今ここに道は開かれた
ものすごくおまたせしてしまいました。
ちょっと文量が少ないですけど久しぶりに書けたので更新します。
ウォーレン殿下の宣言で、ついに転移陣の再稼働が公にされた。予定通りならば、王都では国王陛下が同じ宣言をしているはずだ。きっと今頃は、錬金術排斥派の魔導師たちも驚いていることだろう。
今回、この場に国王陛下が居ない一番の理由はここにあった。
国王陛下が表立って動けば、奴らの妨害工作を受ける可能性があった。国王陛下はそれを懸念して、自身が錬金術排斥派の注意を引き裏でウォーレン殿下を動かしていた。はたしてそれは無事に成功したようだ。
稼働前に破壊される可能性が一番高かった。しかし、奴らがいかに強大な力を持っていたとしても、こうやって広く国民に周知してしまえば、即座に破壊されるような事はそうそう無いだろう。
軽めの達成感を胸にいだきながら、転移陣の可動準備を終えたフィリップ副司祭を見る。ちょうど彼もこちらを見ていたようで自然と目が合う。
「こちらの準備は終了したぞ」
「さすがに手際がいいですね。結構練習しました?」
「万が一にも間違えるわけにはいかないからな。だが、おかげで今朝は清々しい気分で迎えられた」
そう言って、フィリップ副司祭は視線をウォーレン殿下へと戻す。そして――。
「転移陣、可動!」
ウォーレン殿下の号令で転移陣を可動させる。少しずつ魔力が供給されていく。
はじめは小さな地鳴りのようなものが鳴り響き、そして転移陣がうっすらと光を貯めて輝きを増していく。そしてその光が描かれた魔法陣を巡り、ひときわ大きな輝きを放った。
――視界が真っ白に染められる。
光が少しずつ弱まり、魔法陣には安定した光の線が幾重にも重なりを見せていた。
「どうだ?」
フィリップ副司祭が自然と独り言を漏らす。自信はあったのだと思う。しかし、どれだけ準備をしたとしても、やはり不安はゼロにはならない。だから、彼をその不安から開放してあげるのが僕の仕事だ。
「うん、成功です。とても安定していますよ」
「……成功、か」
右手をぐっと握り込み、フィリップ副司祭はその身を小さく震わせる。こちらにもその喜びが伝わってくるようだ。
少しして、再びウォーレン殿下が部下に指示を出す。それを合図に、周囲で待機していた騎士達が転移陣へと移動を始めた。統制の取れた行進を見て、住民たちから感嘆の声が上がる。
この町は百年前に比べて、とても寂れてしまっていた。昔であれば多くの旅人が転移陣を行き来していたので、式典も多かった。しかし今の住民たちにとって、このような式典は恐らく初めての経験なのだろう。近隣の大都市である、異界都市アミルトにすら頑なに移住しないほどだから。
閑話休題、騎士たちが誰かを迎えるように転移陣の前に広がって立つと、再び転移陣が光を放つ。今度は柔らかな光だ。――次の瞬間、光の中から十数人の騎士たちが姿を表す。その紋章は――近衛の証。その近衛騎士たちが行進を始め、前へと歩みを進める。近衛騎士がここに現れたことで、住民たちの期待は更に上がったように感じられた。そして、その期待に応えるように、近衛騎士達に続いて現れたのは、国王陛下その人だった。
突然、目の前に現れた国王陛下の姿を見て、住民たちは更に興奮したように歓喜の声を上げる。国王陛下はその様子を一通り眺めて満足そうな顔をして右手をゆっくりと前にあげる。すると、住民たちは落ち着きを取り戻したように静まり返る。
「我が愛すべき民よ。私は長きに渡り苦労をかけた事を遺憾に思う。しかし、改めて今ここに道は開かれた。この道は――」
まるで耳元で語られたような通る声が紡がれる。国王陛下の言葉を聞いた住民たちの中には、ついに泣き出してしまうものまでいた。それは特に年配の人たちに顕著に現れているようだった。
不定期になってしまいますが、少しずつ更新していければと思います。




