表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
錬金術師は家に帰りたい ~百年寝過ごしたら自宅が異界化してました!?~  作者: ワイエイチ
失われた古武術編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

209/321

レギオンティーチャー

 土人形は人間と比べると一割から二割程度大きくした図体で、中々の存在感を醸し出している。その雰囲気に誰と無しに息を飲む音が聞こえてくる。


 一旦動きを止めたレギオンティーチャーに対して、皆が探るような目で思案顔をしている中、ヴォルフガングがこちらへと視線を戻す。


「僕達が戦うのはこの土でできた人形とですか? これはアースゴーレムみたいなものでしょうか?」


「そうだね、アースゴーレムと非常に似てはいるよ。この森の異界ではちょっと粘土質が多めに見えるからクレイゴーレムがもっと近いかな」


 もちろん、外見は似ているけどその性能はただのゴーレムとは一線を画すので舐めていると痛い目を見るけどね。それは実際に体験してもらうのが一番早い。百聞は一見にしかずだ。


「ひとまずはこれから三日間、皆には時間の許す限りこのレギオンティーチャーと戦って貰おうと思ってる。これを乗り切れば確実に強くなることができる。それは約束するよ」


「ちょっと地味だけど、バーナード兄の事だからそれだけじゃないって事だろ? へへ、ちょっと楽しみだぜ」


 僕に対するその評価は少々気になるが、少なくともランディスは前向きに挑戦してくれるらしい。正直なところ普段から訓練を手伝っている都合上、ランディスが一番難色を示すと思っていたので、これは嬉しい誤算だ。


 一番声の大きいランディスが前向きになっているおかげで、残りの皆も覚悟を決め始めているように見える。落とし穴というわけではないが、言葉尻の細かい所に疑問を抱かれる前に始めてしまうことにした。


「それじゃあ僕は離れて見てるから、皆がんばってね」


 さて、ここまで持ってくれば逃げられるようなことはないだろう。ランディスとパリス、そしてイネスに関しては言わずもがな、ヴォルフガングとリリに関しては断言はできないが、今回のトライアルに掛ける意気込みは皆一様に高いように見える。そういう意味ではそれほど心配は要らないだろうとは思う。それにこれを乗り越えれば強くなるという言葉に嘘はない。


 距離を置いてから振り向き、皆の準備が整ったことが確認できたので、レギオンティーチャーに指示を出す。


 大きな立方体が鈍い音を響かせると、土人形が一斉に動き始める。ランディス達も各々が戦闘準備を済ませたようで、自身が戦いやすいであろう距離を探り始めている。


 ふむ、ひとまずヴォルフガングは小型のボウガンのような物を使うようだ。片膝を付き、手慣れた手つきでレバーを引くと弦が引かれる。そこにボルトを装填し土人形へと向けて構えた。その動作にはまだ改善の余地は多そうだが、それはこれからの成長次第と言ったところだろうか。……あと、あのボウガンを色々強化したいなあ。


 そして残る一人、リリに関してだがひとまずはずっと傍らにあった大きな斧を使って戦うらしい。はて、弓はどうなった?


 まず最初に駆けたのは予想通りランディスだった。相手の出方を見ずに突撃してしまうのはあまり宜しくはないな。


「オラァァ!」


 土人形の動きはそれほど速くないため、振りかぶる一撃をきれいにかいくぐり懐に入ると、腹を狙ったランディスの一撃によって一部分が派手に吹き飛ぶ。それによってバランスを崩した一体が、前のめりに倒れ込み沈黙する。


「まずは一体!」


「さすがラン君! それじゃあ私も!」


 ランディスが振り抜いた手を強く握り込み、次の土人形へと視線を巡らせる。すでにイネスが接敵しており、土人形の攻撃をいなしバランスを崩させているのを確認すると、そちらへ向かった。


 パリスはランディスに続けとばかりに、フリーになっている一体に向けて手をかざす。次の瞬間、手のひらに生まれた火球が土人形へと牙をむく。着弾とともに土人形が燃え上がる。こちらも最初はあっさりと片付きそうだ。


