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二時間目を待ちながら  作者: 白上 しろ
15/45

二時間目を待ちながら(15)

 ある日。二時間目を待ちながら。


「暑いねぇ~、夏っちゃん」

心春がうちわで仰ぎながら、夏海に話しかけました。

「おっ、いいの持ってるやん」

「えへへ~。いいでしょ? うちわだよ」

「見たら分かるけど。持ってきたんか?」

心春はうちわの持つ所を後ろのスカートのゴムに挟みました。

「うん。かばんに入らなかったから、こうやって、背中に隠して持ってきたの」

「よう先生に呼び止められへんだな?」

「うん。うちわが見えないように鞄を背中にあてて持ってきたもん。こんな風に、ほら」

心春は鞄を背負い、持ってきた姿を再現して見せました。

「ランドセルみたいでしょ?」

「まぁ、おかしな事しとっても心春やからな。『またなんかしてるわ、暑いし放っとこ』くらいにしか、先生も思えへんだんやろな」

「ふふ~ん♪ 先生もまだまだだね~」

「うーん、先生も忙しいやろからな」

「夏っちゃんも仰いであげるよ」

「おっ、サンキュー。助かるわ」

心春は夏海をうちわで仰ぎました。涼しそうな夏海とは反対に、仰ぐ心春は段々と暑苦しそうになってきました。それでも必死に夏海を仰ぎます。

「殿様。いかがですか? 涼しいですか?」

「うむ。なかなかいい風だ。もっと強くならんかのう?」

心春は必死にうちわを大きく上下に振って仰ぎます。言葉も途切れ途切れになってきました。

「い、いかかでしょうか?」

「うむ。ちょうどいい風だ。しばらくその強さで頼む」

「かっ、かしこまりました、大佐」

「『大佐』って、さっきは『殿』やったやん! キャラクター、統一せんと」

「じゃ、ええと、悪霊、退散! 悪霊、退散! 今お祓い中です!」

「なんか嫌なシチュエーションや」

心春は目をつむって必死でうちわを仰ぎ、同じく目をつむっている夏海はやや強すぎる風を受けていました。少しして急に風が止みました。夏海が目を開けると、先生が立っていたので、夏海は驚きました。うちわは先生の右手にありました。

「うわっ!」

心春は自分の手から、うちわが没収された事に気がつかず、目をつむって手を動かし続けています。

「あくりょ~~! たいさ~~ん!!」

「心春! もういい! 止めて!」

心春も先生に気づいて驚きました。先生は言いました。

「学校に勉強以外の不必要な物を持って来てはいけません。分かってるでしょ?」

二人は『はい』と頷きました。

「これは鞄にしまっておきなさい。暑いけど、学校で使うのは我慢しなさい。次は本当に没収ですよ。よろしいですね、夏海さん?」

「(え!? うち?)はい……」

「え? 夏っちゃんじゃありません! 違います! 持って来たのは私です!」

「心春さんが持ってきたの?」

「心春、うちも同罪や。うちも涼しい思いしたしな」

「夏っちゃん……」

「次から気をつけましょうね、二人とも」

夏海と心春は返事をし、先生はクスリと笑って去って行きました。夏海が罪を半分被った事で心春は少し泣きそうになっていました。

「ごめんね、夏っちゃん」

「なんで心春が謝るねん?」

「だって私のせいで夏っちゃんまで」

「じゃ今度は『心春が持ってきたから、うちは全く悪くありません』って言うわ」

「うん」

「嘘、嘘。何まじめに受け止めてんねん」

「でも」

「『でも』とちゃう」

「じゃ、お詫びに、いっぱい仰いであげる!」

心春はまたうちわを取り出しました。

「えっ!? あかん!!」

そして、運悪くまた先生に目撃され、うちわは一日没収となりました。

「だからあかんて言うたのに!」

「あう~、何で私ってこんなに馬鹿なんだろう!」

「ほんまや」

さらにシュンとなってしまった心春に、夏海は思わず苦笑してしまいました。

「おもろいな、心春は」


二時間目始のチャイムが鳴りました。


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