宝石みたい
活動報告でも書きましたが、遂にブックマークが一万を越えました。
いつも応援してくださっている皆様、この場を借りてお礼を申し上げます。
突然大声を上げてしまったせいで、皆の注目を一斉に浴びてしまったが、都合が良いのでこのまま話を進めることにする。
「今日、集合に遅れてしまった原因となった用件だよ」
「そういえば何かを探していましたね」
「つーか、前置き無しにいきなりだな」
素直に話を合わせてくれるアリスと対照的にジークがツッコミを入れてくる。……さすがに不自然なつながりだっただろうか?
とはいえ、つい今しがた思い出したというのは本当のことなので仕方がないことではある。
「以前、マリナさんにセオドールの光剣にはオプションパーツがある、っていう話をしたと思いますけど、今回はそれの一つを作ってきました」
そう言ってアイテムポーチからとある物体を取り出す。
「杖? にしては短くて、なんだか頼りないわね。硬そうだから鈍器かしら」
「先の方に穴が開いてるな、なんだこりゃ?」
エリーシャとジークは見慣れない形状をした魔道具に興味を示したのか、魔道具を見るなりいち早く反応を示した。
「これは鈍器じゃなくて飛び道具だよ。機能的に言えばショートボウよりもクロスボウに近いかな」
「飛び道具? オプションパーツって言っていたけど、それと光剣は何か関係あるってことなの?」
マリナさんも皆と同じように首を傾げている。やはり、マリナさんのもとには資料等は何も残されてはいないということなのだろう。
先日、マリナさんに話した後にセオドールから引き継いだ研究資料を検索したところ、幾つかのオプションパーツの資料が見つかったので、多少のアレンジを加えつつ作成しておいたのだ。
時間があまり取れなかったので、完成した物はこの一つだけなのだが、都合の良い事に今回のシチュエーションにはピッタリだ。
閑話休題、皆が首を傾げている状態なので、本来ならばじっくりとこの魔道具の説明をしたいところだが――そう思い再び視線をカーボネーテッドウォーター・エレメンタルに向ける。
視線の先では先ほどと変わらず、カーボネーテッドウォーター・エレメンタルが黒い何かにまとわりつかれてもがく姿が見える。
目前のカーボネーテッドウォーター・エレメンタルがあの状態とはいえ、これだけの影響を及ぼしているわけだから、周辺広範囲への影響も気になる。さすがに、のんびりと魔道具の説明をしてはいられないだろう。
……仕方がない、百聞は一見にしかず。このままぶっつけ本番で挑戦してもらうことにしようか。
「このまま放っておくと、次から次へと魔物が近寄ってきかねません。というわけでさっさと倒してしまいましょう。はい」
「え、これの説明はなし!?」
当然説明があるものと思っていたのだろう、魔道具を手渡すと当然のように困惑するマリナさん。
そんなマリナさんの反応を無視するように、魔道具の一部を指差す。
「説明しますよ、まずは使い方だけですけど。そのグリップ、はいそこです。そこの窪みに光剣を差し込んでください」
「え、あ、はい」
マリナさんは変わらず困惑しつつも、僕に言われるがままに、アイテムボックスから光剣を取り出して手元の魔道具に差し込んだ。
すると低い音が一つ鳴り、光剣を突き刺した部分から光の筋がいくつも広がり、魔道具全体に行き渡る。
『スナイプモード起動しました』
「しゃ、喋った!?」
「……セントラル?」
マリナさんが魔道具から声がしたことに驚くが、近くにいたアリスは異なる反応を示している。
それもそのはず、実はマリナさんに聞こえた音声はアリスの言うようにセントラルの音声だったりする。
セオドールのオリジナル魔道具では、この様な機能は実装されていなかったのだが、今回はとある機能を組み込むために、機能を限定してセントラルに接続してある。
