二時間目を待ちながら(18)
ある日。二時間目を待ちながら。
夏海の席に、心春と冬菜がやってきました。
「今日みたいに天気がいいと、これからの授業、眠くなりそうやなぁ」
夏海が言うと、心春が頷きながら言いました。
「全くその通りだよ。だんだん、先生の声が子守歌に聞こえてくるんだもん」
冬菜も相づちをうちます。
「そうですねぇ。ついうとうとしちゃいます」
「眠気覚ましに、授業中ドカーンとでっかい大砲みたいな効果音が入ったら、目も覚めるかも知れへんな。『何が起きたんや!』って」
冬菜がハラハラして言いました。
「目が覚めるどころか、心臓が止まりそうになるかもしれません」
心春が言いました。
「そういえば、音楽家のハイドンの『こうきょうきょっきゅ』に―」
「心春。『交響曲』やろ。言えてへん」
「そう。その『こうきょうきょきゅ』に『驚愕』っていう曲があるんだけれど、その第二楽章はね、最初は小さい音でおだやかなの。そして段々眠くなってくるんだけれど、しばらくすると、『ドンッ!』て大きな音が鳴って、みんなびっくりして目が覚めるように作られた曲らしいよ」
「ふ~ん。ほんで? それを授業中、鳴らしてみようと?」
「正解! 正解者の中から抽選で―」
「はいはい。もうええから」
「いいアイディアだと思わない?」
「授業中クラシックですか。なんだかちょっと優雅ですね」
「今時、クラシックで目が覚めるかなぁ? それに毎日やってたら耳も慣れてしもて、また眠たくなるで」
「だったら毎日、その『ドンッ!』って鳴る音を変えたらいいんだよ」
心春が言うと、冬菜が目を大きくして頷いた。
「それはいいアイディアだと思います!」
夏海はボソッと言いました。
「なんで冬菜はこんなに食いついてるんや?」
心春が提案しました。
「例えば、『ドンッ』って鳴る所で、突然『プツン』と鳴って、そのまま音が途切れたままとか」
「機械の故障って言うか、怪奇現象みたいやん! 目は多少覚めるかも知れんけど、後味が悪いわ」
次に冬菜が提案します。
「じゃ、こんなのはどうでしょう?」
「えっ? 冬菜がボケるんか?」
「大丈夫? ふーちゃん」
夏海と心春は心配そうに冬菜に声を掛けました。冬菜は遠慮してしまいます。
「あっ、あの、やっぱり止めておきます」
「いやいや、言うて。ごめん、止めてしもて。冬菜のボケ聞くの初めてやったから」
「あの、決してボケる訳では・・・・・・」
「ごめんね、ふーちゃん。言って、言って」
「そうですか。じゃ、あの、いきます!」
「おう! 頑張れ、冬菜」
「頑張って、ふーちゃん!」
「あの、そんなに言われると反対に言いづらいのですが・・・・・・」
「せやな」
夏海と心春は悪戯っぽく笑い、それを見て冬菜も笑いました。少し間があって冬菜がしゃべろうとすると、
「『ドンッ』って鳴る所で」
「『ドンッ』って鳴るはずの所で、『キンコンカンコーン』って鳴ったら、一瞬、授業終わりかな~、って目が覚めるとか」
タイミング悪く、冬菜は夏海とかぶってしまい先を言えなくなりました。夏海が謝ります。
「あぁ、すまん! まだ冬菜の終わって無かったな。今のはわざとちゃうで。なんか『間』があったからな、つい」
「いえ、いいんです。そんなに期待されてまで言うほどの事じゃないですし。でも―」
冬菜は思い出し笑いのように、笑いをこらえていました。
「え? なに? そんなに面白いの?」
心春は是非聞きたいというように冬菜に言いました。
「言うてや。一人で楽しむのはずるいで」
夏海も興味津々に言いました。
「でも、本当に面白く無いかも知れませんよ?」
「うん。いい、いい」
「言って、言って」
「それじゃ。その、『ドンッ!』って鳴る所で」
「うん!」
「うん!」
夏海と心春は期待して頷きました。
「子猫が『にゃん』って鳴いたら、あら? 放送室なのに猫を飼っているの? って」
冬菜は自分で言いながら、もう笑いをこらえ切れていませんでしたが、夏海と心春は身を乗り出した恰好のまま、固まっていました。
二時間目開始のチャイムが鳴りました。




