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二時間目を待ちながら  作者: 白上 しろ
21/45

二時間目を待ちながら(21)

 ある日。二時間目を待ちながら。


「やー!!」

夏海と心春、冬菜の三人が話している所に、剣道の素振りのジェスチャー(エア剣道)で千秋がやってきました。

「拙者、千秋、で、ござる」

気持ちだけ侍風情の千秋が言うと、心春も刀を構えるふりをしました。心春、千秋が交互に問答し始めます。

「ござるか?」

「ござる」

「ござったな」

「ござる」

今度は心春が名乗りました。

「拙者は心春でござる」

「ござるか?」

「ござる」

「ござったな」

「ござる」

夏海が間を割って中断させました。

「やめろ! 意味が分からん!」

千秋は刀を納めるふりをしました。冬菜が言いました。

「千秋さん、剣道部でしたね」

夏海が意外そうに言います。

「え? そうやったんや?」

千秋はまた、刀を抜くふりをして

「拙者、千秋で」

「それはもうええから」

「千秋さん、中学三年の時、全国大会で三位だったんですよ」

「えぇ! すごいやん! 千秋」

「ちーちゃん、剣道部なのは知ってたけど、そんなに強かったんだね。すごい!」

夏海と心春は驚いて褒め称えましたが、千秋はいつもながらに無表情でした。

「無念」

むしろ、言葉から落ち込んでいるようにも思われます。

「あの時、本当の、いくさなら、私はもう、この世には……」

「重い! 剣道は健全なスポーツやろ? 殺し合いとちゃうやん。どこの時代の武将やねん?」

「アーメン」

千秋は祈るふりをしました。

「キリシタンか! 設定がなんかややこしいわ」

心春も祈るふりをして言いました。

「ラーメン」

「いや、もう完全にすべっとる! 心春は千秋と絡むと、いつにも増しておかしなるな」

「1、5倍増……」

「ボソッと言うな!」

「えっと、『メン』! 『メン』ですよね? 他に最後に『メン』がつく言葉は……」

その横で冬菜が必死でボケようとしていて、夏海は呆れて言いました。

「冬菜、無理してこんなテンションに付いていったらあかんで。ほんまにアホになったらどうすんねん?」

「そうですか? ゴメンサイ。あっ!『ゴメン』!?」

「なんや? どないしたん?」

「『ゴメン』に『メン』がありました! ありましたよ! 夏海さん! あ~! なんでもっと早く思いつかなかったのかしら!」

「冬菜まで……」

千秋がいきなり話始めました。

「ありがとう」

「え? なに?」

夏海はいきなり千秋にお礼を言われキョトンとしました。

「また、相談、乗って、くれると、嬉しい。じゃ」

千秋は自分のクラスに戻って行きます。

「相談? うちら何も相談されてないよな? 何もしてないし」

夏海は心春と冬菜に尋ねますが、

「でも、なんだか千秋さんの気分が元に戻ったみたいですし」

「一件落着じゃ」

腑に落ちない表情で小首をかしげる夏海に、冬菜と心春はそう言って笑っていました。


二時間目開始のチャイムが鳴りました。


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