがとう!」
「持ってきたんだけど。好きなのも知ってたから。でも、なんとなくその気が薄れてきてるような・・・・・・」
「おっ! 心春! そのシャーペンめっちゃいいやん! 雪だるまめっちゃかわいい! ええなぁ! 羨ましいわ! 心春、羨ましい!」
夏海はわざとらしくシャーペンを褒めました。心春の目が更に細くなります。
「いいよ。そんな不自然な」
「いやいや、悪い。心春はシャーペンの話をしたかったんやもんな? ええと、そのシャーペンはすごいわ。うん、すごい」
「ほんと?」
「うん!」
「どの辺が?」
「『どの辺が?』ときたか。どの辺やろな? まぁ、その雪だるま、っぽいやつ?」
「雪だるまだよ」
「その雪だるまが、なんて言うか、上手に作られてると、思うわ」
「へんてこな顔がなんか面白いでしょ?」
「へんてこな顔? そうなん?」
ここにきて、ようやく夏海はシャーペンをしっかりと見ました。
「あれ? ほんまやん! めっちゃ、かわいいやん!」
「だから、さっきから言ってるでしょ?」
「ほんまかわいい! っていうか、顔が面白~い!」
「でしょ?」
「なんか、うち、サクランボいいから、このシャーペン欲しくなってきた!」
とても嬉しそうに夏海は心春の顔を見ながら、また同じ事を言いました。
「欲しくなってきたぁ!」
「え? ほんとに言ってるの?」
「うん。ほんまに欲しい」
一瞬、心春は沈黙してから言いました。
「だ・・・・・・ 駄目だよ!」
「いいやん! 心春のケチ!」
「ケ、ケチじゃないもん! サクランボを食べてもらおうと思って持ってきたもん!」
「サクランボは今回、我慢する! このシャーペンのために我慢する!」
「駄目だよ! 夏っちゃん! これ私のだよ! あげないよ!」
「だっ! だって! 心春がうちにこんなかわいいもん見せるから悪いんやん!!」
「ぎゃ、逆ギレ!?」
二時間目開始のチャイムが鳴りました。