 この面子で一番火力が乏しいのはヴォルフガングだろうか。連続で数本のボルトを飛ばすことができるようだが、土人形に対しては効果が薄い。生物が相手であれば戦況を有利に運べるのだろうが、痛覚がない上に丈夫な表面を持つ土人形とは相性が悪いので仕方がないだろう。


「……厳しいかな」


 ひとまずヴォルフガングは独り言をつぶやき間合いを稼ぎながら、誰かがサポートしてくれるのを待つことにしたようだ。


 そうこうしている間に大きな斧で一体を仕留めたリリが背後から駆けつける。大きな斧を平気な顔をして振り回すドワーフの膂力は目を見張る物がある。やはり弓と言われるよりしっくりくる。


 初戦は全員が互いの実力を測りかねているせいか、ひとまずは連携らしきものは見当たらない。まあ、当然といえば当然か。それはこの短期集中訓練で身につけてもらうのだから別に問題はない。


 ただ、最初から飛ばしすぎると後が大変だよ?


「よっしゃあ、倒し終わったぜ!」


「はいはい、安心してないで次に備えてー。休んでる暇はないよ」


「え、休憩なし!?」


「休憩なんて無い無い」


「マジかよー!」


 皆の不満を代弁するかのようにランディスが大げさなジャスチャーをする。まだ意識が甘いなあ。探索中に遭遇すれば魔物は待ってくれない。当然ながら連戦だってありえる。それも想定している短期集中訓練を舐めちゃいけない。


 再び大きな立方体が鈍い音を響かせると、沈黙した土人形達は再び五体満足な状態へと戻った。さあ、どんどん行こうか。




「……何か、おかしいです」


「え、何が?」


 数回目の戦闘の最中、一番最初に異変に気が付いたのはヴォルフガングだった。肩で息をしながら、戦況を確認している。


 同じように距離を取っているパリスは目の前で燃えさかる土人形が倒れるのを確認しながらヴォルフガングの言葉を聞くと、視線を動かして不思議そうに返事を返した。うん、パリスは火力があるからまだ気が付かないだろうね。これは火力に乏しいヴォルフガングだからこそ、いち早く気が付くことができたのだろう。


「この土人形、少しずつ強くなってきていますよ!」


「え、マジかよ!?」


「うん、正解。おもったより気が付くのが早かったね。これからどんどん強くなるから、皆頑張ってね」


 ヴォルフガングが言ったように、レギオンティーチャーは倒されて復活する度に訓練対象の動きや癖を学習をする。戦えば戦うだけ訓練対象の足りない部分を突き始める為、相手に対して強くなる。これがこのレギオンティーチャーの特性である。


 いやらしい特性かも知れないが、訓練という視点で見た場合にこれは非常に有用であると僕は思っている。




 三十分ほどの時間が過ぎ、次第に皆の動きが鈍くなってきた。休憩を取っていない状態での連戦なので当たり前といえば当たり前なのだが、レギオンティーチャーもどんどんと戦いにくい相手になってきているのも原因だろう。


「そ、そろそろ、休憩、したいんだけど」


「皆には悪いけど休憩なんてしないよ。はい、ポーション飲んで。はい」


「マジかー!」


 体力自慢のランディスが土人形達の再生を待つタイミングを見計らって情けないことを言い始めたので、用意しておいたポーションを一つずつ投げ込む。ランディス達は何とか落とさずにポーションを受け取ると、栓を抜いて一気に飲み干した。そんなに慌てなくても落としたくらいでは割れないし、実は土人形はこれくらいは待ってくれるから大丈夫だけどね。


 レギオンティーチャーはその名称に示されているようにあくまでも先生である。間違っても生徒を殺してしまうようなことは無い。死にそうなくらいには追い込むかもしれないけど。


「うお、すっげえ元気になったぜ!」


「これは、凄いですよ」


 感嘆の声を上げる男性陣とは対照的に、女性陣は無言でそれを実感している。


「今渡した体力回復用のポーションと傷を癒やすポーションとかを用意しているから、次からは各自必要なタイミングで使って良いよ」


 そう言ってアイテムポーチから大きな箱を取り出して地面に置く。一旦レギオンティーチャーを待機させてから箱の蓋を開いて中にあるものをいくつか取り出して皆に見せて説明を行った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