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二時間目を待ちながら  作者: 白上 しろ
14/45

二時間目を待ちながら(14)

 ある日。二時間目を待ちながら。


「ガタンゴトン。ガタンゴトン」

独り言を言っているようで、実は夏海に声を掛けて欲しい心春は、何度もそうささやいていました。そのしつこさに観念した夏海は、あからさまに興味が無さそうに心春に話しかけます。

「何? 何ですか?『ガタンゴトン』て?」

「うん、なんかね、電車に乗ってね、『どっかに行きたいなぁ~』って思って」

「それで『ガタンゴトン』て?」

「そう。思わず!」

「そうかぁ、思わず言うてしまうなぁー。……ってそんな訳ないやろ! 電車に乗りたいと思って『ガタゴト』言う女子高生がおるか!」

「『ガ、タ、ン、ゴ、ト、ン』だよ?」

「分かってるよ!」

心春は自分を指して言いました。

「『ガタゴト』言う人、ここにおりました!」

「恥ずかしいから止めてくれ。自分でも『ガタゴト』って言うてるやん」

「さては夏っちゃん、電車が嫌い?」

「嫌いとかじゃない。『ガタンゴトン』と声に出して言うのを止めてと言ってるの」

「『ガタンゴトン』はダメ?」

「うん」

「なるほど。そっか~」

「何?」

「夏っちゃんは『ローカル電車派』じゃなくて、『新幹線派』なんだ?」

「違う。いや、新幹線は好きやけど。そんな派閥、初めて聞いたわ」

「確かに夏っちゃんの言う通り、新幹線は『ガタンゴトン』って言わないもんね」

「勝手に(話を)進めるな」

「電車だけに?」

「いや、だからな。もう……」

「確かに新幹線は速いし静かだよ。でもね、ローカル電車にもローカル電車の『味』があるんだよ」

「そもそもな、心春。そんなに電車、好きやったか?」

「コホン!」

心春はわざとらしく咳をしていいました。

「普通です」

「せやろ?」

「『普通』と言っても『普通電車』のことではありません」

「そういうくだり、もうええから。どうせ、またテレビか何かに影響されたんやろ?」

「えっ?」

「ほら。図星や」

「えっと、ガタンゴトン、ガタンゴトン……」

「はいはい。行ってらっしゃい。見送ったるわ。達者でな~、もう戻って来なくていいよー」

夏海が無気力に小刻みで手を振ると、心春は車掌さんの真似をしました。

「次は地球~。地球~。この電車は次の地球~、までとなっております。能面など、お忘れ物がないようにお降りください。扉が開きます」

「……何ていう番組なん?」


二時間目開始のチャイムが鳴りました。


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