二時間目を待ちながら(13)
ある日。二時間目を待ちながら。
心春には珍しく休み時間に、国語の教科書を開いて読んでいました。
その心春のもとに、夏海がやってきます。
「あれ? どないした? 食べ物の写真でも載ってたんか?」
心春は『ムスッ』っとした表情をみせると、棒読み口調で言いました。
「違うよ、予習だよぉ」
「ほんまに? どれ?」
夏海が教科書を覗くと、タイミングよく挿絵があって、かわいらしいタヌキの絵が載っていました。
「なんや、そっちか」
「『そっちか』って、何? どっち?」
「動物の方か。かわいいタヌキの絵に見惚れとったんやな?」
「違います! 予習です!」
「心春が?」
「うん」
「なんでや?」
夏海はふと窓の外を見て、つぶやくように言いました。
「雨でも降らそうとしてんのか?」
「ちーがーうー! もぅ、怒るよ~!」
「あはは、もうすでに怒っとるやん。悪い、悪い。でもなんでまた予習なんかしてるん?」
「だって今のうちに勉強しておかないと、偉い人になれないでしょ?」
「あー、……そうか」
「そーですよ」
「思い出した」
「えっ? 何を?」
「次の授業でやる問題、前の授業で心春が解くように、先生言うてたなぁ。だから予習してんのか」
「えっ! ……まぁ、そうだったのかな? それはまた偶然」
「『偶然』とちゃう。それしかないやろ。心春が予習してる理由なんて。それ以外やったら、心春が天変地異を起こそうと企んでいる事くらいしか思い浮かべへん」
心春は立ち上がって、大きな声で言いました。
「夏っちゃーん!!」
「うわっ! すまん! 言い過ぎた!」
ひるむ態勢の夏海に
「ここ、教えてください!」
ペコリと真っ直ぐに、心春は頭を下げました。
「なんやびっくりした。とうとう本気で怒ったんかと思った」
「こんなことで本気で怒ったりしないよ」
心春は苦笑いしました。夏海はホッとすると、少し偉そうに言いました。
「しゃーないな。うちが教えたろ。見せてみ」
「ありがとう! さすが、夏っちゃん!」
夏海と心春は教科書の問題を見ました。そして数十秒が経過。
「うちもわからん」
「うえぇ!?」
二時間目開始のチャイムが鳴りました。




