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錬金術師は家に帰りたい ~百年寝過ごしたら自宅が異界化してました!?~  作者: ワイエイチ
異界都市炎上編

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成果のお披露目

 ――久しぶりの盛り上がりを見せた錬成の時間は僕に充実感を与えてくれたが、楽しい時間は驚くほど早く過ぎ去るものだ。


 机の上に広げた物に視線を向けていたところ、ふと部屋の扉をノックする音が聞こえて現実に引き戻された。

 集中している時には聞こえないことが多いので、このノックが何回目のものなのかはわからないが、外を見る限りではあれからそれほど時間は経過していないものと思われる。


「バーナード様、お飲み物をお持ちしましたぁ。少し休憩されてはいかがですかぁ?」


「ありがとう、エステル。ちょうどつい先程終わったところだから中に入ってもいいよ」


「あ、はぁい」


 部屋に訪れたのはエステルだった。話の内容から察するに数回は部屋を訪れているようにも思える。

 アリスなら僕からの返事がない事にも慣れている為、邪魔にならないように部屋に静かに入り飲み物をおいて行ってくれたりもする。

 しかし、エステルはこういった状況自体が初めてなので、律儀に待ってくれたのだろう。少々申し訳なく感じてしまう。


 ドアノブをひねる音がしてドアがゆっくりと開かれてエステルの姿が見え――。


「な、何ですかぁ!? ……この短時間でどうしてこんなに部屋が散らかるんですか!?」


 ……たのは良いのだが、部屋の様子を見るなりエステルは目を見開きながら驚きの声を上げた。


「え、そんなに――うん、確かに散らかっているね」


 部屋を見渡すと確かに、エステルの指摘通り随分と散らかってしまっていた。


 かなりノリノリで色々な物を試しながら錬成作業を進めた為、片付けが二の次になってしまったのは否めない。


 昔はそれなりに片付けながら錬成することを心がけていたのだが、最近はアリスがマメに片付けてくれるため、そのあたりの事がすっぽりと意識から抜けてしまっていたらしい。


 ついついアリスの言葉に甘えてしまっていたが、今日のような事が起きてしまうのは必然とも言えるだろう。アリスに任せっきりというのもあまりよろしくは無いのは理解できる。

 これからは、もう少し自分でも片付けを意識するべきだろう。


「あーごめん、今から急いで片付け――」


「――は私がやりますのでバーナード様はゆっくりと休憩していてください」


「ひゃっ! って、アリスちゃん」


 そう声をかけてきたのはエステルではなくアリスだった。


 慌てて振り向いたエステルのすぐ後ろでアリスは優しい表情をしていた。


 先程までは確かにいなかったはずなので、エステルの声を聞いてこちらに来たのかな? それにしてもアリスは瞬間移動でも出来るのだろうか。


 突然予想していなかった後ろから声がしたせいだろう、エステルも変な声を出して驚いている。


 まあ冗談はさておき、片付けに関してはつい今しがた決心したばかりだ。そのためこのままアリスに部屋の片付けを任せてしまうのもはばかれる。


「今日は自分で片付けをするよ」


「それは、……いえ、分かりました。せめてお手伝いさせていただいてよろしいでしょうか?」


 最近はずっとアリスに甘えてしまっていたので、急に僕がそう答えたことが意外だったようだ。

 一つ僕の誤算だったのがアリスはこの世の終わりのような顔をしている事だろうか。


 ……そ、それくらいでそんな表情をしないでくれ。


「それじゃあ、アリスも手伝ってくれるかい?」


「はい!」


「はぁい、私も手伝いまーす」


 結局良くわからない事になってしまったが、片付け自体は非常に早く終わったので結果オーライといったところだろうか。


 まあ、でも普段から片付けを気にしながら錬成をしないといけないということは、なるべく心がけるようにしよう。




 さて、借りた部屋の片付けが終わり、現在は再び応接スペースに戻る。


 片方には僕とアリスそしてテーブルを挟んで対面にエリーシャが座っている。

 そしてテーブルの上にはつい先程僕がエリーシャ用に作りなおした訓練用の魔道具が広げられている。


「そういえば、ジークはどうしたの?」


「あー、ジークならあの直後くらいに、ちょっと訓練してくるって出たきり戻ってきてないわね」


 ふむ、早速訓練を始める辺りは流石というところか、でもそれなら何で着るのに時間がかかっていたのだろうか? ……まあ、今はそれは良いか。ひとまずはこの魔道具のお披露目を優先しよう。