「あ、危ないから覗き込まないでくださいね。そのまま先端をカーボネーテッドウォーター・エレメンタルのコアに向けて、足を開いて腰を落として、そう。そしてグリップの上にあるスコープを覗き込んで」
「こ、こうかしら」
少しぎこちないが、まあ初めて使うものだしそれは仕方がないことだろう。ちなみに追加した機能というのが正にこのスコープである。つまり――
『ターゲット・ロックオンしました』
「よし、それじゃあ、人差し指でトリガーを引いてください」
マリナさんは一瞬だけ戸惑いを見せるが、僕の指示に従い恐る恐るトリガーを引いた――
「くっ!?」
次の瞬間、魔道具の先から一筋の閃光が発射される。一瞬だけ勢いに怯むも、マリナさんは崩すこと無く体勢をキープしていた。それなりの反動があるはずなのだが、流石は怪……いや、言うのはやめておこう。
そして閃光は凄まじいまでの速度でカーボネーテッドウォーター・エレメンタルの元へ到達する。当然のことながら抵抗を試みるカーボネーテッドウォーター・エレメンタルだったが、抵抗むなしくそのままコアを撃ちぬかれる。
「……凄い、です」
「私の矢と違って逸れなかったわね」
「逸れなかったってか、コアにあたる直前に曲がらなかったか?」
意外にもジークが気がついたようだ。
実は先ほどカーボネーテッドウォーター・エレメンタルは体内で矢のように曲げられなかった為に、コアを移動させることで避けようとしたのだ。
ところが、閃光は避けたコアに向けて途中で曲がり見事撃ちぬいたというわけである。
僕達の視線の先では閃光に撃ちぬかれたカーボネーテッドウォーター・エレメンタルはコアの欠片を飛び散らしながら、激しくもがき苦しんでいたが次第に弱らせついにはその動きを止める。
「うぉ、なんか気持ちわりいな」
様子に見入っていたジークが驚きの声を上げる。
コアの制御を失った炭酸水は本来であればそのまま地面に流れ落ち吸収されるのだが、領域内の炭酸水はそれとは異なる動きを見せる。
地面に流れ落ちるのではなくまるで重さが無くなったかのように中空に留まり、最終的に一つの大きな水球へと変化した。
まあ、初めて見る光景だろうから驚くのも仕方が無い、か。女性陣の反応が乏しかったため少々不安になったのだが――
「……綺麗ですね」
「宝石みたい」
「確かに綺麗ね」
ジークの反応とは異なり、女性陣には割りと評判は良いようだ。動いている最中はともかく、一度形を変えてしまえばどうということは無いということなのだろう。
それにしても宝石とはよく言ったもんだ。確かにそう言われてみればそう見えないこともない。と言うより一度聞かされるとそう見えてくるのが不思議なところだ。
「――そろそろ素材を採取してもいいかな?」
皆、少しの間その光景に見入っていたが、僕の一言で我に返ったのか一様に頷き返してきた。
「で、でもよ、どうやってあれを採取するんだ? 俺はこの領域の中に入るのは遠慮したいところなんだが」
「はは、その心配は要らないよ。あれは今僕の支配下にあるから」
そう言いながら、アイテムポーチの中から炭酸水を入れるための容器を幾つか取り出して、容器の口だけを領域内に入れる。
「セントラル、容器に入れて」
『かしこまりました』
セントラルの返事が僕の耳に届くと、再び大きな水球がうねうねと動き始めて、まるで吸い込まれるように容器に入っていく。
あとはいっぱいになる度に容器を変えていくことで、最終的に全ての炭酸水を採取することに成功した。
さて、予定通り大量の炭酸水が手に入ったわけだが、まず最初は何を作ったものだろうか?
やはり一番は炭酸ジュースだろうか? 飲み物や美容以外にも使いみちが無いかなぁ。うん、これは中々楽しみになって――
「コホン、取り敢えず領域を解除しようかなーっと」
皆の視線にいち早く気がついた僕は努めて何事も無かったかのように振る舞い。領域の外周を回り玄冥の黒杭を回収した。
……だから皆、その目は止めようじゃないか。




