二時間目を待ちながら(27)
ある日。二時間目を待ちながら。
心春が夏海の所にやってきました。
「夏っちゃん。昨日はありがとう。助かったよ」
「あぁ、靴ね。いいよ、そんな何度もお礼言わなくても。予備の運動靴があったからな」
「夏っちゃんは用意周到だね」
「そんな時のための用意じゃないけど。でも探したけど、結局、靴は見つかれへんだな」
「うん」
「一体どこに飛ばしたねん?」
「う~ん」
「ほんまに悩んどるな」
心春は急に明るい声で言いました。
「もしかして、月まで飛んでいったのかな?」
「あぁ、もう現実逃避? 靴は諦めたんやな?」
「諦めてないよぉ」
「うん。じゃ、仮に靴が月まで飛んで行ったとして、それをどうやって取りにいく?」
「やっぱり止めよう、その話。そんな気分じゃないし」
夏海が驚いて言いました。
「心春が話を振ったんやろう!」
「普通、月まで飛ばないし」
「だから、心春が!」
「絶対どこかにあるはずなんだよ」
「何気にスルーしたな」
「誰かが拾ってくれたのかな?」
「誰が靴を、しかも片方だけやのに、拾ったりする?」
「うん。どこかの心優しい人が届けてくれたりしないかな?」
「まぁ、そんなに靴が大事やったら、もう天気予報を靴飛ばしなんかで占ったりせえへん事やな」
「どこかの心優しい人が届けてくれたりしないかな?」
「なんでその台詞を引っ張るねん? 期待してるんか? まさかシンデレラみたいな事を・・・・・・」
「まさか。だって白馬の王子様が学校までやってきたらおかしいでしょ?」
「王子様? 心春の話自体、もうすでにおかしいわ。現実逃避、第二弾やな」
冬菜がやってきました。
「あの、心春さん」
冬菜の手には、片方の靴がありました。
「これ、今、千秋さんが持ってきてくれたのですけど」
「あぁ!」
心春が驚きと喜びの声を上げました。
「心春さんのですね?」
「うん! そう、そう! 私の靴だよ! ありがと~」
「いいえ、お礼は千秋さんに言ってあげてください」
夏海が言いました。
「そっか、じゃ、千秋が心春の王子様やな」
冬菜がキョトンとして言いました。
「え? 王子様? 千秋さんが? 心春さんの?」
「靴を見つけてくれた人やからな。なぁ、心春?」
「え? うん。そうだよ。ちーちゃんは王子様だよ。その・・・・・・『一日王子様』だよ」
冬菜は首を傾げます。
「一日王子様? 一日だけ王子様?」
夏海が言いました。
「男子じゃ無かったから、急に時間を限定したな」
二時間目開始のチャイムが鳴りました。




