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二時間目を待ちながら  作者: 白上 しろ
18/45

二時間目を待ちながら(18)

 ある日。二時間目を待ちながら。


夏海の席に、心春と冬菜がやってきました。

「今日みたいに天気がいいと、これからの授業、眠くなりそうやなぁ」

夏海が言うと、心春が頷きながら言いました。

「全くその通りだよ。だんだん、先生の声が子守歌に聞こえてくるんだもん」

冬菜も相づちをうちます。

「そうですねぇ。ついうとうとしちゃいます」

「眠気覚ましに、授業中ドカーンとでっかい大砲みたいな効果音が入ったら、目も覚めるかも知れへんな。『何が起きたんや!』って」

冬菜がハラハラして言いました。

「目が覚めるどころか、心臓が止まりそうになるかもしれません」

心春が言いました。

「そういえば、音楽家のハイドンの『こうきょうきょっきゅ』に―」

「心春。『交響曲』やろ。言えてへん」

「そう。その『こうきょうきょきゅ』に『驚愕きょうがく』っていう曲があるんだけれど、その第二楽章はね、最初は小さい音でおだやかなの。そして段々眠くなってくるんだけれど、しばらくすると、『ドンッ!』て大きな音が鳴って、みんなびっくりして目が覚めるように作られた曲らしいよ」

「ふ~ん。ほんで? それを授業中、鳴らしてみようと?」

「正解! 正解者の中から抽選で―」

「はいはい。もうええから」

「いいアイディアだと思わない?」

「授業中クラシックですか。なんだかちょっと優雅ですね」

「今時、クラシックで目が覚めるかなぁ? それに毎日やってたら耳も慣れてしもて、また眠たくなるで」

「だったら毎日、その『ドンッ!』って鳴る音を変えたらいいんだよ」

心春が言うと、冬菜が目を大きくして頷いた。

「それはいいアイディアだと思います!」

夏海はボソッと言いました。

「なんで冬菜はこんなに食いついてるんや?」

心春が提案しました。

「例えば、『ドンッ』って鳴る所で、突然『プツン』と鳴って、そのまま音が途切れたままとか」

「機械の故障って言うか、怪奇現象みたいやん! 目は多少覚めるかも知れんけど、後味が悪いわ」

次に冬菜が提案します。

「じゃ、こんなのはどうでしょう?」

「えっ? 冬菜がボケるんか?」

「大丈夫? ふーちゃん」

夏海と心春は心配そうに冬菜に声を掛けました。冬菜は遠慮してしまいます。

「あっ、あの、やっぱり止めておきます」

「いやいや、言うて。ごめん、止めてしもて。冬菜のボケ聞くの初めてやったから」

「あの、決してボケる訳では・・・・・・」

「ごめんね、ふーちゃん。言って、言って」

「そうですか。じゃ、あの、いきます!」

「おう! 頑張れ、冬菜」

「頑張って、ふーちゃん!」

「あの、そんなに言われると反対に言いづらいのですが・・・・・・」

「せやな」

夏海と心春は悪戯っぽく笑い、それを見て冬菜も笑いました。少し間があって冬菜がしゃべろうとすると、

「『ドンッ』って鳴る所で」

「『ドンッ』って鳴るはずの所で、『キンコンカンコーン』って鳴ったら、一瞬、授業終わりかな~、って目が覚めるとか」

タイミング悪く、冬菜は夏海とかぶってしまい先を言えなくなりました。夏海が謝ります。

「あぁ、すまん! まだ冬菜の終わって無かったな。今のはわざとちゃうで。なんか『間』があったからな、つい」

「いえ、いいんです。そんなに期待されてまで言うほどの事じゃないですし。でも―」

冬菜は思い出し笑いのように、笑いをこらえていました。

「え? なに? そんなに面白いの?」

心春は是非聞きたいというように冬菜に言いました。

「言うてや。一人で楽しむのはずるいで」

夏海も興味津々に言いました。

「でも、本当に面白く無いかも知れませんよ?」

「うん。いい、いい」

「言って、言って」

「それじゃ。その、『ドンッ!』って鳴る所で」

「うん!」

「うん!」

夏海と心春は期待して頷きました。

「子猫が『にゃん』って鳴いたら、あら? 放送室なのに猫を飼っているの? って」

冬菜は自分で言いながら、もう笑いをこらえ切れていませんでしたが、夏海と心春は身を乗り出した恰好のまま、固まっていました。


二時間目開始のチャイムが鳴りました。


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