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二時間目を待ちながら  作者: 白上 しろ
28/45

二時間目を待ちながら(28)

 ある日。二時間目を待ちながら。


 心春が必死に自分の背中に手を伸ばしますが届きません。夏海がやってきました。

「何? 柔軟体操?」

「せ、背中がなんだか、痒くて、こう、掻こうとしてるんだけど……」

「届けへん訳?」

「うん」

「うちが掻いたろか?」

「ほんと? ありがとう」

「どの辺なん?」

「背中の真ん中の下の方」

夏海が心春の背中を掻きました。

「ここ?」

「もうちょっと下。そう、その辺」

「ここか、よし」

いきなり夏海は心春の制服をめくり上げました。

「うわっ! ちょっ! ちょっと! 夏っちゃん!」

「何にもなってへんで?」

「夏っちゃん! いきなり恥ずかしいよ!」

「掻く前にどないなってるか、見なあかんやろ? むやみに掻いたら悪化するかも知れへんし」

「まぁ、そうだけどぉー」

「見た目は何もないから、大丈夫やと思うわ。でも掻かん方がええな」

「え? なんで? じゃ、どうしたらいいの?」

「我慢する」

「無理」

「我慢する」

「だって、かゆ……」

心春の言葉を遮って夏海は言いました。

「我慢する」

「分かりました。我慢します」

「そのうち治るわ。急に背中痒くなる事はうちもあるけど、ちょっと掻いたら治るから」

「『掻く』って、夏っちゃん、我慢してないじゃない?」

「え? だってうちは痒い背中に手が届くもん。ほら」

夏海は実際にやってみせました。本当に手が届いています。

「なー……」

「(なー?)」

「なんかずるいよ。夏っちゃん」

「仕方ないな。じゃ、掻いたるわ。この辺やったな?」

「うん。そこそこ」

しばらく夏海は心春の背中を掻いてあげました。

「ありがとう。夏っちゃん。もう大丈夫みたい」

「おっ、そうか。そりゃ、よかった。はぁ~、うちもなんか知らんけど肩が凝ったな」

夏海がわざとらしく言いました。

「じゃ、今度は私が夏っちゃんの肩をもんであげる」

「そう? 今のは冗談やったんやけど」

「私、小さい時によくおばあちゃんの肩をもんであげてたの。だから肩もみは上手だと思うよ?」

「そっか。じゃ、一回もんでもらおうかな?」

心春が席から立ち、場所を夏海と入れ替わりました。

「なんか心春に肩もんでもらうって、恥ずかしいな」

「えへへ、リラックス。リラックス」

「はいはい」

心春は夏海の肩をもみ始めました。

「いっ! 痛い! 痛い!」

「え? まさか? いつもおばあちゃんにもこのくらいで揉んでたんだよ。いつも『心春は揉み方が上手だね』って言ってくれてたもん」

今は亡き祖母の面影を思い出している心春に、夏海は今更止めてくれとは言えなくなりました。

「そ、そうなん? でも、痛っ! いや、まぁ、気持ちいいよ……」

「でしょ? 懐かしいなぁ。こうして肩もみするの。毎日のようにやってたもん」

「ふ~ん」

「おばあちゃん、肩凝ってるね」

「お、おばあちゃん!? うちがおばあちゃん? まぁ、しゃーないな。今回だけやで。せやろう? うち、肩すぐ凝るねん。痛いっ!」

「心春がしっかりほぐしてあげるね」

「そりゃ、どうも。しかし、肩は痛いわ、おばあちゃん呼ばわりされるわ、なんで うちこんな目に遭ってるんやろ? 痛いっ! せや、心春、うちも後でもんだろか?」

「ううん。いいよ」

「なんで? 遠慮せんでもいいやん」

「だって、おばあちゃん、肩もみ下手だもん」

「そーですか。痛いっ!」


二時間目開始のチャイムが鳴りました。


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