「まあジークのことは置いておくとして、これどうかな」


 そう言いながら、目の前の魔道具を見るように促すとエリーシャはそれを手に取りまじまじと見始める。


「……本当にもとのデザインを踏襲して作れちゃうものなのね。もっと見た目が変わると思っていたから驚いたわ」


「今回は見た目を大きく変えないという制限頑張ったからね。最終的にはちょっとだけ付け足したけど、まあ許容範囲じゃないかな?」


 そう、エリーシャから借り受けたのはあくまで服上下のみである。


 この条件ではそのままだと流石に機能を満たすことができないので、幾つか構成要素を増やすことにしたのだ。

 そのパーツとは革製のバングルとアンクルである。


「このバングルとかならエルフらしいデザインからはそれほど離れていないと思う」


「そうね、悪く無い見た目だわ。それにしてもこういう意匠の物も作れるのね」


 今回作ったバングルとアンクルは通常のものとは違い、ゆるい螺旋を描くように巻いてある。そしてその両端にはとある種類の違う石が埋め込まれている作りになっている。


 そのバングルとアンクルに対応するように、袖口とミニスカート端にも同じ石が縫い付けてある。これがバングルやアンクルと対になり、この螺旋が有用に気を誘導する事が可能になったわけだ。


 そのままでは簡素な見た目になってしまうので、石の周りには簡易的にではあるがミスリル銀を使って土台を作ってある。


「え? この石って、もしかして双輝石!?」


「一目見ただけでよくわかったね反対には吸魔石を使ってるよ」


 ちなみに身体の末端に近い方は、吸魔石の特性変えて、ゆるやかに気を吸収するようにした物を使った。吸気石とでも言えばいいだろうか。

 逆に身体に近い方には、離れた袖口から気を誘導するように二つで対となる石、双輝石をあしらった。


 この双輝石、基本的には魔石に近いのだが中々面白い特性を持っている。それは対になる石と距離を離してもエネルギーのやり取りが可能だったりするのだ。


 その特性が発見された直後はその価値が非常に高くなってしまい、入手に手こずった事は良い思い出だろうか。


 実は双輝石の採掘には運が必要で稀にしか発見されることはない。そのため市場に出回る数が少なく中々手には入らなかったりする。その特性故に供給に対して需要は非常に多いため余計に価値が上がっているというわけだ。


 今回はこの特性を利用してバングルと服をつないでいる。


「こんな貴重な石を訓練用の魔道具に使ってしまってよかったの?」


「ああ、それは人工だからそれほど貴重ってわけでも無いよ」


「え?」


「え? だから人工の双輝石だよ」


「……双輝石を作れるなんて、今まで聞いたことも無いのだけど。本当にそんなことできたら大金持ちになれるわよ」


 聞いたことが無くても出来るものは出来るのだから仕方がない。とはいえ錬成難度は非常に高いため誰でも錬成できるというものでもない。

 これを教えてくれたセオドールも当時は錬成失敗を連発してブチ切れていたほどだ。


 当時はそんなにイライラするなら買った方が早いんじゃないかと思っていたが、いざ僕が欲しくなって探してみると想像以上に手に入らなくて余計にイライラしてしたものだ。


 そういえば基本的には自分で使う分しか錬成しないのでわざわざ作って売ると言う考えは無かったな。研究バカあるあるだな。


「まあ、何にしても気に入ってもらえたみたいで良かったよ。出来れば次回の探索時には何かしらの進捗を期待しているね」


「なんだか、やんわりとまとめたわね。しかも軽くプレッシャー付きで」


「二人なら大丈夫だよ」


「……ふう、仕方ないわね。せっかく頑張ってもらったわけだし、これほど貴重なものを貰ったからには期待に添えるよう頑張ってみるわ」


 エリーシャの回答に軽く頷く。色の良い返事を貰えたのは非常に喜ばしいことだ。ついつい顔もほころんでしまう。


 さてと、残るはマリナさんのところだな。次はすんなりと受け入れてもらえるだろうか?


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