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錬金術師は家に帰りたい ~百年寝過ごしたら自宅が異界化してました!?~  作者: ワイエイチ
異界都市のスタンピード編

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親和性

 一息ついた後、辺りを見回す。


「ちょっとだけ場の雰囲気が変わりやがったな」


「そうだね、地図で確認した場所の通りだ。まあ、未踏地形探索魔道具で調べたんだから当たり前だけど」


 先程までの地形と変わらず岩石地帯ではあるのだが、しかし異なる点もある。


「割りと綺麗に開けていますね」


 周りの気配を探る素振りを見せながら、アリスが言葉を発した。


 そう、この地形の特徴というのは、他の場所よりも広く戦いの場を作れること。そして少し窪地になっていることで、周囲よりも低くなっていること。さらに周囲の岩も多いので他所から見つかりにくいという点があげられるだろう。


「ここなら、あまり周りの視線を気にしなくても大丈夫だと思うよ。魔物も結構いるし、存分に狩りをできそうだ」


「うん、なかなか良い場所じゃないの。バーナード君、精度の高い地図があるとはいえ、広いフィールドから良くこんな場所を見つけられたわね」


「はは、そこは頑張りましたから」


 珍しくマリナさんが手放しで褒めてくれているので、謙遜はせずに仕草で素直に喜びを表すことにした。


「さて、これからの方針はどうしようか? エリーシャはそろそろ感覚がつかめた感じ?」


「そうね、さっきの戦いでタイミングも大体は掴めたわ。次からはもっと多く採取できそうよ」


 結構、神経を使う戦い方になることもあって、若干は心配していたのだが、エリーシャも引き続きやる気を出している。新たな挑戦は、今後の探索に向けても良い経験となるので大歓迎だ。ならば、このまましばらくは継続しても問題は無いだろう。


「さっきまでも半分以上は採取できてたからな。次はもっとやりやすくしてやるぜ」


「二人の連携も良くなってきているしね。アリスとマリナさんもそれで良い?」


「はい、私もサポートしますね」


「まっかせておいて!」


 皆の気合も十分入っているようなので、このまま小休止を挟むにとどめて狩りを再開することができそうだ。


 ジークとアリスだけではなく他の面々も、各々が何かしらの目標を自分の中に持っているように見える。魔物は固定されてしまうが、その分普段の鍛錬よりも多くの連携訓練を積むことができるのはありがたい。


 レギオンティーチャーでも、学習速度を落とせば似たようなことはできる。しかし、あれはそういった訓練とは異なり、対象を追い込んで限界を越えさせることが主な目的となるので、あまり向いてはいない。


 閑話休題、皆の準備も整ったようなので、僕も月詠を取り出して一振りする。


「それじゃあ、始めますか」


 僕の言葉に、皆が思い思いの声を上げて駆ける。一番近い魔物との距離はそれなりに離れていたため戦闘圏内に無かったはずだが、こちらの気合が届いたのか、二体のカーボネーテッドウォーター・エレメンタルが同時にこちらに振り向いた。


「あら、気付かれちゃったわね」


「風の精霊よ、力を貸して!」


 まだ距離は離れているが、まず行動を見せたのはマリナさんとエリーシャの二人だった。マリナさんが突き出した手が、アイテムボックスの空間を抜けると、その手には光銃が握られていた。


 光銃から放たれた光が、カーボネーテッドウォーター・エレメンタルへと到達して、持ち上げていた右腕の付け根に吸い込まれるように軌跡を描く。その直後、着弾点が爆散して右腕を吹き飛ばす。そして、エリーシャの元から放たれた真空の鎌が、一拍遅れるように到達し左足を切り飛ばした。まずは一体を集中して狙ったようだ。


 二人の攻撃により、一体の動きが一旦止まる。再生までそれほど多くの時間はかからないと思われるが、この時間差が作られたのは大きな意味を持つだろう。これで二体を分断できたので、まずは近づいてくる一体を落ち着いて処理する事ができそうだ。



