二時間目を待ちながら(11)
ある日。二時間目を待ちながら。
心春と夏海の所に千秋がやってきました。
「昨日、更屋敷のお菊さんの夢、見た。良かった」
二人が話している最中でも、千秋は唐突に話を始めます。いきなり話が強制中断された心春と夏海ですが、千秋の話に答えました。夏海は驚いたように言いました。
「お菊さんの夢? それ、嫌やろ!」
心春は嬉しそうに言いました。
「そう? 私は見てみたいなぁー」
「えぇ!? あんなん好きなん?」
夏海が尋ねると、心春と千秋はこくりと頷いて、千秋がお菊さんの真似をし始めました。
「一枚、二枚、三枚、四枚……」
「あっ、有名だよね。お菊さんが皿を数えるの」
「八枚、九枚」
千秋は一呼吸置くと言いました。
「十枚」
「あっ、十枚目、数えてしもた」
夏海が思わずつっこむと、千秋はまた皿を数えるフリをしました。
「一枚、二枚……」
「また続くんか」
「七枚、八枚、九枚」
千秋は一呼吸置きました。その時、心春が突然千秋に向かって言いました。
「お菊さん! そんなモタモタと数えてたら、お客様に料理がお出し出来ませんよ!」
「ガーン!」
「千秋、『ガーン!』って古いっ! その前に、心春もいきなりボケるな!」
「一枚、二枚……」
「また続くの?」
呆れる夏海をよそに、千秋はまた皿を数える真似をします。
「七枚、八枚、九枚」
千秋は一呼吸置きました。
「一枚足りない。……ま、いいや」
「いいんかいな!」
呆れていた夏海ですが、ほとんど反射的に千秋にツッコんでしまいました。
「はい! 私もやってみます!」
心春は笑顔で挙手します。
「3、6、9と。一枚足りませ~ん!」
「早い! 数えたらイイってもんとちゃう!」
続けて千秋が言いました。
「一枚、二枚、三枚。よし、九枚!」
「途中で端折るな!」
「一枚足りない。これじゃ、出荷、出来ない。困った」
「お菊さんは工場で働いてへん!」
続けて心春が言いました。
「一枚、二枚、三枚、四枚、五枚、六枚、七枚、八枚、あれ? えっと、八枚、九枚。一枚足りないよぉ!」
「八枚目、二回数えとる!」
千秋が続けました。
「一枚、二枚、三枚。足りない」
「足りなさすぎや!」
夏海は切らせた息を整え、二人に説明しました。
「もう…… もう流石にええやろ? いいか、お菊さんは、こわ~い怪談話に出てくるねん。そんなふざけた話とちゃうねん!」
『えぇ!? そうなの!?』と驚く心春と、本当に驚いているのか、表情からは分からないけど、とにかくすごく仰け反って自分の股から顔を出した千秋に、夏海が驚きました。
「それ、怖い!」
二時間目開始のチャイムが鳴りました。




