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二時間目を待ちながら  作者: 白上 しろ
23/45

二時間目を待ちながら(23)

 ある日。二時間目を待ちながら。


 心春が夏海の所にやってきました。心春が挨拶します。

「グッドモーニング、ナツミ」

「グッドモーニング? なんでいきなり英語なん?」

「ファット? アイ ドント ノー ジャパニーズ。イングリッシュ プリーズ」

「え? 英語で? ナンデー イキナリー エイゴヤネーン?」

心春が両手の平を上に向けて肩をすくめながら首を振りました。

「なんやねん! そのジェスチャーは! 安いロボットみたいやわ」

「え? 『安いロボット』の意味がいまいち分からないよ」

夏海はニタリと笑いました。

「イングリッシュ、プリーズ」

「え?」

「アイ ドント ノー ジャパニーズ。イングリッシュ プリーズ」

「ずるいよ! 夏っちゃん」

「ゼンゼン ズルクナーイ」

「完全に日本語だよ」

「で? またテレビか何かの影響で『英語がしゃべれたらええな~』とか思ってしまった、と」

「ザッツ ライト! その通り!」

夏海がため息をきました。

「なんでもかんでも最初にうちに試すのはやめてくれへんか?」

「夏っちゃんも一緒にやろうよ」

「え? 何を?」

「『日常生活、出来るだけ英語でしゃべろう』っていうやつなんだけど、これはね、どういうことかと説明すると」

夏海が台詞の途中で言います。

「タイトルで大体分かるよ」

「じゃ、夏っちゃん。レッツ チャレンジ!」

「ノー ノー。メンドクサーイ」

「最初はそう思うかもしれないけれど、慣れてきたら自然と身についていきます。テレビの前のみんなもやってみよう!」

「ノー サンキュー。私、テレビの前にイナーイ」

「面白そうなのに?」

「私、日本人やもん。ここ日本やもん。英語なんてしゃべれなくても、生きていける」

「英語が話せたら、世界のたくさんの人たちとおしゃべり出来るかも知れないよ? すごいと思わない」

「まぁ、英語に興味がない訳じゃないんやけどな。ただ・・・・・・」

「ただ?」

「心春の変な英語に付き合わされるのはちょっと困るなぁ、と思って」

「変な英語じゃないもん! 変な英語かも知れないけど」

「どっちや? ま、少し付き合ったろか?」

「やったぁ!」

「じゃ、これから英語で話すで」

「うん! 英語以外は、出来るだけしゃべっちゃダメだよ」

「オッケー。じゃ、心春、何かしゃべってみて」

「えっと。じぁ、ファット ドゥ ユー ライク?」

「ん~。アイ ライク スイーツ!」

「スイーツ?」

「イエス!」

「・・・・・・スイーツ?」

「イエス・・・・・・」

「えっと、アイ ライク スイーツ トゥー」

「オォ・・・・・・」

なんとか少し英語っぽく会話しましたが、その後が続かずに話が止まってしまいました。二人は無言のまま見つめ合っている所に、冬菜がやってきました。冬菜は普段とは違う、二人の様子に心配そうに話しかけました。

「あの、お二人とも、どうされましたか? 何か深刻な話? まさか喧嘩してしまったとか!?」

心春と夏海は無言のまま、首を左右に振りました。そして、夏海が言います。

「イングリッシュ プリーズ」

「え?」

同じく心春が言います。

「イングリッシュ プリーズ」

「イングリッシュ?」

冬菜は意味が分からず、不安そうな表情のまま、恐る恐るゆっくりと、丁寧に英語の教科書を二人の前に差し出しました。心春と夏海はそれを見て、また無言のまま首を左右に振りました。


二時間目開始のチャイムが鳴りました。


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