「――皆、いつでも良いわよ!」


「多少はこぼしても気にしなくて良いからね」


 一体目のカーボネーテッドウォーター・エレメンタルにもう少しで止めを刺せそうになると、遠距離を維持していたエリーシャが皆に声を掛けながら最前線に躍り出た。


 既に弱っているとは言え、エレメンタル系の魔物の場合、放たれる攻撃が急激に弱くなるというわけではない。当然の事ながら、攻撃は大きな動きを見せたエリーシャへと向かうことになる。しかし――。


「甘い!」


「ありがと」


 同じように前に出たマリナさんによって展開された光盾が、その攻撃を防いだ。


「こっちを無視すんなオラァ!」


「アリス、ジークにタイミング合わせて」


「かしこまりました」


 ジークの剣閃を受ける直前にコアが動き、際どいながらもカーボネーテッドウォーター・エレメンタルは回避に成功する。しかし、もともと僕たちはそのタイミングを狙っていた。瞬間的にコアを動かして回避する特徴には既に慣れている。そして、長時間に渡って目まぐるしく動いたりはしないという事も既に知っている。つまり、綺麗な連携にかかれば、容易に捉えられるということだ。


 ……さて、ここから先はエリーシャの出番だ。そう思いコアを破壊する瞬間、エリーシャへと注意を向ける。エリーシャは笑みを浮かべていた。


「水と風の精霊よ、力を貸して!」


 エリーシャが声を上げた瞬間、カーボネーテッドウォーター・エレメンタルの足元から、小さな竜巻が発生する。うん、今回は完璧なタイミングだ。


 コアの制御を失った炭酸水は、本来そのまま自由落下して地面にぶちまけられる。これは小さな竜巻が発生した程度では結末が変わることはない。しかし、目の前の炭酸水が見せる動きはそれとは異なっていた。竜巻が作り出す気流に触れた炭酸水は、そのまま気流に導かれるように渦を作り出した。


 水の精霊によって、液体との親和性が劇的に向上した風。その気流は全ての炭酸水を巻き上げた後に流れを変え、中空に球体を作り上げる。


「――綺麗ね、皆ありがとう」


 恐らく、今エリーシャが発した感謝の言葉は僕達に向けられたものではないだろう。もちろん僕達を蔑ろにしているということではない。


 挑戦すること数回、水の精霊と風の精霊の動きはなかなか綺麗に合わさることは無かった。普段は、二つの精霊の力を同時に借りることは少ない。ましてや、タイミングを合わせてもらうことは、そう簡単な話ではない。エリーシャの感謝は、その無理を聞いてエリーシャが思い描く結果を実現してくれた精霊たちへ向けられたものだ。


 さて、本来であれば、もう少し余韻に浸らせてあげたいところだが、今はまだ戦闘中だ。マリナさんとエリーシャによって動きが遅れたもう一体が、もう間近に到達しようとしていた。


 目配せすると、アリスが前に出て素早く球体をアイテムポーチにしまい込む。


「おっと、まだもう一体いたわね」


「ぼうっとしてんなよ」


「わかってるわ」


 エリーシャは緩みかけた緊張を再び張り直したようで、意識を魔物へと向けた。ジークがエリーシャの肩を軽く叩き前に立つと、そのまま剣を構えて駆け出した。


 ……ちょっと格好良さげに動いたけど、さっき一瞬気を抜いていたように見えたのは、僕の気のせいだろうか?




 一体ずつであれば、エリーシャが放つ精霊魔術の成功率は上々で、残りの一体から採取する素材の半分以上も確保できていた。


「結果は上々だね」


「そうね、最初はなかなかタイミングが合わなかったけど、ここに来て風の精霊と水の精霊の仲が良くなってきたみたい」


「へえ、そういうこともあるんだね」


 二回目の成功に気を良くしたエリーシャが、簡単にではあるが精霊たちの事を教えてくれた。


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