二時間目を待ちながら(14)
ある日。二時間目を待ちながら。
「ガタンゴトン。ガタンゴトン」
独り言を言っているようで、実は夏海に声を掛けて欲しい心春は、何度もそうささやいていました。そのしつこさに観念した夏海は、あからさまに興味が無さそうに心春に話しかけます。
「何? 何ですか?『ガタンゴトン』て?」
「うん、なんかね、電車に乗ってね、『どっかに行きたいなぁ~』って思って」
「それで『ガタンゴトン』て?」
「そう。思わず!」
「そうかぁ、思わず言うてしまうなぁー。……ってそんな訳ないやろ! 電車に乗りたいと思って『ガタゴト』言う女子高生がおるか!」
「『ガ、タ、ン、ゴ、ト、ン』だよ?」
「分かってるよ!」
心春は自分を指して言いました。
「『ガタゴト』言う人、ここにおりました!」
「恥ずかしいから止めてくれ。自分でも『ガタゴト』って言うてるやん」
「さては夏っちゃん、電車が嫌い?」
「嫌いとかじゃない。『ガタンゴトン』と声に出して言うのを止めてと言ってるの」
「『ガタンゴトン』はダメ?」
「うん」
「なるほど。そっか~」
「何?」
「夏っちゃんは『ローカル電車派』じゃなくて、『新幹線派』なんだ?」
「違う。いや、新幹線は好きやけど。そんな派閥、初めて聞いたわ」
「確かに夏っちゃんの言う通り、新幹線は『ガタンゴトン』って言わないもんね」
「勝手に(話を)進めるな」
「電車だけに?」
「いや、だからな。もう……」
「確かに新幹線は速いし静かだよ。でもね、ローカル電車にもローカル電車の『味』があるんだよ」
「そもそもな、心春。そんなに電車、好きやったか?」
「コホン!」
心春はわざとらしく咳をしていいました。
「普通です」
「せやろ?」
「『普通』と言っても『普通電車』のことではありません」
「そういうくだり、もうええから。どうせ、またテレビか何かに影響されたんやろ?」
「えっ?」
「ほら。図星や」
「えっと、ガタンゴトン、ガタンゴトン……」
「はいはい。行ってらっしゃい。見送ったるわ。達者でな~、もう戻って来なくていいよー」
夏海が無気力に小刻みで手を振ると、心春は車掌さんの真似をしました。
「次は地球~。地球~。この電車は次の地球~、までとなっております。能面など、お忘れ物がないようにお降りください。扉が開きます」
「……何ていう番組なん?」
二時間目開始のチャイムが鳴りました。




